「サステナビリティ情報の流通を滑らかにして、意思決定に改革を」

「サステナビリティ情報の流通を滑らかにして、意思決定に改革を」

サステナブル・ラボ株式会社 代表取締役CEO 平瀬 錬司

カテゴリ: IT・情報通信、従業員数: 10〜49

2023.07.13

平瀬 錬司(ひらせ・れんじ)

サステナブル・ラボ株式会社 代表取締役CEO

 

 

平瀬氏はサステナブル・ラボ株式会社の代表取締役でいらっしゃいます。昔夢見ていた宇宙飛行士の道を挫折した後、彼は起業家としての道を踏み出しました。幾度となく起業し、アグリテック、人材育成、ソーラーシェアリング事業など、多様な領域で挑戦を重ね、現在は5度目の挑戦としてサステナブル・ラボ株式会社を創業・経営されている平瀬氏が「1勝2敗1引き分け」と評するその経歴は、それぞれの事業の成果と共に、彼の不屈の精神と挑戦心を如実に表しています。

 

 

現代のビジネスにおいて、企業活動が地球環境や社会へ与えるインパクトが、ますます大きな注目を浴びています。そうした中、サステナブル・ラボ株式会社の革新的なアプローチは、新たなパラダイムを提示しています。同社のデータプラットフォームは、財務情報だけでなく、企業の環境課題や社会課題への貢献度をも判断材料として取り入れることで、投資や融資、就職先選びといった私たちの日常の決定を変える可能性を秘めています。私たちは社会的な課題に直面する今日の日本企業にとって大きな示唆を与えるであろう同社の取り組みについて、さらに詳細を伺うべく、当業界の先行者である平瀬氏に取材を行いました。

 

 

社会影響力あるビジネスへの道―宇宙飛行士から社会起業家への軌跡

 

--本日はよろしくお願いします。早速ですが、平瀬さんのこれまでのキャリアや起業のきっかけについてお聞かせください。


はい、私は今のサステナブル・ラボを立ち上げるまでに計4回起業をしているのですが、実は最初は宇宙飛行士になりたくて。なので大学も宇宙物理学を学ぶ大学に進学したのですが、結果その夢は早々に諦めることになり、友人と共に学生起業する道を選びました。現在の会社は5社目でして、これまでの4社ではアグリテック(農業技術)、介護と農業の人材育成スクール事業、そしてソーラーシェアリング事業など、農業と環境を軸にした事業に取り組んできました。M&Aの形で売却したのが2社、廃業となってしまったのが2社なので、 1勝2敗1引き分けといった感じで。今やっている事業は、それらの経験を経てたどり着いた集大成といった感じですね。
 

 

--大変興味深い経歴ですね。それぞれ異なる分野での起業とは、一体どのような背景からだったのでしょうか?

 

そもそも私のビジネスに対する原動力は、「世の中に貢献したい」という思いから来ています。私がいわゆる社会起業家(社会課題解決を企図する起業家)の道を選んだのは、自分自身がそもそも優秀な人間ではないと何度も思い知ったうえで、全身全霊をかけられることをやった時に初めてやっと人と互角に渡り合える、そんな思いを抱いていたからです。普通のことをやっていては人と互角に渡り合うこともできない、と思っていたのです。もともと宇宙飛行士を目指していたのも、「人類社会に貢献できそう」「いまよりもずっと遠い場所に行きたい」といった子供っぽい単純な思いからでした。子供の頃からトーマス・エジソンやニコラ・テスラ、野口英世など、「人生をかけて人類社会に貢献した人」に憧れていたのです。そんな風に生きられるなら、全身全霊をかけられ、自分の能力を超えた挑戦ができると考えたのです。

 

投資家からの評価を高める「サステナビリティ情報プラットフォーム」

 

私たちは『サステナビリティ情報の流通を滑らかにすること』とそれにより『人々の選択に影響を与えること』を目指して、企業のSDGsやESG情報に関するデータプラットフォームを提供しています。このデータプラットフォームを用いて主に2つのビジネスを展開しておりまして、一つ目は金融機関が投資判断や融資判断のためにサステナビリティ情報を求める、というニーズに応えるためのサービスです。主に上場企業のサステナビリティ情報を収集し、分析・評価しやすい形に整えて、機関投資家、証券会社、銀行などの金融機関に対して提供しています。

 

ただ、このサービスで提供している情報は基本的に世の中に公開されているものを集めているので、上場企業などの大企業の情報に限定されてしまい、中堅・中小企業に関する情報がカバーできないという課題がありました。これが二つ目のサービス、プロダクトに繋がるのですが、大企業のサプライチェーンやバリューチェーン全体を評価する際にはそれらを支える中堅・中小企業のサステナビリティ情報も重要になってきます。そこで私たちは会計ソフトのSDGs版のような、非財務諸表(財務諸表の対義語で、企業のサステナビリティ情報をまとめた諸表)を作るソフトを銀行や事業会社に提供しています。これにより自社の環境貢献度や社会貢献度、人的資本などを集計、管理することが可能となり、中堅・中小企業はこのソフトを導入することで大企業や官公庁との取引がスムーズになったり、人材の採用力や組織力の向上を図ることができるのです。

