袖を通すと成功できるという「ヴィクトリースーツ」で売上を伸ばす

袖を通すと成功できるという「ヴィクトリースーツ」で売上を伸ばす

株式会社muse 代表取締役 友美

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2022.03.15

勝 友美(かつ・ともみ)

株式会社muse 代表取締役

 

兵庫県宝塚市出身。短期大学卒業後、20歳でアパレルの販売員となり、初日にトップセールスを記録。その後、スタイリストとして海外の新規事業の立ち上げに携わった後、縫製業界へ転職し、世界最高峰の採寸技術を取得する。2013年に自社ブランド「muse style lab」を設立。2017年ブランド名を「Re.muse(レ・ミューズ)」に改名。2018年を皮切りに業界では日本初となるミラノコレクションへの出場を3度果たしている。日本初の女性テーラーであり、女性起業家として業界の枠を越え多くのメディアに取り上げられている。自身の経験を基に、YouTubeやオンラインサロンなどを通じ、夢を実現する人に向けた配信も精力的に行う。
 

3/17に著書「人は自分に嘘をつく」を出版予定。

 

先行予約受付中

https://www.amazon.co.jp/dp/4046056908
 


 働き方の多様化で「スーツ離れ」が進み、コロナ禍による在宅勤務の増加でスーツ市場に逆風が吹いています。その中でも小規模ながら利益をあげるオーダーサービスが増えてきました。東京と大阪で3店舗を展開する「Re.muse」もその1つです。作るスーツは1着20万円以上。それでも顧客に「ヴィクトリースーツ」と呼ばれ、評判を聞いた新規客やリピーターのオーダーが絶えません。その秘訣はどこにあるのでしょうか。「Re.muse」を展開する株式会社muse代表取締役の勝様にお話をお伺いしました。


 

オーダーメイドスーツ業界にイノベーションを起こすべく起業


 

--本日はよろしくお願いします。早速ですが、勝さんが起業されるまでの経歴についてお聞かせください。
 

短大を卒業して、大好きなアパレルの世界に迷わず飛び込みました。入社してすぐにトップセールスとなり、飛ぶように服が売れて毎日がとても楽しかったですね。給料は少なかったのですが、20代前半で、お金では買えないやりがいや、好きなことで仕事をする楽しさを知れたのは良い経験でした。
 

その後、ヘッドハンティングを受けて、中国最大級のECサイトの立ち上げに加わり、スタイリストとしてサイト全体のコーディネートや、海外のバイヤーに日本のファッションを紹介する仕事に就きました。BtoCではなくBtoBの仕事を通して、ビジネスの基本を学んだのがこの時期です。
 

その頃、父が他界したことがきっかけで、大好きなファッションにも興味を失って、一度はこの業界から離れようと思ったのです。ですが、離れたことにより、ファッションが単に好きなだけでなく、自分が生きるために必要なものだと気づきました。そこで次にどのようにファッションと関わろうかと考えたときに、出会ったのがオーダーメイドの世界だったのです。
 

オーダーメイドでは、目の前で接しているお客様の表情や人生が変わる瞬間に立ち会うことができ、それが魅力でした。ただ、オーダーメイドの業界自体が縮小していた頃でしたので、勤めたお店もいかにお客様を早く帰して回転率を上げるか、1000円でもコストを抑えるにはどうするかといったことばかりやっていました。
 

ですが、そうしていては既製服と何も変わりませんよね。オーダーメイドの本質は、お客様と向き合い、1着1着時間と手間をかけて作ることです。当時のオーダーメイド業界は、その本質を忘れてしまい、お客様がさらに離れていく負のスパイラルに陥っていたのです。
 

また、女性のお客様も少なかったですね。そもそもレディースのオーダーメイドスーツを作れる人がいませんでした。なぜなら、オーダーメイドでは採寸の際、胸やお尻も触ることになりますが、男性のテーラーしかいないためにそれが出来なかったのです。
 

女性の体は加齢によるバストトップの位置の変化や、出産で骨盤が開くなど、同じ人でもサイズが常に変化するのですが、業界には男性ばかりで理解できる人がいない。それなら私が、女性のオーダーメイドスーツの世界にイノベーションを起こすしかないと思い、起業したのです。


 

顧客に自信を与えて評判を呼んだ「ヴィクトリースーツ」


 

--現在は、メンズ・レディースのオーダーメイドスーツの販売を中心に事業展開されていると思いますが、改めてご説明をお願い致します。
 

東京の六本木と銀座、大阪の淀屋橋の3店舗でオーダーメイドスーツ専門店「Re.muse」を運営しています。2013年に創業してから、3000着以上のオーダーメイドスーツを仕立ててきました。オーダーメイドスーツにも、イージーオーダーからフルオーダーまでがありますが、弊社はフルオーダーに近いもので、普通なら100工程ほどでつくるものを、400工程の大半をハンドメイドで仕上げるスタイルです。


