高岡 敦史(たかおか あつし)
合同会社Sports Drive 代表社員
2002年筑波大学体育専門学部卒業。2009年筑波大学大学院博士課程人間総合研究科単位取得後退学。2015年より現職。大学生を地元の企業の長期インターンシップに出すという事業を展開する知人と、スポーツ選手のセカンドキャリアについての話から事業を始めることを決意。2020年に合同会社Sport Driveを設立。
スポーツクラブに所属するプロスポーツ選手やコーチは、常に契約解除のリスクにさらされ、選手引退後の生活に不安を抱えながら競技に取り組んでいます。選手の活躍は街に暮らす人々に夢や活力を与えてくれますが、選手のセカンドキャリア形成についての支援は街として十分ではありません。今回は、スポーツまちづくりに関するコンサルティングに取り組み、プロスポーツ選手のセカンドキャリア問題解決に尽力する合同会社Sports Drive代表社員の高岡様にお話を伺いました。
スポーツまちづくりを研究する研究者が問題解決のため事業を立ち上げ
--本日はよろしくお願いします。早速ですが、高岡様の今までのご経歴をお聞かせください。
2002年に筑波大学体育専門学部を卒業し、2009年に筑波大学大学院を修了し、体育科学博士の学位を取得しました。その後、岡山大学スポーツ教育センターで助教を務め、2015年より岡山大学大学院教育学研究科で准教授として研究を行っています。研究分野はスポーツマネジメントやスポーツまちづくりです。
スポーツでの地域活性化に関わるようになって10年以上が経ち、岡山で経済界の方々と実践していく中で「こんなこともできる」「あんなこともできる」というアイディアが多く生まれていましたが、実際に行動に移せる人がいないことが課題でした。良いアイディアが形にならずに消えていくことも多かったです。
この問題を解決するため、2020年にスポーツによるまちづくりや地域活性化を支援する合同会社Sports Driveを立ち上げました。私は研究者であるため、研究者視点での課題発見や解決方法を事業化できるのではないかと考えたのです。現在はメディア運営やスポーツ選手のセカンドキャリアデザイン支援事業を他の企業と協業しながら行っています。
--起業に対する意欲は元からあったのでしょうか。
スポーツの経営学者のため、知識は持っていたのですが、研究が忙しく起業するつもりはありませんでした。ですが、コロナ禍によりスポーツ界では試合がほとんどできなくなり、何か手を打たないといけないと強く感じました。
実際に事業として動かしていく中で、研究対象が増え相乗効果も生まれています。会社を大きくしていこうとはあまり考えていませんので、自社で一気通貫してやるというよりは、スポーツと地域活性化やまちづくりに関わる仲間を増やし、ネットワークとして繋げていった方が結果的に街のためになると思い、つながりを大切にしています。
利益の出し方についても、みんなが売上を上げて問題解決ができる枠組みを街の中にたくさん埋め込むことが必要だと考えています。街の中でスポーツまちづくりがどんどん進むような環境を作ることが使命ですね。
プロスポーツ選手のセカンドキャリアに繋がる長期インターンシップを日本で初めて行う
--次に貴社が取り組まれている事業について詳しくお聞かせください。
スポーツによる地域活性化やまちづくりに関わるイベント企画、運営コンサルティング、調査研究等を行っています。その中で力を入れて取り組んでいるのが、現役プロスポーツ選手の長期インターンシップマッチング事業です。
現在トライフープ岡山(プロバスケットボールチーム)に所属する選手やコーチに対して、地元ベンチャー企業で長期インターンシップを行い、セカンドキャリア意識の向上や、選手引退後のネクストキャリア形成に必要な力を身につけてもらっています。
--非常に面白い取り組みですね。是非詳しくお聞かせください。
地方のトップリーグではないクラブでは、プロバスケットボール選手として生計を立てられるギリギリの収入しかなく、若い人はなんとかそれだけで生活しています。しかし年齢を重ねて家庭を持つようになるベテランの選手は「今後どうするか」という不安を抱えながら選手生活を送っています。
研究者としてそのような実態は以前からよく知っていて、問題だと感じていました。そのタイミングで大学生を地元の企業に長期インターンシップに出すという事業をやっている知り合いと話をし、スポーツ選手に関しても同じ事業モデルが成り立つのではないかと考え、この事業を始めました。
トライフープ岡山も選手のセカンドキャリアについて問題意識を持っており、合致して事業が実現する運びになったのです。
