SAPとは?
多くの企業が業務のDX化の必要性に迫られている中で、SAPの導入に興味を持つ企業が増えています。この記事では、SAPとはどのようなものなのか、詳しく解説します。
SAPについて
SAPとはドイツに本社のあるソフトウェア開発会社です。SAPを製品名だと思っている方も多いようですが、製品名ではなく企業名です。呼び方は「サップ」ではなくアルファベット読みで「エス・エー・ピー」と呼ばれます。ドイツでは「サップ」という呼び方にあまりいい意味がないそうです。
SAPは1972年に企業の業務を統合するためのパッケージソフトの開発ベンダーとしてドイツで設立されました。現在では、ERPを販売する企業として世界一のシェアを誇っています。
ERPとの違い
同じアルファベット3文字の言葉なので、SAPとERPの違いについて知りたいという方が多いようですが、SAPが主に開発しているソフトがERPシステムで大きな違いはありません。
ERPとは「Enterprise Resource Planning」の頭文字で、企業経営の基本となるリソース、つまり人、モノ、カネ、情報の配分を適切に行い、有効活用した上で業務効率化を図るためのソリューションを意味します。
SAPが開発しているERPシステムとは、Enterprise Resource Planningを企業が滞り無く行うために企業が導入する統一化されたシステムのことです。SAPはERPシステムを設立当初から開発しています。
SAPのシステムの需要が増えた背景
日本の多くの企業で、SAPのERPシステムの導入の必要性が高まっている背景には、レガシーシステムからの大規模な転換を図る必要性が高まっているためです。海外では、SAPが1970年代から欧米でERPシステムを提供していたのに対して、日本の企業では1980年代までそれぞれの企業が企業内のそれぞれの部署でシステム開発をしながら業務を進めてきました。
しかし、1990年代に欧米で業務プロセス改革がブームとして広がり、SAPが爆発的に広がったことから日本でもSAPの導入に踏み切る企業が増えてきました。
しかし、当時は日本では使いにくいシステムだったことから、なかなか広がりを見せられませんでした。現在では、日本法人が設立されたことで、日本の企業も使いやすいシステムになりました。レガシーシステムからの脱却を進める多くの企業での導入が進んでいます。
SAPのERPとCRMやSFAは何が違うの?
社内の業務を効率化するために導入する製品として、SAPのようなERPの他にCRMやSFAの導入を検討する企業もあります。SAPの他にCRMやSFAを導入したほうがいいという声もありますが、SAPとCRM、SFAの違いについて解説します。
CRM
CRMとは「Customer Relationship Management」の頭文字で、顧客関係管理、もしくは顧客管理と日本語では言われます。顧客情報を詳細に管理するための製品です。CRMには顧客の名前や住所などの基本情報の他、購入履歴や購入に至った経路、購入後の問い合わせやクレームまで、ありとあらゆる情報が記載されています。顧客を深く理解して、よりよい関係を築くために必要なツールです。
CRMのような機能をSAPで実現することは少し難しいのが現実です。SAPのERPとは、営業の最前線を支える製品ではなく、オフィス業務を効率化する為の製品です。多くのCRMで実現できているような詳細な顧客管理はSAPでは難しいので、SAP以外にCRMも必要に応じて導入したほうがいいでしょう。
SFA
SFAとは「Sales Force Automation」の頭文字で、営業支援ツールと日本語では訳されます。営業活動の状況を案件ごとに一括管理できる製品です。案件の進捗状況を共有できます。顧客情報と一体化させると効率的なことから、SFAとCRMが一体化しているツールもあります。
SAPでもSFAのような機能を使えると言われていますが、専門的なSFAツールと比較すると使い勝手が悪いのが正直なところです。やはりSAP等のERPはオフィス内の業務の効率化のためのツールなので、SFAのような営業の最前線のサポートには向いていません。必要に応じて、SAP以外にSFAの導入も検討しましょう。
