岡本 秀興(おかもと ひでおき)
TRIPORT株式会社 代表取締役社長/TRIPORT社会保険労務士法人 代表
中央大学経済学部在学中に社労士(社会保険労務士)試験に合格したが、卒業後は株式会社オービックビジネスコンサルタントでシステムエンジニアとしてHR系基幹業務アプリケーション開発に約10年ほど従事。2014年、人事労務コンサルティングを提供するためにTRIPORT株式会社およびTRIPORT社会保険労務士法人を立ち上げ、代表に就任。コロナ禍前(創業時)から、全社員テレワーカーという“時間的・場所的”制約を極限まで排除した働き方を実施。厚労省・総務省・東京都などからの表彰等多数。また、厚生労働省の広報誌『厚生労働』等の、働き方改革に関連する特集記事等、各種メディア掲載・執筆多数。
大学在学中に社労士資格を取得したにもかかわらず、士業法人や士業事務所、コンサルティングファームではなく、あえてシステムエンジニアとして就職することを選んだ、異色の経歴の持ち主であるTRIPORT株式会社代表取締役社長の岡本様。ITや社労士としてのスキルを活かしながら、2021年には厚労省後援、日本HRチャレンジ大賞(奨励賞)を受賞した「クラウド社労士コモン」のような革新的なプロダクト開発を行うなど、今まで世の中に無かった新しいサービスで士業界をはじめ、全国のあらゆる企業のDXに取り組む岡本様にお話を伺いました。
士業やシステムエンジニアという世界観だけに縛られたくない
--本日はよろしくお願いします。早速ですが、岡本さんが起業されたきっかけをお聞かせください。
中央大学経済学部に在学中に”ヒト”に関する唯一の国家資格である社会保険労務士(社労士)試験に合格しましたが、当時、社労士としての仕事しかできないのは嫌だ、さらには士業という世界観だけに縛られたくないという思いがありました。そこで、自分の可能性を広げるため、新卒で就職したのが、基幹業務系アプリケーションを開発・販売し、数多くの士業法人や東証一部上場の大手企業と提携し、また販売パートナー戦略により全国展開している株式会社オービックビジネスコンサルタントでした。同社では社労士としてのスキルを活かしながら、システムエンジニアとして給与や勤怠、人事などの基幹業務アプリケーション開発に携わりました。
その後、1企業の1プロダクト開発チームの1エンジニアとしてではなく、世の中から本当に求められるソリューションを”0⇒1”で企画・創造し、より広い世界観で心から良いと思えるモノを創造し、できる限り多くの人に届けたいという思いに至り、31歳になった2014年に、人事労務コンサルティングを提供するためにTRIPORT株式会社およびTRIPORT社会保険労務士法人を立ち上げました。現在は8期目となります。
厚労省などにも表彰された「新しい働き方」と「新しいカタチの士業サービス」とは
--貴社の主力事業について、改めてご説明をお願いいたします。
弊社の主力事業・サービスは以下の2つです。
- 助成金コーディネート(https://jcoordinate.triport.co.jp/)
- クラウド社労士コモン(https://cloudcommonsr.triport.co.jp/)
「助成金コーディネート」では、世の中の様々な業種・業態、企業規模、経営スタンスの経営者(企業)の方々が、自社にて最適な助成金制度を活用しきれていない点を改善すべく開発したサービスです。1社1社の経営状況を考慮したうえで最適な助成金をコーディネートし、かつ、助成金制度を活用するために必要な要件となっている、就業規則等の整備、また労働諸法令の遵守をサポートしたうえで、お客様のご要望によっては、社労士法人にて申請代行までサポートしています。
近年、コロナ禍ということもあり、企業が経営改善のために助成金を活用する流れが益々強まっています。そのような中で弊社サービスが他社と異なるのは、ただ助成金制度をご提案するだけでも、助成金申請を代行するだけでもなく、助成金制度自体の存在意義・目的を本質的に伝えつつ、助成金制度ごとの受給要件をクリアしていく過程において、経営上の”ヒト”に関する経営改善を軸としたサービス提供を行う点にあります。
