中西 裕太郎(なかにし・ゆうたろう)
株式会社TENTIAL 代表取締役CEO
1994年埼玉県生まれ。サッカー強豪校のレギュラーとしてインターハイに出場するも、心疾患のためにプロになることを断念。その後、株式会社インフラトップ(現・DMMグループ)の創業メンバーとしてプログラミング学習サービス「WEBCAMP」立ち上げに参画。リクルートキャリアにて新規サービスの事業開発を経験したのち、2018年2月に株式会社TENTIALを創業。
コロナ禍前の調査によると、国内におけるスポーツ活動への参加にかかる支出を対象としたスポーツ参加市場規模は2.2兆円。美容関連商品・サプリメントやスパツーリズムまで含めた世界のウェルネス市場規模は500兆円に迫るとも言われる巨大市場です。
スポーツで得た知見をもとに、さまざまな健康課題を解決する商品や場を提供し、社会全体の健康増進に寄与するシステム作りに挑戦する株式会社TENTIAL。数多くのベンチャーキャピタルが注目する代表取締役CEOの中西様にお話を伺いました。
プロサッカー選手の道は絶たれたが、原体験を元に起業
--本日はよろしくお願いします。早速ですが、中西さんが起業されたきっかけをお聞かせください。
私はもともとサッカー少年で、高校時代はインターハイに出場したこともあります。プロを目指していたのですが、高校3年生で心臓の病気になりサッカーでのキャリアを断念せざるをえなかったことが大きな転機となりました。
スポーツ以外で何か自分のポテンシャルを活かせる別のキャリアを、と模索する中でプログラミングと出会い、プログラミング学習サービス「WEBCAMP」を手掛ける株式会社インフラトップの創業メンバーとして事業に参画しました。
自分のようにキャリアを断念した人や、もっと何かできるはずと思いながらもやりたいことがわからないような人たちに、プログラミングをソリューションとして提供すれば、その人たちの可能性を広げられると考えたのです。
多くの方々の教育やキャリアチェンジに携わるなかで、自分はやはりスポーツに携わる仕事がしたい、とあらためて感じました。3年ほど経ち、ある程度売上規模も大きくなった頃に、このまま同じ事業を続けていくのか、それともスポーツ領域で起業するかという悩みが出てきたのです。
ただ、その時の自分には、100億円や1,000億円規模の売上の会社をつくるには力が足りないとも感じていました。そこで、大きな会社で修業しようと2016年にリクルートキャリアに入社しました。同社では新規事業立ち上げに携わり、幅広くビジネスの勉強ができましたね。その後、2018年2月に株式会社TENTIALを創業するに至りました。
メディア事業で得た知見を商品開発やECモールのマーケティングに活かす
--大きな転機を経て、20代にして既に第二の人生を歩まれているのですね。では、貴社の中心事業についてご説明をお願いいたします。
現在はウェルネスD2Cブランド「TENTIAL」を中心に、新規のECモールも立ち上げ予定です。
創業時はメディア事業から始まり、さまざまな競技のアスリートの監修のもと、身体のケア方法、運動の効率、健康のための工夫などを発信しております。一般の方とアスリートが持つ情報には大きな開きがあり、それを解決したいと立ち上げました。現在は、月間利用ユーザー数が150万人を超える国内最大級のスポーツ情報メディアに成長しました。
メディアの顧客データ分析をする中で、消費者が抱えている健康課題が見つかりました。それを解決するために立ち上げたのがウェルネスD2Cブランドの「TENTIAL」です。例えば、肩こりや腰痛を改善するには、足がきちんと使えなければなりません。そのためのインソールや、睡眠課題に対して機能性ウェアで睡眠の質をあげるような商品を作っています。
2021年9月には5億円の資金調達に成功し、今後は「TENTIAL」の新商品開発をスピードアップさせることと、他社商品も含めたスポーツ・ウェルネスに特化したECサイトの立ち上げを予定しております。