SAPのモジュールについて
SAPを導入するにあたって理解しておいたほうがいいのがモジュールについてです。SAPのモジュールの詳細について詳しく見ていきましょう。
全てのモジュールがインストールされる
SAP以外のシステムでも導入するときにモジュールという言葉を聞くことがあります。モジュール(module)とは、システム全体での一つ一つの機能のことです。システムというのは、細かく分解していくと多くのプログラムで成り立っています。必要なプログラムを集めて、何らかの役割をもった機能をモジュールといいます。
ERPは企業全体のシステムを統合したものです。企業の中には経理部もあれば人事部もあり、総務部もあります。SAP等のERPというのはこれらの業務をすべて包括したシステムなので、その中に会計システム、人事管理システム、調達システムなどさまざまな機能を持ったシステムが入っています。
会計システム、人事管理システム、調達システムと全体のシステムの中で、特定のシステムを実行するための機能をSAPではモジュールといいます。
SAPの導入にあたって、すべてのモジュールが必要ではない企業からは、不要なモジュールは外して欲しいという要望もあります。しかし、SAPではいったんすべてのモジュールをインストールしなければいけません。不要なモジュールは、インストール後の設定を行わなければ利用できないので大丈夫です。
モジュールごとの機能や役割
SAPには多くのモジュールが搭載されていますが、多くの企業での必要性が高い主なモジュールについて詳しく見ていきましょう。
FIモジュール
FIモジュールのFIとは「Financial Accounting」です。財務会計を管理するためのモジュールです。企業内で動くお金についてのデータをすべて集めて、企業の会計や財務を管理するために必要なモジュールです。
販売している商材が売れればお金が入ってきます。なにかものを買ったりお給料を支払ったりすれば出費があります。商品を生産するためにはコストが掛かります。社内の金銭の流れを把握するために、FIモジュールは販売管理システム、人事管理システム、購買管理システム、生産計画システムなど多くのシステムと接続して、お金が動くたびにそのデータが流れてくるように設定されています。
COモジュール
COモジュールのCOとは「Controling」です。管理会計のためのモジュールです。FIモジュールと同じ社内のお金の流れを管理する会計のためのモジュールですが、COモジュールは社内向けに費用と収益の分析を行うことが目的のモジュールです。
FIモジュールは外部に向けた財務諸表の作成を目的としています。COモジュールは社内の各部門ごとの業績の管理と間接費の管理などを行うためのモジュールです。
SDモジュール
SDモジュールのSDとは「Sales and Distribution」です。販売管理のためのモジュールです。注文を受けて出荷するまでを管理するためのシステムです。誰に、どの企業に、どの商品の注文を受けて、いくらで販売して、いつ出荷するのか、請求書はどのフォーマットで送るのか、といったことを管理します。
商材が販売されたら代金が支払われますが、社内のお金の流れはFIモジュールで管理します。当然のことながら、SDモジュールはFIモジュールと連携していて、売上のデータは自動的にFIモジュールに送られます。
MMモジュール
MMモジュールのMMとは「Material Management」です。在庫管理や調達管理を行うためのモジュールです。どこに何をいくらで発注したのか、現在の在庫はどのくらいなのかを管理するためのシステムです。SDモジュールが売る事を管理するためのモジュールで、MMモジュールは買うためのモジュールです。
SDモジュールと同じように、MMモジュールでも購入するためのお金の動きが記録されます。FIモジュールと連携されて、FIモジュールにも自動でデータが送られます。
SAPを導入するメリットやデメリットとは?