例えば、従業員の働きやすさを向上させることが受給要件となっていた場合、ただ受給要件を満たす取組をするのではなく、1社1社の経営状況、投資効率等を鑑み、本当に経営上意味のある施策を行うことを徹底しており、結果として離職率低減などの具体的効果まで享受できるようにサービス設計されています。
また、助成金制度は厚生労働省が管轄しているものが多く、大前提として企業に労務違反があると受給できません。そこで、弊社は労務監査を軸としたコンサルティングを提案し、企業が経営改善しながら助成金を受け取りやすくするサポートも行います。この点においても労働環境が改善されることによる従業員の働きやすさ向上、離職率低減に繋げることができるため、結果として、助成金制度の本質的な存在意義・目的である「雇用創出・安定雇用」等にまで貢献できるサービスとなっています。
もう一つの主力サービスである「クラウド社労士コモン」は、まるでクラウドサービスを利用するかのように、気軽に人事・労務の専門家である社労士の付加価値(労務相談や法改正対応、助成金活用、等々)を全国どこにいても享受できる、完全オンライン型サービスとして開発しました。
社労士に限った話ではありませんが、士業との一般的な契約スタイルである顧問契約という概念は、中小零細企業にとっては料金や心理的な面で敷居が高く、そのような士業界の中でも社労士の付加価値は特に、経営上重要であるにもかかわらず後回しにされがちです。しかし、「クラウド社労士コモン」なら、”気軽さ・手軽さ”をコンセプトに開発された完全オンライン型サービスであるため、その時々で必要な事項について人事労務のプロである社労士に簡単に相談できる点や、必要に応じて、そのままワンストップで社会保険や労働保険などの行政手続や法改正に伴う各種規程・帳簿等の改修ができる点など、各業務を簡単に依頼できる仕組みを構築しています。
また、税理士等の他の士業も同様ですが、社労士も一人一人得意分野が異なり(助成金の専門家、多様な人材活用の専門家、労働法の専門家、等々)、従来の顧問契約ではお客さまはどのような課題であっても顧問契約した一社労士に労務相談・依頼することしかできませんでした。しかし、このサービスでは、どの分野の相談でもその分野を得意とする専門家のアドバイスを受けられる仕組みを構築しています。
コロナ禍を機に、士業界でもようやくZOOM等によるオンライン面談などの仕組みの導入が拡がってきましたが、オンラインでのサービス提供はお客さまにとっても、社労士などの士業界にとっても大きなメリットがあります。上記で述べた「クラウド社労士コモン」は、完全オンラインで全国の中小企業に低価格で高品質なサービス提供をしたことを評価され、2021年には、厚生労働省後援の「第10回 日本HRチャレンジ大賞」にて奨励賞を受賞しています。
--貴社の独自性や強みについてお伺いできますでしょうか。
弊社の独自性は「ショールーム型経営」を実践していることです。実は弊社では2014年の創業期から「全社員テレワーカー」という働き方を実施しており、日々の業務だけでなく採用・教育までオンラインで実施している珍しい企業です。私自身、生まれも育ちも東京ですが、3年以上前から沖縄に居住しています。今でこそコロナ禍でテレワークという働き方が注目を集めていますが、弊社はコロナ禍に関係なく、企業利益を高める目的でテレワークという働き方を採用し、多様な人材活用まで考慮したうえで、士業界では特に珍しいオンラインでのサービス提供の仕組みを構築しながら事業を拡大してきました。
そのため、弊社がモデルケースとなり、これからテレワーク導入を試みる企業や、一度はテレワークを導入したものの、社員同士のコミュニケーションの質低下、またそれに伴う生産性低下等の理由によりテレワークという働き方に消極的になった企業様に対しても、机上の空論ではない、弊社自身が失敗を積み重ね、試行錯誤の結果得た実践型ノウハウ・ナレッジを「クラウド社労士コモン」という弊社サービスを通してご提供できる仕組みを構築している点が強みとなっています。
