柏野慎也(かしの・しんや)
ウェルダンシステム株式会社 代表取締役
1976年生まれ。駒澤大学経営学部卒業。大学在学中よりバンドに熱中し、20代の多くをフリーターとしてバンド活動に費やす。
その後、バンド活動の終了ととに東南アジアへ一人旅に出る。
帰国後、2003年にSEの友人に誘われ会社の立ち上げに参加、その後代表に就任。
開発した校務システム「スクールマスターZeus」を核として事業を成長させる。
現在までに校務システムを提供した私立校は全国130校以上。学校現場の業務を大きく軽減して全国の教員らに好評を博すとともに、Apple Japanよりその業績を評価され3年連続で表彰を受ける。
学力の低下、いじめ、引きこもりなど、教育の現場には様々な問題があります。教師は多忙を極め、文部科学省の調査では、小中学校教師の多くが月に80時間以上の過労死ラインを超える時間外労働をしていることがわかりました。その多忙な教師たちの煩雑な負担を軽減しているのが、トータル校務支援システム「スクールマスターZeus」です。教育を支援するシステムが目指すものとは何なのか、ウェルダンシステム株式会社代表取締役の柏野様にお伺いしました。
先生方に喜んでいただいたことが、すべての原点
--本日はよろしくお願いします。早速ですが、柏野さんが起業されたきっかけをお聞かせください。
現在の会社は、私自身が起業したものではなく、元々は友人がその上司と一緒に立ち上げたものでした。私は創業時に誘われて参加したのですが、なかなか会社は上手く行かず、ほどなくして会社を立ち上げた友人や、その上司の方が会社を辞めることになり、私が引き継ぐ形で代表となったのです。
--当初から、校務システムの開発や販売を行っていたのでしょうか。
いいえ。当初は様々な企業の販売管理や、顧客を管理するソフトの受託開発を行っていました。そんな時、とある郊外の公立中学校から、システム開発の依頼が舞い込んだのです。
その中学校に足を運んでみると、職員室で多くの先生たちが土日にも関わらず仕事をされていました。リストのようなものを読み上げる先生、それを何かに書き写す先生、その内容が間違っていないか確認をする先生。当時の学校の仕事は、紙がベースで、PCがあっても表計算ソフトをみんなで共有しながら使う程度といった、極めてアナログな校務を行っていたのです。
そこで、それらの作業を効率化できるソフトを提供したところ、先生方にとても喜んでいただけました。その時は「こんなに、先生たちの役に立てるんだ」と、こちらまで嬉しくなったのを覚えています。以来、多くの学校の先生方のお話を聞かせていただきながら、より多くの先生方のお役に立てるようにと開発したのが「スクールマスターZeus」です。
その評判は、東京都内の学校関係者の間に口コミで広がっていき、営業をしなくても問い合わせが入るような状況になりました。そうして学校向けのパッケージソフト「スクールマスターZeus」が、弊社の事業の核となっていたのです。当時は、そのような校務システムは他に存在していませんでしたので、弊社が、パイオニアであると自負しています。
大手の参入で一度シェアを奪われたことが結果として財産に
--貴社の校務システムの特徴や、その目的についてご説明いただけますでしょうか。
先生方の煩雑な事務作業の負担を軽減して、本来の仕事である「教育」に時間を当ててもらうことを目的としているのが校務システムです。導入していただければ、先生方の様々な業務が効率化され、時間を有効に活用できます。その結果、生徒のために割ける時間が増えて充実した教育環境を作ることができるようになるでしょう。
学校の先生方は、とにかく多忙です。生徒の名簿や成績の管理、出欠の一覧に時間割の管理、会議資料や通知表・内申書の作成など、1人の先生にかかる負担がとにかく大きいのです。もちろん、書類の作成だけでなく、生徒や保護者との関わり、授業の準備などにも多くの時間を費やしています。
ですから、校務システムを試していただいた学校の先生からは「これでやっと、春休みが取れる!」と喜んでいただいたこともあります。先生方は、春休みも夏休みも冬休みも、雑務に追われて、ろくに休めない現状だったのです。
