林 祥晃(はやし・よしてる)
SOMPOコミュニケーションズ株式会社 代表取締役社長
1988年 立教大学法学部を卒業後、安田火災海上保険株式会社(現 損害保険ジャパン株式会社)に入社。以来、34年間保険金サービス部門を中心に活躍、同社の役員を経て現在はSOMPOグループ唯一のコンタクトセンター運営専門会社であるSOMPOコミュニケーションズ株式会社の代表取締役を務める。
創立以来、32年目を迎えるSOMPOコミュニケーションズ。SOMPOグループのコンタクトセンター機能を一手に担う同社は、他のコンタクトセンターとは異なり、24時間365日対応という強みを持っています。現在(2023年6月現在)は、6拠点の事業所と約1,200名の従業員規模に成長しています。今回は同社代表取締役社長の林さんにお話を伺いました。
出向の経験が代表取締へつながる
--まず、林さんがSOMPOコミュニケーションズの代表取締役に就任されたきっかけをお伺いできますか?
私はもともと損害保険ジャパンの役員であったため、その役員を退任後にグループ会社である当社の代表取締役社長に就任しました。2012年から2013年にかけて「損保ジャパン・ハートフルライン」(現:SOMPOコミュニケーションズ)に出向していましたので、その経験を買われたのではないかと思っています。
--御社の事業内容や取引先などを教えてください。
当社は、コンタクトセンター、教育研修、アセスメントを3つの事業の柱としていますが、事実上のメイン事業はコンタクトセンターであり、事故発生時の受付が大部分を占めています。
そのほかには代理店のサポート事業も行っていて、当社のお客さまのほとんどがSOMPOのグループ企業あるいはお取引先となっています。
社員をどう上手くマネジメントするか
--御社ならではのコンタクトセンターの強みや特徴はどういったところなのでしょうか?
先ほど申し上げたように当社のお客さまのほとんどがグループ会社となっておりますので、当社はSOMPOグループのコンタクトセンター事業を担う子会社という立ち位置なのですが、当社ならではの強みはやはり24時間365日で対応が可能、という点です。中でも、24時間365日をほぼすべて内製化で実現しているコンタクトセンターはかなり少数なのではないでしょうか。
というのも、24時間365日稼働においては担当者のシフトが非常に複雑かつ多様になります。担当者一人ひとりの都合も考慮しながら、様々なシフトを上手く調整するノウハウやスキルがないと非常に難しいのです。また人員の確保も必要になってきます。特に深夜帯の人員を確保するためには、企業にある程度のネームバリューが必要であり、当社はスキル・ノウハウとネームバリューという2つの強みを持っていることから24時間365日稼働を実現できていると考えます。
--これらの強みや特徴を持てるその背景にはどういった事業戦略があるのでしょうか?
まずシフトを上手く調整するには、コンタクトセンターの管理者がオペレーターをエンゲージメントすることが重要です。この業界の平均的な離職率は月に3%以上と言われています。これは10人採用したとしても1年後には3、4人が辞めてしまう数値であり、そうなると安定的に人員を確保することに苦労します。当社の離職率は月2.2%と低いポジションにあり、社員のエンゲージメントに注力していることの現れかと思います。社員をどう上手くマネジメントするかという戦略が深くかかわってきます。
--そのマネジメントとは具体的にどのようなことを行っていますか?
当社の場合は、早番(8:00-16:00)、通常勤務(9:00-17:00)、遅番(12:00-22:00)、深夜番(22:00-翌8:00)などのシフトがあります。1人のスーパーバイザー(SV)が、約10名のオペレーターのシフトを調整する上では、一人ひとりのタイプや性格を把握・理解し、彼らの仕事へのモチベーションを上げるということが重要になってきます。
どんな業界でも社員のモチベーションを高め、その能力を最大に発揮させることは非常に難しいことだと考えます。加えて、当社の場合は様々なシフトで業務を行っており、そうした中で24時間365日をカバーできるオペレーターを一人前に育て上げていくためには、十分に仕組化された教育・研修体系が必要となってきます。
当社では、最短でも2か月間の研修期間を設けており、事故受付業務においてただ電話応対するだけではなく、不安を感じているお客さまへの接し方をはじめ、損害保険に関わる様々な業務知識や相手方への的確なアドバイス手法なども身に着けていきます。このようにじっくりと教育・研修に時間をかけて、丁寧に人材を育てていくことを重視しています。
現在約1200名の社員がいますが、そのうち約800名がオペレーターで、正社員は約400名です。社員登用の仕組みとしては、約800名のオペレーターの中から正社員への登用を希望する人が、試験・面接などを経て合格した者がSV等正社員になるというスタイルをとっています。
社員一人ひとりを「ハートに火が付いた熱い状態」にしたい
--今後、御社をどういう方向に進化させるのか、そのビジョンなどがありましたらお願いします。
今後は社員教育などを通じてそれぞれのスキルをもっと向上させ、定着率をさらに高めたいと思っています。私は損保ジャパンの部長時代から「2:6:2の法則の打破」というビジョンを持ち続けています。
「2:6:2の法則」とは、優秀な人材が2割、平均的な人材が6割、下位のグループが2割に分かれるという考え方ですね。私はこれを打破したい。社員一人ひとりが熱意を持って、自分の能力を思い切り発揮できる企業にしたいという強い思いを持っています。
これを実現するためには、社員それぞれが自分の力で企業や自分の未来像つまりビジョンを感じてほしい。そしてそのビジョンを感じることができたら、今度は自分のパーパス(存在意義)を心の底から自覚してほしい。これができれば、自らの役割・使命つまりミッションがおのずと明確になってくるはずです。
世の中ではこうやって自らのミッションを導き出せていない社員を抱える企業がきっと多いのではないでしょうか。私は歴史と伝統のある大きな企業になればなるほどいろいろなシガラミがあり、社員一人ひとりが自らのミッション実現にチャレンジができていないと感じています。
当社ではそうしたことが実現できる環境づくりを目指しています。そのために私は「8つの課題」というものを設けています。具体的には「トップダウン→ボトムアップ」、「本社が主役→現場が主役」、「恐れの文化→赦しの文化」、「クローズ文化→オープン文化」、「PDCA(計画)文化→OODA(実験)文化」、「管理の文化→自発の文化」、「KPI→P&L(KGI)」、「評価→評判」というものです。
これを常日頃から社員たちにメッセージとして繰り返し発信し続けることにより、社員一人ひとりが「ハートに火が付いた熱い状態」にしたいと強く願っています。この目標の実現に向けて、日々努力を積み重ねているところです。
--本日はお話を聞かせていただきありがとうございました。
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