SAPの導入にはメリットもあればデメリットもあります。SAPの導入によるメリットとデメリットについて詳しく見ていきましょう。
SAPのメリット
SAPの導入するメリットとは、全社的なデータの一元管理が可能になるという点です。個々の部門で必要なツールをそれぞれ導入するのではなく、SAPのERPを導入すると、すべての部門のデータをリアルタイムで経営陣が確認できるようになります。
リアルタイムなデータ管理が可能になることで、経営から無駄を省いて大幅な合理化が可能になります。また、トップが行う決断をスピードアップできます。
また、社内の独自システムを利用していたときにはシステム担当者が夜間や休日に行っていたメンテナンスも不要になり、深夜残業や休日出勤が不要になります。システム担当者の働き方をSAPの導入によって大幅に改善できます。
各部署では他部署のデータが必要なときでも、SAPから必要なデータを必要なときに引き出せるようになります。データの共有を依頼する手間とデータをもらうまで待つ必要がなくなるので、仕事の効率が大幅に上がります。
SAPのデメリット
SAPのデメリットは、導入して本格稼働するまでに時間がかかる点です。SAPはインストールするだけでは利用できずに、パラメータの設定が必要になります。また、標準搭載されていない機能を導入企業が必要とするときには、アドオンとして新たに開発して搭載することになります。
もしも必要なアドオンの数が多いときには、利用できるようになるまでに時間がかかり、コストも掛かります。本格稼働までの手間とコストが、他のツールを導入するときと比べるとかかる点がデメリットです。
また、標準機能以外のアドオンを搭載してしまうと、SAPのサポート対象外となってしまいます。アップグレードも保証されなくなる点もデメリットになります。
SAPの利用料金の目安
SAPを利用するためにはどのくらいの料金が必要になるのでしょうか。SAPを導入するための料金について解説します。
料金は規模によって異なる
SAPでは正式な料金プランや料金表というものを公開していません。SAPが料金表を公開していない理由は、SAPは導入規模によって料金が大幅に異なるためです。SAPが日本に上陸した当時は、SAP導入のために準備期間1年で費用は10億円とも言われていました。
日本上陸当時は日本語化されていなかったことと、日本の商習慣に合わない部分があったためにアドオンの開発や日本語化に多額の費用がかかってしまいました。しかし、現在ではこれほど多額の費用がかかることはなようです。
SAP Jpanaの公式ホームページでは、160万円で導入した事例なども紹介されています。格安のツールを導入するよりも高額な費用はかかりますが、数百万円単位で導入できるツールになりつつあるようです。
正確な金額は見積もりで確認しよう
SAPの導入にあたってはどのくらいの料金がかかるのかは、実際に見積もりを取ってみないとわかりません。また、SAPでは無料評価版を提供しています。無料評価版を利用できる期間はツールによって14日間もしくは30日間となっています。
まずは無料評価版を申し込んだ上で、本格的に導入を検討するのであれば見積もりを取ってみましょう。
SAPを導入する方法とは?
SAPは導入するのが難しいツールだと言われています。SAPはSAPのプログラムをサーバーやパソコンにインストールすればすぐに利用できるわけではありません。SAPをインストールしたあとで、パラメータ設定と必要なアドオンがあればアドオンを開発して追加する必要があります。SAP導入に必要なパラメータ設定とアドオン開発について解説します。
パラメータ設定について
SAPのパラメータ設定とは、SAP側で用意されている設定項目を一つずつ設定していくことです。通常はSAPの管理や運用を専門に行なっているSAPエンジニアによって行われる作業です。コンフィグレーション / カスタマイズとも呼ばれます。
設定するパラメータとは、会社名、所在地、電話番号などの企業の基本情報から、消費税の設定、伝票の項目などの業務を行う上で必要になる項目まであります。
SAPでは詳細な細かいパラメータの項目を用意しています。幅広い項目を標準機能だけで設定できることが、世界中の企業で採用されている理由になります。
ただし、詳細すぎてパラメータ設定は難解なものになりすぎています。そのために、SAP専用のエンジニアやコンサルが必要になります。
アドオン開発について
SAPには詳細な設定項目がパラメータとして用意されていますが、パラメータではどうしても設定できない項目があります。その項目はアドオンを開発して追加することになります。SAPではABAPというSAP独自の言語が使われていて、SAPのアドオンもABAPを使って開発されます。
SAPエンジニアにアドオンの開発を依頼することになりますが、アドオンの開発には多額の費用がかかります。また、現在、国内のSAPエンジニアの数は大幅に足りていないので、アドオンの開発が更に遅れる可能性もあります。
また、SAPではパラメータ設定ではバグは発生しません。バグが発生するのはアドオンが原因なので、アドオンを追加した場合にはバグの調整も必要になります。もしもSAPを利用する上でアドオンが必要になる場合には、SAPでなければいけないのか、コスト面から再検討してみることもおすすめします。
ERP以外の注目のSAP製品は何があるの?
