安河内 亮(やすこうち・りょう)
リノべる株式会社 上席執行役員
2003年中央大学経済学部卒業後、ベンチャー・リンクに入社。スーパーバイザーとして従事する。その後人事部に異動したことをきっかけに、人事領域の新規事業として2008年に子会社を立ち上げる。2014年に、現職であるリノベる社の新卒採用強化コンサルティングを実施。その後、2019年にリノべると縁があり、入社を決意する。
国内1位のワンストップ・リノベーションサービスを提供。物件探しから設計・施工、アフターサポート、家具やスマートホームの提案まで手広く手がけ、お客様の「自分らしい暮らし」のお手伝いをしています。お客様満足度や評価が高いのも、実績という裏付けがあるからこそ。「日本の暮らしを、世界で一番、かしこく素敵に。」を企業理念に置くリノベる株式会社上席執行役員の安河内亮様にお話をお伺いしました。
子ども向けの事業立ち上げにも貢献
--本日はよろしくお願いいたします。早速ですが、安河内さんが社内起業されたきっかけをお聞かせください。
2003年にベンチャー・リンクという中小企業向けのコンサルティングを手がける会社に新卒で入社し、3年ほどフランチャイズチェーンのスーパーバイザーを務めました。
その後人事に異動し、主として採用関連の業務に携わっていました。人事領域に関する新規事業を立ち上げようと思い、2008年に子会社を創らせていただき、代表取締役に就任しました。
その後、親会社であったベンチャー・リンクの業績が悪化したことで、2010年に当時のメンバーと共にスピンアウトすることになりました。そこからは人事コンサルティング事業やHRテック事業といった人材領域のサービス開発をしたり、子ども向けの教育事業を立ち上げ、会社を軌道に乗せるべく邁進しました。
--リノベるに入社したきっかけについて教えてください。
2019年にリノべる株式会社に入社したのですが、元々2014年に1年間、リノべるから新卒採用強化をしたいという話をいただき、当時担当コンサルとして一緒に仕事をしたことが最初のきっかけでした。その後も、時々、代表の山下とは食事をしながら事業のことや組織のこと、採用のこと等を会話する関係が続いていました。
2018年頃、経営に携わっていた会社は当時の役員メンバーに託し、次のチャレンジをしようと決めました。その後、山下のビジョンを聞く機会があり、リノベるに参画したいという想いを強く持ちました。
--現在リノベるで携わっている主な業務というのはどのようなものでしょうか。
私が携わる業務は大きく分けて「人事」「ブランディングとPR」「パートナー企業の支援」に分かれます。具体的には社員等の採用活動や組織改善、PR、FCパートナー企業に対するSV(スーパーバイザー)、マーケティング・テクノロジーなどのツール開発を行う部門の管掌をしています。
リノベーション時の手間を軽減させるワンストップ・リノベーション
--現在リノベーション事業を中心に事業展開されていると思いますが、改めてご説明をお願い致します。
当社の事業は、大きく分けて3つあります。
1つ目は、個人向けの住宅リノベーション事業です。個人の方が中古物件を買って、内装を自分好みにリノベーションするためのワンストップサービスを提供しています。
住宅は「一生に一度の大きな買い物」と言われています。大多数の方は住宅購入が初めてで、不安は尽きないものです。また、新しい流れとして中古住宅のリノベーションを選択される方も増えております。
ところが、どうやって優良な中古物件を見つければ良いのか?ローンは?リノベーションに強い設計事務所や工務店をどのように探せば良いか?等、わからないことだらけです。加えて、工程が長いので、プロのリードなしに進めるのは困難でした。
私達リノベるは、不動産会社や金融機関、設計事務所・工務店等とお客様との間に立ち、住まいづくりをワンストップでお手伝いしております。お客様と業者との間に弊社が介入することで、お客様の不安や負担を軽減し、手軽にリノベーションすることが可能な仕組みを提供しております。