現在の国内EC市場においては総合モール型が中心です。商品点数が多く利便性には優れているものの、専門性の高い商品の中から一般消費者が本当にいい商品を選択するのは困難です。
そこで、弊社が自社ブランド商品の企画開発やメディア事業を通じて培ってきた、ウェルネス・マーケティング・商品選定・物流のノウハウを活用することにより、消費者がより良い商品をより自然に選択できるようにします。また、良い商品を出しているのにマーケティングが弱いがために売れないというメーカーの課題も解決していきます。
弊社のビジョンは「スポーツと健康を循環させ、世界を代表するウェルネスカンパニーを創る」です。スポーツが生まれたのは江戸時代、貴族の遊びが起源です。その頃から、スポーツとはスポンサーや支える人たちがいて成立するもので、今でもその構造は変わっていません。
しかし、弊社のようにスポーツに関連したアセットをもっと活用できれば、マネタイズは可能です。また、健康増進という社会課題も鑑みれば大きなポテンシャルがあると感じています。スポーツをきっかけに生み出した資金を、またスポーツに還元し、スポーツを通じて心と身体を元気にすること、ひいては社会全体の健康増進につなげるエコシステムを作ることを目指しています。
--貴社の独自性や強みについてお伺いできますか。
スポーツや健康には詳しくても、ビジネススキルが無かったりテクノロジーに詳しくなかったりという話はよくあります。弊社はその両方を担保し、かつ、スピード感を持って動けるベンチャー企業であることが強みです。
これまでは自社で人材育成をすることが多かったのですが、今後は組織マネジメントができるようなビジネス力を持った経験者の採用を強化し、事業展開をさらに加速させていく予定です。
スポーツ×ビジネスで社会の健康増進に貢献する企業へ
--今後の中長期的な事業展望についてお伺いできますか。
スポーツで得た知見をもとにさまざまな健康課題にアプローチし、社会の健康を実現すること、持続する形でスポーツと健康を循環させることがミッションです。ビジネスという枠組みはそのための手段ですので、大事なのは利益をきちんと出すことです。
ただ、スポーツからの収益を健康増進につなげるという軸さえぶれなければ、中長期的に事業形態が変わっていくこともありえると考えています。
たとえば、規模は小さいですが、福利厚生の一環でテレワーク社員に向けて健康セミナーを提供するBtoB向けのサービスを行っているほか、接骨院との共同セミナーや、スポーツクラブで選手に向けた足のセミナーなども開催しております。
ウェルネス・スポーツ産業は全世界で500兆円とも言われる巨大な市場です。日本でも少子高齢化の進展による医療費高騰や生活習慣病など、多くの健康課題があるため、予防や健康管理などのヘルスケア産業は大きく拡大することが予測されています。
顧客が抱える課題が大きいだけに、その解決策はいろいろとあるでしょうし、解決にともなって社会が良くなるポテンシャルも高いです。それだけに、今後は競争環境が変わってくる可能性があると考えています。弊社のようなベンチャー企業はもちろんのこと、今後は大手企業の参入もありえます。
スポーツ・ウェルネス領域はまだ旧態依然とした雰囲気がありますが、それでは立ち行かなくなってきているのです。変革を起こすためには、これまでのように飛び抜けたパッションを持つ人材だけではなく、ロジカルさを兼ね備えた人材がさらに必要です。
弊社でも、そういったスキルを持ったビジネスパーソンの採用をすすめ、オンラインから日本のスポーツ・ウェルネス領域をけん引する企業となることを目指します。
--最後にProfessional Onlineを見ていただいている経営者、決裁者の方に向けてメッセージをいただけますか?
読者の方々は、限られた時間で成果を出すために日々生産性を追い求めていらっしゃると思います。弊社は、そんな皆さんが20年後、30年後も活躍できる身体作りをサポートするブランドを作っています。
--本日はどうもありがとうございました。
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