川村 憲一(かわむら・けんいち)
株式会社トラストバンク 代表取締役
食品専門商社を経て、コンサルティング会社で中小企業の新規ビジネス(小売店や飲食店)の立ち上げからブランドマネジメント、人財開発(採用・教育)に従事。大手EC企業を経て、コンサルティング会社設立。2016年3月に業務委託としてトラストバンク参画。国内初のふるさと納税のリアル店舗「ふるさとチョイスCafé」の立ち上げをリード。ふるさとチョイス事業統括やアライアンス事業統括を担当。2019年4月に執行役員としてトラストバンクにジョインし、同年10に取締役、2020年1月代表取締役に就任。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、地方移住の動きが広がっています。そのような中で、ふるさと納税総合サイト「ふるさとチョイス」の運営をはじめとした地方活性化に取り組んでいる株式会社トラストバンク。2020年に創業者である須永珠代氏から経営を引き継ぎ代表取締役に、同社のビジョンでもある「自立した持続可能な地域をつくる」というビジョンの達成に向け事業を展開する川村代表取締役に、トラストバンク社参画に至った経緯や地域活性化に向けた課題についてお話を伺いました。
「ビジョンを実現する」という約束を果たすために
ー本日はよろしくお願いいたします。まずは、川村様がトラストバンク社に参画された経緯をお伺いできますか?
はい。もともと自分でコンサルティング会社を経営しており、トラストバンク社からの仕事を受けて支援を開始したのが始まりです。その後、ふるさとチョイスの決済に係るアライアンスや自治体と伴走する部署の統括など様々な仕事を任され、当時の経営陣と話をする機会も多くあった中で、事業の拡大に伴い社員になってくれないかと打診を受けました。
3ヶ月くらいは断り続けていたのですが、改めてトラストバンクの「自立した持続可能な地域をつくる」というビジョンを思い起こした時に、「このビジョンを達成することができれば、自分の会社のビジョンも同時に叶えられる。」と思いました。自分のビジョンが叶えられるのであれば、自分で経営する会社である必要はないかという思いのもと、日本や地域のために影響を与えられるトラストバンクで自分の持てる力を全て発揮していこう、と腹を決めて、2019年の4月1日にジョインしました。
ーその後、須永会長の後を受けて、代表取締役に就任されました。
はい、ジョインする時に、経営陣と「私はこのビジョンを実現するために入社します。」という約束をしたので、トラストバンク入社後も、「ビジョンを実現するためにはどうしたらいいのだろう」という発想で、社内の各部署や顧客でもある自治体の皆様、アライアンス先の方々とコミュニケーションをとってきました。須永からは、このビジョンを達成したいという姿勢に対して信頼してもらっていたのだと思います。入社から半年後に取締役、それから3ヶ月後に社長就任となりました。
ー創業者からバトンパスを受け取ることにプレッシャーはありましたか?
もちろんありました。カリスマ創業者の後を継ぐわけですから、どうひいき目に見たって「分が悪い」と思っていました。そんな中、須永から「誰かと比較したら川村さんの良さが死んじゃうよ」と言われ背中を押されました。また、「自分は何のためにこの会社に入ったのだろう」と立ち返った時、自分をかっこよく見せるためではなく、あくまでこの会社のビジョンを達成するための役割なんだということに思い至り、引き受けましたね。
また、トラストバンクには地域に対する想いを持って動いているメンバーが多く、自分が業務委託の頃から熱いコミュニケーションをさせてもらっていて、そのメンバーと一緒にもっと事業を拡大させていきたい、という思いも社長を引き受ける後押しになりました。
ー創業者の後を継いだことで、人知れぬ苦労もたくさんお有りかと思いますが、どのように乗り越えてこられたのでしょうか。
社長という役割をこなす中で、もちろん辛いときや不安なときはありましたが、優秀な人材と一緒に働いていたので、多くのことを任せることができました。仲間たちに相談をすれば解決策も出てきますし、最後の責任は自分が取ると言うところだけ変わらなければ、あとはメンバーが120%の力を発揮してくれます。
ー優秀な人材が集まっている要因はどのようなところにあるのでしょうか。
会社として、日本の社会を良くしていくための事業を展開していることと、ビジョンと事業内容が一貫していることに興味を持ってもらえていると思います。
メンバー曰く「ビジョンと事業内容がこれほど一致している企業はなかなかない」と。このビジョンと地域・社会貢献を目指す事業内容が募集時や採用時の会社の魅力につながっているのではないかと考えています。
