安藤 広大(あんどう・こうだい)
株式会社識学 代表取締役社長
1979年、大阪府生まれ。 早稲田大学卒業後、NTTドコモ、ジェイコムホールディングスを経て、ジェイコム(現:ライク)にて取締役営業副本部長を歴任。 2013年、「識学」という考え方に出会い独立。2019年2月東証マザーズ上場。識学講師として、数々の企業の業績アップに貢献。
チームとして成果を出すために「モチベーション」の重要性が各所で謳われていた中で「モチベーションを上げても成果は出ない」というインパクトのあるメッセージで話題を浴びた株式会社識学。2300社が導入し、いま最も人を成長させると言われる組織論の詳細や成功事例、今後の事業展開について安藤代表取締役社長にお話をお伺いしました。
理論を学び実践の中で「識学」の有用性に気づいた
ー 本日はよろしくお願いいたします。まずはご経歴と識学様の創設に至った背景をお伺いできますでしょうか。
はい。新卒でNTTに入社し、その後ライクという人材サービス企業でNo.3として営業本部長として直属の部下70~80名を取りまとめていました。その頃に友人の紹介で識学の創始者にお会いし識学を学びまして、「この理論は正しい」と実感しましたので、その後、まずは個人事業主として独立しました。
最初からいきなり識学を販売しても相手にされないと思い、NTT時代から積み上げてきた通信業界での経験・人脈を生かし、営業支援として顧問契約をしたいという企業様に対し、組織運営から任せていただいて30~40人規模の組織を識学の理論に則って運営してみました。その結果、3カ月後には業績が急激に上がり、その結果、社長から「全社に導入してほしい」という要望を頂き、全社的に導入されることになりました。
この様子を受けて「やはり識学は間違いない」と思いました。個人事業主でも十分な収入を得ることができましたが、識学という独自理論をより多くの企業様に実践して頂きたいという思いで株式会社識学の設立に至りました。
ー ありがとうございます。識学の有用性を実感されたきっかけをお伺いさせてください。
はい。理論的には識学が正しいことは明白でしたが、実践して成果が出ていくにつれてより強く有用性を感じるようになっていきました。前職時代の私の組織マネジメントは、社員の心を読み取って動かしていくことにフォーカスする、いわゆる「国語」的な発想でのマネジメントをしていました。
ところが、このようなマネジメント手法を採りますと、私が部下一人一人に寄り添っていくことになります。そのため、人によってコミュニケーションの量や質に差が出てきます。部下からするとコミュニケーションに差があることが不平等なマネジメントに思えたようで、不平や不満につながるケースもありました。
識学を学ぶ中で、組織は「国語」ではなく「数学」や「物理」の発想で動いていることに気づかされました。
ライク社から個人事業主になる前に、あるベンチャー企業をお手伝いさせていただいていたのですが、それまで理論として学んでいた識学を実践したところ成果が表れまして、「やはり識学は正しい」と思うようになりました。
組織における誤解や錯覚を排除する
ー ありがとうございます。では、具体的に識学とはどのような理論なのかお伺いできますでしょうか。
はい。識学とは人間の意識構造に関する独自理論です。意識構造とは人が物事を認識し行動に移るまでのメカニズムのことを言います。
人は物事を正しく認識できれば正しい行動を取ることができますが、物事の認識を誤れば行動も誤ります。このような物事の認識の誤りを誤解や錯覚と呼ぶのですが、人はどのようにして誤解や錯覚を起こすのか、そしてどのようにすれば防げるのか、ということを体系化した独自理論が識学です。
ー 識学を活用したコンサルティングサービスの内容もお伺いさせてください。
組織における問題はほとんどが誤解や錯覚から生まれていますので、その誤解や錯覚が生まれる仕組みを取り除くことで組織全体のパフォーマンスを上げていくご支援をしています。
組織における誤解や錯覚はそのほとんどの場合リーダーの言動が原因で発生しています。そのリーダーの言動をコントロールしたり組織のルールを設計したりすることで組織から誤解や錯覚を取り除いています。
具体的なサポート内容としては、まず、中間管理職を対象にした集団研修のほか、経営者や幹部にマンツーマンで識学の理論を学んでもらいます。識学を社内に浸透させていくためにはトップ層の強い意思が必要不可欠です。
その他には、社内ルールの設計や各部署の役割を決める役割定義表を作成して組織を設計した後、実際に会議に同席して正しい会議の進め方をフィードバックするほか、社員へのヒアリングを実施して、識学の理論に則った組織運営を出来ているかモニタリングをしながら企業様の中に識学を徹底させていきます。
識学に則った組織設計には様々な方法がありますが、一例をあげますと、ルール設定に関して言いますと、結果にフォーカスすることを徹底するよう提案をしています。もし結果ではなくプロセスを評価してしまうと、部下も結果ではなく自分の行動をアピールすることが求められているのではないかと錯覚してしまうためです。