就活生の体験的なインターンシップとは異なり、会社全体の事業を俯瞰し理解したうえで、一つの仕事を完全に任せてもらう形をとっています。大企業だと縦割りでこれが難しいため、基本的にお願いしているのはベンチャー企業や中小企業です。イメージとしては社長とマンツーマンで一緒に仕事をするような形です。
尖った事業展開をしている企業もあるため、そもそも選手がどのような仕事をしたいと思っているのか、どのようなことに関心があるのかを聞き取ることは、インターン先とマッチングさせるために何よりも重要です。選手と面談を行い、生い立ちやこれまでのキャリアを聞きながら、もし別の仕事をするなら何をしたいか、どんなキャリアイメージを持っているかを言葉にしてもらい、候補を複数挙げて紹介するようにしています。
その後、関心がある企業を選んでもらい、社長と直接面談をして最終的にインターンシップ先が決まります。インターンシップ中も聞き取りを行い、途中で企業を切り替えることも可能となっています。
現在はトライフープ岡山のみですが、他のチームも同じ課題を抱えているため、岡山だけでもまだまだマーケットは大きいと感じています。
--スポーツ活動と仕事の両立が課題として出てくると思うのですが、実際はどうなのでしょうか。
私も長期インターンシップにはスケジュールの合間を縫って行くしかないと考えていましたが、基本的に将来のことに不安を抱えている人は両立に抵抗感を感じないようです。当事者たちは「いけます」と言ってくれており、プロスポーツ選手はスポーツだけをしているものという固定観念が自身の中にもあったのかもしれないと気づかされました。
フルタイムで会社のデスクの前にいなければならない働き方では両立が難しいため、リモートワークができるような体制を整えてもらっています。選手に対してはインターンシップに取り組む中でアスリートとして持っていた強み・能力に気が付き、単に次の人生のためではなくアスリートとしてもさらにブラッシュアップしていきます。
プロスポーツ選手が安心して暮らせるまちづくりを全国に普及させ、関心を持つ企業を増やしたい
--今後の中長期的な事業展望についてお聞かせください。
全てのチームが同じ問題を抱えているので、全国に普及しなければならないと思っています。プロスポーツのセカンドキャリアについて関心を持ってくれる企業が増えるとありがたいです。
トライフープ岡山のクラブ内にも課題を抱えている選手がまだまだいるはずです。現在、インターンシップを行っているメンバーから波及して、インターンシップの良さが他のメンバーにも伝わればいいなと思っています。
また岡山にはトライフープ以外にもクラブチームが多く存在するため、徐々に他のチームにも活動の輪を広げていきたいです。他県のクラブチームから話を聞きたいと声をかけていただくのですが、その地域のベンチャー企業とネットワークを構築する必要があるため、今はまだ岡山内のみでの事業になっています。ですが、いずれは地域を越え全国に拡大させられる取り組みだと思います。
会社全体としてはパラスポーツを健常者と一緒にやる大会の主催も行っているため、パラスポーツを通したソーシャル・インクルージョンを推進するような事業展開をしていきたいです。加えて岡山はeスポーツがまちづくりとして盛んで、普及と地域活性化につながる取り組みも行っています。eスポーツをまちづくり事業として展開し、地域活性化やまちづくりに貢献していきたいです。
--最後にProfessional Onlineを見ていただいている経営者、決裁者の方に向けてメッセージをいただけますか?
事業展開をしようとすると事業領域がピンポイントにならざるを得ず、スポーツによる地域活性化やまちづくりに関する事業が乱立して相乗効果を生めずにいます。それらを束ねていく仕事が必要だと思っています。スポーツと社会の課題を起点にして企業が横に繋がる、協業していくと多くの解決の糸口が見えていくと思います。
それを見つけるための場として対話ができるといいなと思います。地方にこそ課題解決の集積があると感じていますので、岡山をフィールドに一緒にできることがありましたらぜひお声がけください。
--本日はどうもありがとうございました。
合同会社Sports Drive
https://www.facebook.com/LLCSportsDrive
Professional Onlineでは無料で経営者インタビューに掲載いただける方を募集しています。
お問い合わせフォームよりご連絡ください。
プロフィール
髙岡 敦史
会社情報

決裁者アポ獲得支援サービス「アポレル」に登録すると、日替わりでレコメンドされる著名な経営者と出会うことができます