2つ目は、法人向けの事業である「都市創造事業」です。オフィスビルや1棟マンションなどの保有不動産の利活用を行っております。
近年、企業にとってCRE戦略は取り組むべき大きなテーマです。社宅などの有効活用もご相談が増えております。そもそも社宅は、アクセスや住環境が良好なエリアに建てられているケースが多いので、例えば賃貸レジデンスに用途変更する方法もあり、一括してリノベーションを施すことで、収益が生まれる可能性があります。
しかし、事業計画から、スケジュール、予算の管理、竣工後の運営など、多くの工数が必要なのですが、一気通貫で相談できる会社は多くないのが実情です。私たちの強みはその一気通貫を実現できることです。
ビルオーナー企業は、リノベるを窓口にやり取りをする中で、自社保有の不動産に新たな価値が乗る、リノベーションを推し進めることが可能となります。
3つ目は、オープンプラットフォーム事業です。オープンプラットフォーム事業とは、リノベーションに関わるさまざまな企業・チーム・個人をサポートするものです。例えば、「ARリノベ」というサービスを2020年にスタートいたしました。
こちらは、AR(拡張現実)のコンテンツを開発する会社と協業して開発したサービスなのですが、中古マンションを買取り、リノベーション後に再販する事業者(買取再販事業者)と、リノベーション済みマンションの分かりやすさにプラスして自分らしさも求めるお客様とをつなぎ合わせるものです。
お客様の中には「丸ごとリノベーションするのは大変そう」「面倒くさい」「そこまでこだわらなくてもよい」という方もいらっしゃいます。
そのために、買取再販事業者と弊社で該当物件を探し、8割程度の仕上がりに抑えた状態でお客様に内覧していただきます。例えば、壁紙やキッチンなど、いくつかの部分を敢えて施工せずに、AR(拡張現実)の技術を駆使してご案内いたします。住まいの購入を検討するお客様ご自身がiPadを利用して、部屋全体の雰囲気と自分が設置したい壁紙やキッチンをその場で再現することで、お客様側でお決めいただけるようにしています。
・ARリノベ 参考画像
いろいろな選択肢の中からお客様に決めていただけるので、不動産会社からすると、既に出来上がっている不動産を販売するよりも、商品開発の時間の削減や差別化ポイントとして活用することが可能です。
--貴社の独自性や一番の強みについてお伺いできますでしょうか。
弊社には、他社に負けない強みが3つあると考えております。
1つ目は、徹底してオーダーリノベーションにこだわり10年超、専業でやってきたことです。リノベーションは、数多くのプロセスを経て完成します。お客様へのカウンセリング、設計、施工、アフターフォローなど、大変工数も多く、またそれぞれの中古マンションによって施工条件や特徴も違うため、様々な知識が必要です。1つ1つの工程で実績とノウハウを積み上げてきたことで、多くのお客様のサポートをできる体制がつくり上げられています。
とはいえ、10年間、真っ直ぐにリノベーションだけに向き合ってきた私たちでも、まだまだ課題がある、本当に奥の深い世界だなと感じています。
2つ目は、積み上げたノウハウを、テクノロジー化していることです。これまで培ってきたことを、誰かの頭の中だけに留めておくべきではありません。暗黙知を形式知に変え、テクノロジーの力を加えることで、より使いやすいものにしています。また、そうすることで新しく私たちの会社に入社し、リノベーション業界でチャレンジしようとするメンバーや、リノベーション事業に参入していこうとする事業者の方々でも、スピード感を持ってお客様のサポートができるようになると考えています。
3つ目は、不動産会社や設計事務所、工務店といった事業を営む方々が私たちのパートナーネットワークに参画いただいていることです。私たちのモデルは、リノベるのミッションに共感したパートナー企業がいて成立するものです。現時点でも300社を超える企業に参画頂いていることが、私たちの大きな強みになっています。
--ユーザー様からの反響や、嬉しかったお声などを伺えますでしょうか?