近年の組織論では「モチベーション」が重要視されることが多いですが、会社というのはあくまで社員に給料を与えるために存在しているのではなく、社員が出した成果に対する報酬を支払う組織です。「会社が自分のモチベーションを上げてくれなければ頑張らなくても良い」という誤解を社員に与えてしまわないようにするために、会社の組織制度を修正していきます。組織を成長させていくために「モチベーション」は必要ありません。
ー ありがとうございます。実際に識学を導入して業績を上げた企業様の事例をお伺いできますでしょうか。
はい。私も現場を離れてから長いため直近の事例で詳しくお話しできるものがあまりないのですが、最初にご支援させていただいた企業様は識学の理論に則って成果を出し、今でもご支援が続いています。
もともと社長が社員から愛されている企業様で、キャンプや飲み会も定期的に開催されていたのですが、社員との距離感が近いこともあり社長が1日中社員とミーティングしていました。そのため、ミーティングに出た社長が物事の決定を下すことになり、中間管理職がなかなか育たない状況が続いていたのです。どんなに優秀な人材でも一人で管理できる人数は100〜150名が限界ですので、組織拡大もできず伸び悩んでいる状態でした。
識学を学んだ後は社員との正しい距離感を保てるようになり、トップが動くべき仕事にのみ集中して取り組めるようになりました。その結果として管理職人材も育ち、識学を導入してから7年で売上は5倍に成長しています。
直近の事例に関しては、私たちが運営している「識学総研」というWebメディアに掲載していますので、ぜひそちらをご覧いただけますと幸いです。
・識学総研
組織の現状に強い危機感を持つ経営者にこそ利用してほしい
ー どのような企業であれば識学を学んで成果を出しやすいのでしょうか。
社長が組織に対して危機感を持っている企業様ですね。理論を学んだだけでは、その後の組織運営の中でどうしても識学の理論とは異なる手法を取り入れてしまいます。このようにして、識学で提唱している組織のあるべき姿から少しずつ離れていき、元の組織に戻って行ってしまうので、組織を変えていくために識学を徹底させていくという強い思いが社長に必要です。
また、社長が喜びを感じる時は2種類あると思っています。一つは自分の会社が成長している時です。その一方で、会社の中で自分が王様になれるということに喜びを感じる社長も少なからずいらっしゃいます。後者の社長の方は社員から嫌われることを恐れて識学を徹底していただけないケースが多いです。
ー 直近の戦略として、識学を企業様に「伝える」ところから、「徹底させる」ところまで支援の幅を広げられましたが、どのような背景だったのでしょうか。
はい。先述したとおり、識学を少し学んで離脱された企業様はどうしても識学とは異なる手法を取り入れてしまうことが多々ありますので、成果が出にくくなってしまいます。
そうなりますと、企業様としてもお支払いいただいた費用が無駄になってしまいますし、
私たちとしても、「識学を利用してみたけどうまくいかなかった」という企業様のお声が広がってしまうことになりますので、お互いにとって避けたい事態だと考えています。
そのため、現在は会議への同席や社員へのヒアリングまで徹底してサポートするサービスの提供に注力しています。
また、経営的な面で言いますと、ストック型の収益を獲得していきたいと考えていましたので、継続的にご支援させていただきながら報酬をお支払いいただく形に切り替えていきました。
ー 今後の事業展開について、お考えをお聞かせいただけますでしょうか。
はい。まず、今の状態をコツコツと積み上げていきたいと思っています。その中で、規模の大きい企業様のご利用がまだまだ多くありませんので、大企業様のご利用を増やしていきたいと思います。地方の企業様のご利用もまだ進んでいませんので課題は多いのですが、まずは今の取り組みの速度を上げていくことに集中していきたいです。
また、私が社長の間には難しいかもしれませんが、将来的には「国語・数学・理科・識学」と言われ、一般常識として識学を学ぶような社会を作っていきたいと考えています。
そのために、教育現場との連携も図っていきたいと思っていますが、まずは学校の教員の方々には識学を学んでいただいた方が良いと感じていますので、そのために行政に働きかかけていく方法は常に模索しております。
ー ちなみに、識学様では業務効率化や売上拡大のためにどのようなサービスをご利用されてこられたのでしょうか?
私は直属の部下のマネジメントに専念していますので詳細は把握していません。本来どのツールを導入するか、どのように運用するか、といった細かい業務のやり方について社長が興味を持ってはいけないというのが識学の考え方の一つでもあります。
ー ありがとうございます。最後に読者へメッセージを頂けますでしょうか。
社員と仲良くすることより会社を成長させたい、もしくは社長業に専念したいとお考えの経営者の方は、ぜひ識学の導入をご検討ください。
ー ありがとうございました。
株式会社識学
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