TRIPORTは厚労省や東京都から働き方改革に関連する様々な賞を受賞しており(「テレワーク推進企業等厚生労働大臣表彰(輝くテレワーク賞):特別奨励賞」、「東京都女性活躍推進大賞(東京都):優秀賞」、「テレワーク推進賞((一社)日本テレワーク協会):優秀賞」等)、このような様々な公的機関から表彰された働き方という具体的成果に基づくアドバイスができる実践型の士業法人は他にないでしょう。実のところ、業界内でも働き方を指導してほしいという依頼をいただくことが多々あります。勿論、まだまだ改善の余地がある働き方ではありますが、社労士業界だけでなく士業界全体に弊社のような働き方が拡がり、また、その士業たちの先にいるクライアントにまで、良い影響を伝播していくことで世の中に喜ばれる大きなインパクトを与えていけたら嬉しいですね。
その他、弊社の強みとしては、上記「働き方」や「サービスの全国展開」を可能としているITインフラを内製している点で、経営陣4人のうち3人がエンジニア出身である点などもあると考えています。社労士に限らず士業という分野は属人性が高く、またヒューマンエラーも発生しやすいため、業界最大手の士業法人でも全国展開して安定的にスケールし続けるのは難しい現状があります。しかし、労働集約型の士業界のビジネスモデルの中でも、「クラウド社労士コモン」のようにITの力を極限まで活用した「リアル×バーチャル」のハイブリッド型クラウドサービスなら、士業という分野でもサービス品質を高めながらの全国展開も可能になり、士業DXを推進していけるのではないかと考えています。
--社労士として、事業にかける思いをお聞かせください。
そもそもの話にはなりますが、社労士の仕事だけをしようという考えは全くなく、人事労務のプロフェッショナルである社労士だからこそ提供できる付加価値が何かを考え、その能力をどのように活かせるのかを思考することが重要だと考えています。
士業のなかでもヒト・モノ・カネの問題にアクセスしやすい国家資格である社労士は、あくまでも企業の課題を解決するための1ツールでしかありません。例えば、採用効率を上げる・離職率を下げるなどの具体的効果、付加価値を「見える化」し、さらに、その具体的効果を享受するために必要な過程・ステップ、具体的取組はどのようなものかも「見える化」することで論理展開を明確に定義すれば、中小零細企業にとっての社労士がもたらす付加価値への理解が深まり、また、これらの付加価値を享受したいという思いが湧き、士業に対する心理的ハードルも下げられるのではないでしょうか。
ショールーム型経営を軸とした士業界全体のDXを推進。そしてSXの実現と to Cの世界へ
--今後の中長期的な事業展望についてお伺いできますか。
現在の弊社は業界・業態問わず様々な企業様を対象にサービス提供していますが、その中でもショールーム型経営を軸にしながら士業DXにも継続して力を入れていきます。また、その各士業の先にいる多くの企業等のDXまで進めていき、さらにその先には、現在のB to Bの世界観で企画・創造された有益な仕組みをベースにB to B to Cの世界観にも展開し、SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)まで意識したうえで、長期的には医療業界をはじめ、様々な業界のto Cまで考慮した新たな付加価値の創造もしていけたらと考えています。
また、上記で述べたような社会貢献性を考慮した事業面での展望、思い・構想もあれば、弊社自身の組織の在り方が誰からも魅力的に感じてもらえるような、そして憧れられるような存在になれるよう、これからも組織作りには拘り続けていきたいですね。
--最後にProfessional Onlineを見ていただいている経営者、決裁者の方に向けてメッセージをいただけますか?
「餅は餅屋」という考え方から、あらゆる業界の企業様、また税理士などの他の士業法人・事務所様、さらには同業である社労士法人・事務所様など、それぞれの強み、専門分野は異なるかと思いますので、それら一人一人の能力を最大限に活かしたシナジーを創造できたら最高に嬉しく思います。少しでもTRIPORTにご興味をお持ちいただけた方がいらっしゃいましたら、コラボレート企画等もぜひご一緒に進めていきたいと考えていますので、お気軽にお声掛けいただけましたら幸いです。
--本日はどうもありがとうございました。
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