株式会社SATORU
橋本浩寿(はしもと・こうじ)代表取締役
福島県磐梯町生まれ。東洋大学卒業後、都内のウェブ広告会社に勤務し、執行役員を務める。2016年に株式会社SATORUを設立。2017年に独立し祖父の遺した家のある奥会津・昭和村に移住。
コロナ禍により会社や場所に縛られない働き方に注目が集まり、東京から地方へと移住する人も増加しています。今回はそんな状況をいち早く見抜き、デジタルマーケティングのノウハウを生かして地域に貢献する株式会社SATORUの橋本浩寿代表にお話を伺いました。
高校生からの起業の夢を実現
--本日はよろしくお願いします。早速ですが、橋本さんが起業されたきっかけをお聞かせください。
起業自体は、開業医だった父の影響もあり、高校生の頃から考えていました。父は志半ばで亡くなってしまって、私は医者ではなく別の道に進んでしまったのですが、私自身が起業することができれば恩返しになるのではないかと思っていました。
大学を卒業してベンチャー企業に入社したのも、経営に近いところでヒアリングしたり、立ち上げの過程を経験したかったためです。入社したのはウェブ広告を取り扱う会社で、最初は営業を担当しました。
当時はブログブームだったので、企画プロモーションとしてブロガーを使ったプランニングを提案するという形でした。そこからSEOを軸としたサービスに発展していくのですが、自社メニューだけでなく、いろいろな提案を組み合わせてお客さんに提案したいと考えるようになり、社内に広告プランニング部というのを立ち上げて、代理店業に近い形で販路を広げていきました。
それから数年後に、もうひとつ大きな枠組みとしてウェブマーケティング事業部を立ち上げました。役職も執行役員ということになっていたのですが、そこでもともとの夢だった起業に改めてチャレンジしようと、現在の会社を立ち上げました。
地域の魅力を発信する秘密基地
--現在の事業展開について、改めてご説明をお願い致します。
弊社の事業は二つの軸で運用しています。
まず一つ目が、デジタルマーケティング事業で、その中でコンサルティング業務、広告企画や買い付けといったウェブ広告事業、ホームページの制作事業などを行っています。
また、デジタルマーケティングに関しての人材育成にもかかわっています。たとえば、交通系、新聞系の広告代理店の場合、リアルな媒体のプランニングは得意ですが、デジタル分野に対応しきれていないというケースが少なくありません。
特にコロナ禍になってからは、リアルなイベントがなくなったり、プロモーションの費用が縮小して、デジタル分野の相談が増えました。その分野で知識と人材が不足している現状があり、それを勉強会、サポートデスクといった形で育てていくという事業です。民間以外にも自治体の情報発信にも関わっています。
二つ目の軸が地域を盛り上げていく「SHARE BASEプロジェクト」というものです。
これは、自由構想型秘密基地をテーマに自分たちが楽しみながらも「観光」「産業」「福祉」の三つで地域が元気になることを目指しているプロジェクトで、観光の情報発信をサポートし、そこで新たなビジネスを産業として生み出していく、その結果、若い人たちが増えることでお年寄りも活気づいて健康寿命を延ばしていこう、という考え方ですね。
--「SHARE BASEプロジェクト」について、詳しくお聞かせいただけますか。
「SHARE BASEプロジェクト」で、まず最初に立ち上げたのが「SHARE BASE 昭和村」です。我々の軸の一つであるデジタルマーケティングはパソコンと電話があればどこでもできる事業なので、地域を盛り上げていくためには、その地域に移住しようという発想でスタートしました。そこで古民家を再生しながら、みんなで試行錯誤しつつ、今後のことを考えていきました。
そこで「みんなで集まれる基地を作る」という発想が生まれたのですが、やがて民泊として宿泊もできる共通の秘密基地というコンセプトになりました。これは地域拠点のようなもので、お年寄りが集まり、お祭りをやったりという形で地域を盛り上げつつ、民泊として人を雇用し産業も構築できるという目論見でした。
その過程で生まれたのが「SHARE BASE マガジン」。これは移住とテレワークのライフスタイルとストーリーをアーカイブ化する目的で立ち上げたものです。そもそも、移住するだけでも面白いことがたくさんあるのですが、さらに移住したときに古民家を再生し、そのDIYの要素や移住の進捗も記事化しました。
その後、古民家のリノベーションが終わり、民泊がオープンしたのですが、意外だったのはこちらが想定したような楽しみ方をして頂けなかったことです。ITの会社が企業合宿に使ってくれたんですが、どうしても旅の拠点としてその場だけでゆっくりしてしまい、地域に出かけて楽しむことが乏しかったです。
自分たちが移住してきたとき、もっとも楽しかったのが、お年寄りが釣りを教えてくれたり、田舎料理を作ってくれたりということだったため、それならばコンセプト体験プランということで、体験プログラムを用意し、提供したところ、客層が変わり、いわゆる「観光客」という人が来てくれるようになりました。
すると、地元との交流が生まれて、これをさらに展開できるのではないかと思い、始めたのが「SHARE BASE マッチング」というサービスです。これは地域のコト、モノ、ヒトをマッチングする仕組みで、たとえばお年寄りの趣味も観光資源として登録できます。やはり地域の一番の魅力といえば、人だと感じます。
ここ最近「SHARE BASE マッチング」では『タビナカマッチ』という旅ナカとして直近特化型の体験プログラムを予約できるシステムを発表しました。
現在の「SHARE BASE」はこの「昭和村」「マガジン」「マッチング」という三つの軸で動いている状況です。
シェアベースプロジェクト:https://sharebase.jp
固定概念を持たず新たな発想を生む
--今後の中長期的な事業展望についてお伺いできますか。
そうですね、収益の比率でいうとまだまだデジタルマーケティング事業が優勢なので、「SHARE BASE プロジェクト」とのバランスと半々ぐらいのバランスまで持っていけるようにしたいと思っています。
「SHARE BASE プロジェクト」に関しては、「昭和村」では共有の秘密基地として進化の途中なのですが、将来的にはアウトドアブランドやアンテナショップと協業という形もできるし、「マガジン」では「チャンネル」という、誰でも記事をかけるメニューを作っていて、さらに多くの人に広げていきたいと思っています。
「マッチング」に関しても、個人だけではなく、地域おこし協力隊や観光協会などとパートナーシップで契約できるような形で動いています。
あとは、地域の人を育てることも考えています。地域の魅力を伝えたいという場合、なかなか人というリソースにたどり着かないという現状があります。
どれだけ魅力があってもデジタルに疎い人の場合、なかなか発信ができません。それをサポートするハブになるような人が必要となります。そういう人を育てていけば、より観光が進化するのではないでしょうか。
--最後にProfessional Onlineを見ていただいている経営者、決裁者の方に向けてメッセージをいただけますか?
「SHARE BASE プロジェクト」のテーマである「秘密基地」には、子供のような発想を持つことで、大人になった今でも発見に導いてくれるという理念から生まれています。ですから、今後も固定概念にとらわれることなく、無邪気に、やりたいことに対して前向きにチャレンジしていけたらと思っているので、これからも考え方の幅を広げて、一緒に地域を盛り上げていくことができればと思っています。
--本日はありがとうございました。
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