新古 敏朗(しんこ・としお)様
湯浅醤油有限会社・丸新本家株式会社 代表取締役
1969年生まれ。1881年に操業を開始し、1965年頃から休止状態にあった醤油製造を再開させ、2002年に湯浅醤油有限会社を立ち上げる。現在は湯浅醤油有限会社と丸新本家株式会社2社の代表取締役を務める。
通常の醤油仕込みは、大豆を蒸すところから始めます。ところが湯浅醤油では、4時間国産大豆を茹でるという画期的な製法を取り入れています。これは世界最古の料理書に記されている醤油の製法なのだそうです。そんな古くからの伝統を重んじる湯浅醤油有限会社代表取締役の新古様にお話をお伺いしました。
創業141年。古くから伝わる味噌・醤油づくりを現代に
--本日はよろしくお願いします。早速ですが、新古さんのご経歴の紹介からお願いします。
現在は、湯浅醤油有限会社と丸新本家株式会社の代表取締役をしています。丸新本家株式会社では、金山寺味噌(きんざんじみそ)が代表的な商品です。この金山寺味噌というのは、実は中国から伝わっており、この湯浅町から広まったといわれています。その上、この金山寺味噌からできた「たまり」が醤油となり、湯浅醤油有限会社ではそうした醤油作りも行っています。
弊社の創業ですが、1881年・明治14年にこの湯浅町で味噌屋を始めたのが発端となっています。古い話ですが、私共の新古家に嫁いできたお嫁さんが、実家から持ってきた金山寺味噌を近所に配ったそうでして、それが美味しいと評判になり、商売に転じてお味噌作りのメーカーになったと聞いております。その後、醤油作りも味噌作りと同様に商売にしていき現在に至ります。
魯山人醤油や丹波の黒豆を使った醤油など、様々な醤油の開発を手掛ける
--現在の事業について、改めてご紹介をお願いします。
主な事業としては、醤油と味噌の製造、そして地域と共同での商品開発や通販の運営、さらには観光事業も行っています。また私共の商品を販売する店舗を3店舗運営しています。本店は湯浅町に、2店舗目は関西の代表的なリゾート地である南紀白浜のトレトレ市場に、3店舗目は田辺市にございます。
観光サービス業にも力を入れており、新型コロナウイルスが流行する前には10万人ものお客様が観光バスで来て下さるほど大盛況でした。現在はコロナ禍の影響もあり、この事業は閉塞状態となっています。観光客がメインの事業ですので、新型コロナウイルスの影響を受けて6〜7割売上が減少している状況です。
--様々なメーカーが同様の商品を製造していますが、貴社の独自性や強みについてお伺いできますでしょうか。
弊社の金山寺味噌は、商品開発力では日本一と言っても過言ではないくらい様々な種類があります。それこそ季節商品や地元の食材を使った商品ラインナップが自慢です。
醤油に関しても、湯浅町は醤油発祥の地ともいわれております。なかでも私共は、木樽を使った伝統的な醤油作りを行っています。醤油商品の種類についても、「魯山人醤油」や丹波の黒豆を使った醤油「生一本黒豆」などがあります。
ほかにもカレーにかける醤油やチョコレートの原料として知られるカカオを使った「カカオ醤(ジャン)」など、この場で紹介しきれないくらい種類も豊富です。日頃使われている醤油に比べると、種類の多さに驚かれるかと思います。
伝統的な「食文化」を後世に伝えていきたい
--今後の中長期的な事業展望についてお伺いできますか。
食文化の価値を見直して後世に伝えていくことです。醤油が誕生したということ一つ取り上げてみても、実に画期的なことだからです。
それこそ醤油が誕生するまでは、調味料といえば「塩」だけでしたから、醤油や味噌が調味料に加わったということ自体が驚くべきことです。また観光業が厳しい状態ですので、醤油や味噌を健康食品として利用する新たな事業を検討しています。
醤油にはさまざまな種類があります。私共のような醤油を試したり、もう少し高価な醤油を試してみるといった楽しさを提供したいと考えています。
検討している背景として、金山寺味噌を食べると「脂肪肝」を抑制する働きがあるということが最近の研究で分かりました。そうなると、高血圧や糖尿病にも効果があるのでは?と研究しているところです。
さらには、フランスのボルドーで醤油作りのレストランを運営しようかという話もでています。今すぐにという話ではありませんが、機会があれば積極的に挑戦していきたいと考えております。
--ありがとうございます。最後にProfessional Onlineを見ていただいている経営者、決裁者の方に向けてメッセージをいただけますか?
難病の人や健康に良い商品を作りたいと思っております。そうした私の思いに共感していただける企業様や経営者の方がいらっしゃれば、お声掛け下さい。
また違う業界の企業様とアライアンスを組んでみたいとも考えています。弊社は食品メーカーに過ぎませんが、販売のプロと組むことで今までできなかったことが可能になると考えております。
あるいはアパレル業界やファッション業界とアライアンスを組むといった普通でないこと、あり得ないことをすることで見えていなかったことが見えるようになるかもしれません。今まで行政主導で行われていたことも、我々経営者同士がアライアンスを組んで進めていけば、不可能だと思われていたことも可能になっていくのでは?と考えています。
--本日はどうもありがとうございました。
湯浅醤油有限会社
Professional Onlineでは無料で経営者インタビューに掲載いただける方を募集しています。お問い合わせフォームよりご連絡ください。
プロフィール
新古 敏朗