--先生方にとってはまさに救世主となるようなシステムなのですね。貴社の独自性や強みについてお伺いできますでしょうか。
弊社は、校務システム開発のパイオニア的なポジションです。現在は、私立の中高に強みを持っていて、全国の名門私立校もお客様です。私立校は、公立校とは異なり、学校ごとの独自性が強いのが特徴です。それぞれの私立学校の個性や多様なカリキュラムに対応できることが弊社の強みだと思います。
--当初から、私立校をメインターゲットにしていたのでしょうか。
いいえ。当初は、東京の公立校を中心に展開していました。他に競合相手もいなかったので、一時は東京23区内の4割以上の公立中学校に導入していただいていたこともあります。ところが、そのうちに大手が参入してくるようになりました。
公立校は、学校ごとに校務の違いはそれほどなく、システムを自治体や教育委員会が入札で選んで地域の学校に導入します。そうした土俵では大手に勝てません。そこで、それぞれに特色を打ち出している私立の学校にターゲットを絞ったのです。
個性豊かな私立校のために一校一校、システムをカスタマイズするには、手間もコストもかかります。汎用性重視の画一的なシステムを得意とする大手には、なかなかそれができません。ですが、私たちにはそれができる柔軟性があります。
ですから、現在は私立校を中心に「スクールマスターZeus」を導入していただいています。その数はすでに120校を超えました。私立学校の多様な案件に応えてきたことで、弊社にも個別の事例に対応するノウハウが蓄積されている状態です。これは大手に真似できない強みだと思います。
唯一のミッションは教育の質を高めて未来を明るくすること
--今後の中長期的な事業展望についてお伺いできますか。
教育の現場はまだまだアナログで、教室では先生が未だに紐で綴じる黒表紙の出席簿を使っていたりもします。しかし、それをiPadでやれば、デジタルで先生同士が生徒のデータを共有でき、様々なところで活用できます。そうした効率化をどんどん進めていきたいと思います。
現在は先生方の業務の効率化がメインですが、今後は、周辺の事務業務にも広めていきたいですね。多くの学校の現場では、教師の方と事務の方で情報が共有できていないのが現状ですので、その辺りにも改善の余地があります。特に図書室の本の貸し出し管理などでは、かなり有効なはずです。
さらにいえば、私立の中高には、付属の幼稚園や小学校もあります。付属校間で情報を共有できれば、データの一元管理が可能になり、はるかに効率的になります。
そうした取り組みは、なにも弊社のビジネスのためだけではありません。私たちが先生の多忙な業務を改善できれば、先生方は本来の最も大切な仕事である、教育に注力できるようになり、子どもたちと向き合う時間が増えます。そうなれば、その学校の教育の質が高まるでしょう。学校教育の質を高めること、それが何より大切な校務システムの役割です。
私たちは、質の高い教育を行う学校を、一校でも多く増やしたいと考えています。北海道から沖縄まで、全国の学校に導入してもらって、日本全体の教育の質を高めてもらたいのです。日本の教育の質が高まれば、日本全体の未来が明るいものとなるでしょう。それが弊社のたった一つのミッションです。
--最後にProfessional Onlineを見ていただいている経営者、決裁者の方に向けてメッセージをいただけますか?
変化が激しく、先が見えない不確実な世の中になってきました。そうした時代には、変化に対応することが必要です。完璧でなくてもいいから、常に今のベストを世にお送りしていきながらアップデートしていく。そうしたことが大切なのだと思います。
弊社も環境の変化に対応しながら、その時々のベストを尽くしてやってきました。お互いにがんばって、少しでも日本の未来を明るいものにしていきましょう。私たちにお力になれることがありましたら、ぜひ、お声かけください。
--本日はどうもありがとうございました。
ウェルダンシステム株式会社
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柏野 慎也
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