「自立した持続可能な地域をつくる」ための事業展開
ー続いて、事業についてお聞かせいただければと思います。貴社では、ふるさと納税事業の他にも様々な事業に取り組まれていますが、改めて全体像をお伺いできますでしょうか。
はい。現在4つの事業を展開しています。「自立した持続可能な地域をつくる」というビジョンを実現するためには、地域内で経済を循環させていかなければならないというのが私たちの考え方です。そのため、外部から地域へお金が流れる仕組み、そして地域外にお金が流出することを防ぎ地域内で循環する仕組みを作っています。
具体的には、外部から地域へお金が流れる仕組みとして、「ふるさと納税事業」を展開しているほか、地域内で経済循環を促す仕組みとして「エネルギー事業」や、地域内で利用することができる「地域通貨事業」を展開しています。
ふるさと納税事業では、自治体が募った寄付を元手に新たな産業振興につなげられることが大切だと考えています。また、寄付者にとっては、ふるさと納税を通じて、その地域を知り、興味関心を持ち、さらに訪問する機会にもなります。ふるさと納税をきっかけに関係・交流人口が増え、移住にもつながっていくのではないでしょうか。
一方で、ふるさと納税事業でいくらお金を地域に流しても、地域外のサービスを利用することで外に流れてしまうお金の規模がそれに勝ってしまう。地域内で経済循環を促すためには、地域内で消費しているものは地域内で生産する「地消地産」に切り替えていく、そういった仕組みが必要だと考えています。そのため、地域内での消費を促すための地域通貨事業を展開しているほか、エネルギーの「地消地産」を進めるためにエネルギー事業を行っています。
また、これらの取り組みのメインプレイヤーは自治体の人々です。彼らの中には、自分たちの地域をより良くしていきたいという熱い思いを持っている人たちがいますが、彼らが既存の業務に追われず、新しいことに取り組んでいくための時間を創出して行かなくてはなりません。そのために、ITを活用して自治体の業務効率化・行政デジタル化を推進する「パブリテック事業」も展開しています。パブリテックとは、“パブリック”と“テック”を掛け合わせた我々の造語です。
地域の課題解決に熱い思いを持つ人材を育てる
ー「自立した持続可能な地域をつくる」中で、現状の課題とその解決方法について教えてください。
地域を活性化させていくための魔法の杖はないと考えてます。各首長の方々とお会いしていると、地域の課題を解決していきたいという熱い想いや高いスキルを持った人材がまだまだ足りないという課題が出てきます。それを解決していくために我々ができることとしては、優秀な人材が自治体や地域の事業者と繋がることで、地域で活躍できる場を創っていくことだと思います。
トラストバンクのふるさと納税や地域通貨など様々な事業を地域の企業と一緒になって開発していくことで、優秀な人材が地域内に育っていくと思いますので、地域に根付いていて事業をつくることができる地域商社と連携していくことを重視しています。
ーありがとうございます。最後に、今後の展開についてお伺いできますでしょうか。
まずは、ビジョンを達成していくために必要なものを事業化していく、ということは引き続き中長期的に必要だと考えています。そのためには、ビジョンを一緒に叶えられるパートナーとの連携は必須です。地域の様々な課題を解決していくための仕組みを現時点で持っているわけではないので、私たちのビジョンに共感していただけて、かつ仕組みをお持ちの企業と連携していきたいです。
目先のところで言いますと、既存の事業一つ一つの精度もより高めていくことが地域の課題解決につながると考えています。ふるさと納税事業についても、ただ寄付されて終わりではなく、寄付されたお金がどのように地域に変化をもたらすのか、未来のために投資されていくのか、この仕組みづくりを支援していくことで自立した持続可能な地域がつくっていけると思いますのでそこに集中していきたいです。
パブリテックの領域についても、「LoGoチャット(ロゴチャット)」という自治体専用のビジネスチャットツールの導入自治体が650(全国自治体数:1788)を越えたのですが、ただ「便利になってよかったね」で終わるのではなく、削減された業務時間を使って何ができるのかを自治体の方々と一緒に考えて、その中で新たな課題が判明するようであれば、また新しいサービスを作ってさらなる業務改善を行っていく、そのような取り組みを行なっていきたいですね。
ーありがとうございました。
株式会社トラストバンク
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