 

--そのようなデータプラットフォームを生み出せた、貴社だけの強みを教えてください

 

まず私たちのチームの多様性が挙げられます。メンバーの半分は外国人で、12カ国から集っており、国内外の金融機関出身者、博士課程出身者、テック出身者等を抱えています。そういった多様なメンバーによって、金融の文脈を理解したサステナビリティ情報プロダクトを開発することができるとともに、機関投資家、証券会社、メガバンク、地方銀行、さらには官公庁等の多くのステークホルダーと緊密な関係を築くことができています。また、日本を代表する上場企業から、地域の中小企業まで幅広い範囲の事業会社も顧客に抱えることができています。これらの広いパートナー網・顧客網を通じて、サステナビリティ情報に何が求められているのか、それらをどう提供すると良いのか、という市場の機微について深く理解できていると思っています。

 

--それは驚きました。広く深い関係や知見を獲得できた理由についてはどういったものがあるのでしょうか?

 

これは、私たちがこの領域に着目し始めたのが早かったことが大きな理由です。私たちがこのフィールドで活動を開始したのは5年前でして、私に限っては十数年にわたり環境業界で活動してきましたので、様々なセグメントのリーダーたちとお話できる機会を多くいただいて、それが非常に大きかったですね。将来を見通すことができる場所に、たまたまいたということです。

 

もう一つは、私たちのチームが大きく三つの異なる背景を持っていることです。一つ目は金融出身、二つ目はサステナビリティや環境を扱ったコンサルティングやアカデミアの背景を持つプロフェッショナル、そして最後にデータサイエンティスト。これら三つの領域の交差点に私たちは立っているため、各業界・各領域を深く理解したうえで、本当に必要とされているサービスやプロダクトを提供できると考えています。いつだって、イノベーションの源泉は異分野を高度に掛け合わせることだと信じています。

 

--業界の先行者である平瀬様から見て、日本のサステナビリティ業界を加速させていくにはどういった要素が必要とお考えでしょうか?

 

欧米に比べて日本の消費者は、環境配慮した消費行動が浸透していないとの調査結果がありますし、肌感覚でもそのとおりだと思います。これには様々な理由があると思いますが、日本は一見すると恵まれているからではないでしょうか。国土の自然は豊かで、露骨な社会不公正・不公平も目にする機会が少ない。だから、企業に環境配慮や社会正義を求めるという意識が醸成されにくいのだと思います。しかしその一方で、人を大切にする企業を尊重し、ブラック企業は避けるというような、「人」を起点にした意識は高まりつつあるように思います。当社としては、このようないまの日本社会の情緒や動きを念頭に置いており、人々や社会にとっての「良い会社」を照らすことが使命と考えています。

 

--最後に平瀬さんが今後どのように事業を展開していくのか教えていただけますか?

 

今後の展望については、大きく2つの方向性があります。私たちは『サステナビリティ情報の流通を滑らかにすること』をミッションとして取り組んでいるので、どちらもそこに寄与するものになりますが、一つ目は、私たちがこれまでに行ってきた活動をさらに深め、広げていくことです。つまり、「縦に伸ばす」方向性です。現在、上場企業や大企業の公開情報だけでなく、中堅・中小企業のサステナビリティ情報も流通させられるよう、非財務諸表の作成ソフトを提供しています。上場企業や大企業以外の、中堅・中小企業の「サステナビリティ情報の海」を作り出すことで、「良い会社」が正当に評価されて、企業間の取引やサプライチェーン全体でのサステナビリティ向上、人の採用や組織力の向上に良い影響を与えていきたいですね。

 

もう一つの方向性は、「横に伸ばす」ことです。日本のビジネスはもちろん何らかの形で世界と繋がっているので、私たちの情報プラットフォームを日本だけでなく国外に拡げて、ガラパゴスではないプラットフォームを作っていきたいです。

 

冒頭申し上げた通り、私たちの目指すところはサステナビリティ情報の海を作り、その情報の海を隅々まで行き渡らせる、といったところにありますので、そのために金融機関や当局を巻き込んで業界団体を立ち上げることで、ルール作りにも取り組みながら社会全体に対する呼びかけも行っています。最終的には全ての経済活動を*SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)していくこと、それが私たちのビジョンです。

 

--本日はどうもありがとうございました。

 

*SX: 「企業のサステナビリティ」(企業の稼ぐ力の持続性)と「社会のサステナビリティ」(将来的な社会の姿や持続可能性)を同期化させる経営や対話を行っていくことが重要であるとされ、こうした経営の在り方や対話の在り方を「サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)」と呼ぶ

 

 

サステナブル・ラボ株式会社

https://suslab.net/
 

 

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