SAPからはERP以外の製品も色々と発売されています。多くの機能を持ったSAP製品が販売されていますが、その中でも特に注目するべきツールはどれなのでしょうか。注目するべき7つのSAP製品を紹介します。
SAP S/4HANA
SAP S/4HANAは高度なインテリジェンステクノロジーが使用されたERP製品です。AI、機械学習、高度な分析機能などが搭載されています。幅広い業種の企業で導入可能で、どのような企業に導入されても最高の機能を発揮できます。
AIや分析機能を最大限に駆使して、企業の多くの活動のプロセスを自動化することができます。顧客中心のビジネスモデルの構築を目指し、顧客満足度を高めて長期的な関係強化を望む企業におすすめです。
SAP S/4HANAは完全なクラウドERPなので、場所やデバイスを選ばずにどこからでも利用できるので、今後のテレワークの広がりにも対応可能なERPです。
SAP HANA
SAP HANAはオンプレミスとクラウドの両方で動作させることができる、インメモリーデータベースの製品です。高度な分析機能と高速なトランザクションを1つのシステムの中で並行して実行できます。
クラウドでの導入で心配されるセキュリティに関しては、高度なセキュリティやプライバシー保護機能を搭載しており、高い信頼性が確保できています。
組織の中に分散しているデータもSAP HANAに紐付けることで、その都度収集しなくても統合することが可能です。データを高度に階層化することで、組織のパフォーマンスもコストもストレージも迅速に管理することが可能になります。
Concur Expense
Concur ExpenseはSAPの経費精算・経費管理クラウド製品です。経費管理の手間を省き、社員の生産性を大幅に向上させることができます。また、不正請求や不正経理を未然に防止して、企業の会計の健全性を保ちます。
Concur Expenseは、クレジットカード、QRコード決済アプリ、タクシー配車アプリと連携させることができます。それぞれの決済情報が自動でConcur Expenseに登録されます。また、レシートを撮影すると内容が自動で登録されます。
Concur Expenseを導入するだけで社員がその都度経費精算する必要性がなくなり、経費精算に係る時間を大幅に節約できるようになります。
SAP Ariba Strategic Sourcing Suite
SAP Ariba Strategic Sourcing Suiteは、サプライ調達を効率化するための製品です。業務に必要な物品やサービスを購入するときに、良質なサプライヤーを選びながら、調達コストを削減しながら、価値の高い契約を実現します。
コスト削減を実現しながらサプライ調達を持続的に行うためには、戦略的な調達環境の構築が必要です。SAP Ariba Strategic Sourcing Suiteなら、強力にネットワーク化されたサプライヤーネットワークから、最も優れたツールを適切価格で調達可能です。
SAP BusinessObjects Business Intelligence Suite
SAP BusinessObjects Business Intelligence Suiteは、SAPの高度な分析システムの製品です。SAPのツールに蓄積したデータを解析して、表やグラフなどの見やすい形にまとめて、共有することができるシステムです。ビジネス方向性を決定するために必要なインサイトを共有して、組織の意思決定力を強化することに役立ちます。
分析の専門家を雇わなくても、このツールを導入することで、高度な分析スタッフが行うような分析データを簡単に入手できるようになります。永久ライセンスを購入するオンプレミス版の他に、中小企業向けのEdge editionもあります。
SAP Commerce Cloud
SAP Commerce Cloudとは、Web上でのショップの運営を支援するための製品です。大企業が販売する数多くの製品のカタログ管理をシンプルにすることで、サイトを訪問した顧客がスムーズに購入できるように支援します。
また、顧客に対する理解を深めることにより、それぞれの顧客にカスタマイズした購入体験を提供できるようにします。より変化が激しくなりつつある市場での顧客ニーズの変化に対応したショップ経営が可能になるツールです。
SAP SuccessFactors Employee Central
SAP SuccessFactors Employee Centralはクラウドベースの人事管理システムの製品です。組織内での従業員の役割や所属するチームがひと目で分かります。また、それぞれの従業員の詳細も管理できます。
100カ国以上の企業で導入されていて、グローバル企業での国境を超えた人事管理におすすめです。従業員の健康管理も可能で、予防接種の実施状況等もこのツールで管理できます。
SAPの活用を検討しよう
以前は大企業でなければ導入できなかったSAPですが、クラウド化が進んだことで中小企業でも導入しやすい製品も提供されるようになってきました。世界標準の業務改革を行うのなら、SAPも導入も選択肢の一つです。無料試供品を試せる製品もあるので、ぜひ興味があればSAPの公式ホームページから申し込んでみることをおすすめします。
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