 

--どういったところにこだわってスーツを作っているのでしょうか。
 

多くのテーラーが海外に縫製を依頼する中、弊社では100%国内で縫製をして日本の高度な技術でスーツを作っています。採寸にも独自のこだわりがあって、あらゆる体形に対応できる細やかな設計図作りを行っています。また、ファブリックは常に7000種類以上を用意していて、袖を通していただくお客様の未来が輝くようなオーダーメイドスーツをお届けしています。とくに女性向けのスーツが好評をいただいていて、大手でも10%ほどしかないレディーススーツのシェアは40%を超えています。

 

--「Re.muse」のスーツは、「ヴィクトリースーツ」と呼ばれているそうですが、その名の由来についてお聞かせください。
 

「ヴィクトリースーツ」は、私たちが名付けたものではありません。「Re.muse」のスーツを着て自信をつけたお客様が仕事で成功するケースが多いことから、そう呼ばれるようになりました。スーツを作るときには、丁寧なヒアリングを行うのですが、オーダーでお客様が語られた想いがスーツに宿り、袖を通すたびに、自らを奮い立たせる原動力となります。

 

実際に弊社がスーツを通して提供しているのは「自信」です。ですから、消費ではなく自分への投資としてご注文されるお客様が大半です。既製品と違ってオーダースーツは衝動買いでなく、目的を持って注文するものではないでしょうか。だからこそ私たちは、その目的をお客様と作り手が、互いに共有することが重要だと考えています。
 

確かに、早い安いの価値観が重視される時代背景の中では、非合理なスタイルかもしれません。ですが、お客様の夢や目標、生き方をも表現するスーツこそ「Re.muse」が世の中に提示できる価値です。そのためにも、とことん人と向き合った仕事を続けたいと思っています。


 

--人と向き合う貴社だからこそついた呼び名だったのですね。貴社の独自性や強みについてお伺いできますでしょうか。
 

値段とか競合とかは関係なくて、提供しているものが、単なるオーダーメイドスーツではなく、ヴィクトリースーツというブランドの価値だということ。それが弊社の強みだと思います。

 

お客様は20〜60代まで幅広くいらっしゃいますが、20代で30万円のスーツを買うことは難しいかもしれません。ですが、未来への希望を持っている人がスーツを選ぶ際に重要なことは、値段ではなく、夢を叶えようとする前向きな気持ちになれるかどうかだと思います。

 

ただ単に高いだけのスーツは、お金を持っている人にしか売れません。弊社の場合、未来への希望を持つ方が顧客になっていただけるので、ターゲットも変わってくるのです。


 

ヴィジョンは「100年先まで愛されるブランド創り」


 

--今後の中長期的な事業展望についてお伺いできますか

 

まずはフィッターを育てることが急務ですね。フィッターは、採寸やヒアリング、生地選びや補正などを行うプロフェッショナルですが、弊社の場合はテクニカルな部分だけでなく、お客様に自信を与えることができるフィッターでなければなりません。そうしたフィッターを育てていきたいですね。

 

また、営業マンなしでここまでやってきましたが、今後は、BtoBでロット営業していく体制を整えることも大切だと考えています。さらに、ミッションである「人を自信に包む」に基づいた商品を開発し、オンライン販売にも力を入れていきたいと思っています。もう、やりたいことが山積みです。


 

--「Re.muse」というブランドを今後、どのように育てていかれますか。
 

ディズニーランドやリッツカールトンのようなブランドにしたいです。これらのブランドは、利用したことがない人にもその価値が知られています。それがブランド価値だと考えていますので、まだオーダーしたことがない世界中の人々に、日本には「Re.muse」というブランドがあると認知させたいですね。
 

弊社のミッションは「100年先も愛されるブランド創り」です。シャネルがそうであるように、本物のブランドは、創業者が死んでも価値を生み続けることができます。私も、自分がこの世から消えても生まれ続ける価値を創出していきたいですね。


 

--最後にProfessional Onlineを見ていただいている読者の方に向けてメッセージをいただけますか?
 

これからは大企業に勤めていたとしても、個人の力がとても大切になってくる時代だと思います。さまざまな仕事が、AIにとって代わられる時代ですが、機械は10のことなら10しかできません。ですが人は10を100にもできます。それをできる人にならないと必要とされなくなってしまいます。
 

そのためにも自分が人生で何を大切にしたいか、夢や目標を持っていただきたいです。登りたい山が決まれば、ぶれることはなくなります。夢や志を見つけることを、いくつになっても諦めないでほしいと思います。


 

--本日はどうもありがとうございました。

 

株式会社muse

https://re-muse.jp/

 

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