リノベるでリノベーションされた方のお部屋をご覧になった方が、そのマンションの別の部屋を購入+リノベーションされて、結果的に十数組もリノベるユーザーがお住まいのマンションがあったりします。この方のように、お客様たちと共に新たにリノベーションを楽しむ方々を増やしていけるのは、とても嬉しいことだなと思っています。
実際、お客様から「以前の家と比べ、暮らしの幅が広がった」というお言葉をたくさんいただきます。非常にありがたいことです。常にお客様の暮らしを豊かにするために知恵を絞り、一緒に汗をかき続けてきたからこそ、このような喜びの声を頂戴しているのだと思い、ありがたく思うと同時に身の引き締まる思いがいたします。
また、私自身も「リノベる。」で自宅をリノベーションしており、日々の暮らしの中で仕事に対して愛着が増すのを感じています。ミッションである「日本の暮らしを、世界で一番、かしこく素敵に。」を実現するため、ユーザー目線で様々なアイデアを出し、サービスに反映させているところです。
働きがいの追究、プラットフォーム全体が成長できる状態を目指す
--今後の中長期的な事業展望についてお伺いできますか。
1人でも多くのお客様に、リノベーションを通じて「自分らしい暮らし」を実現いただき、価値を提供していきたいと考えております。目標は年間1万件のかしこく素敵な暮らしを生み出すことです。簡単にはいきませんが、パートナー企業を含めた関わる人たちと共に力を結集して実現していきます。
また弊社は企業理念として「産業への約束」を掲げています。ここからの10年、日本では中古住宅流通比率が現在の25%程度から50%近くまで高まると言われています。中古文化にシフトしていく、文化が大きく変わろうとする時に、私たち1社の力では到底太刀打ちできません。産業に関わる事業者の方々と、協力しながら何としても日本の住文化を変えていきたい。そのために必要なツールやノウハウを生み出し、他社へ提供していきながら、共に成長していきたいと考えています。
--経営の中で大事にしていることは何かありますか?
「働きがい」を大切にしています。働きがいとは「働く意味があるかどうか」であると考えております。本人が、そこに意味を見いだせているか?という視点です。経営者としてそう考えるからには、私は社員に対し、働くことの意味について明示する義務があると思っております。
--社員の方を想った経営をされているのですね。具体的な施策として行っていることはありますか?
1つ目は企業からのアプローチという意味合いが強いものですが、全社イベントの実施です。四半期に一度全社員を集めてのイベントを行っており、この中で毎回必ず「ミッション」「ビジョン」「バリュー」に触れるコンテンツを準備しています。その内容をどのように理解したのかをその後レポートにしてもらうところまでがセットです。
もう一つは、教育的アプローチからのバリュー(価値)研修の実施です。リノベるのメンバーとして日々実践すべき内容をまとめた「バリュー」があるのですが、その内容に関する理解を深めるために、世界的なベストセラーである『7つの習慣』のビジネスパーソン向け研修コンテンツとミックスした、オリジナルの研修を行っています。
その他にも、「企業理念」や「ビジョン」をクリアな言葉で繰り返し語り理解を促進したり、社員一人ひとりと対話を重ねながら、自分の仕事観について考えてもらい、時に励まし、フォローしながら、「目の前の仕事に意味を見出す力」を身に着けるよう促しています。
--最後にProfessional Onlineを見ていただいている経営者、決裁者の方に向けてメッセージをいただけますか?
業界の中でもファンが圧倒的に多い「ロイヤルティ・リーダー」と言われるような企業になっていくには、一朝一夕ではない、長い期間における日々の積み上げが重要だと感じています。
同様に、組織づくりや人材育成、自社商品の磨き込みも、日々の積み上げ・改善によって気づいたら、誰も真似できないほどの強みを持ったものに変化するものだと信じています。
私たちは、この業界において、関わる方々から愛される真のリーダー企業になっていくために、未来を信じる「強さ」と、日々の中で見えてくる課題に柔軟に向き合う「しなやかさ」を持って成長していきます。
私たちのパートナーとして「日本の暮らしを、世界で一番、かしこく素敵に。」を推進して頂ける不動産、金融、建築業界の皆様、是非弊社にお声がけくださいませ。
--本日はどうもありがとうございました。
リノべる株式会社
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