木下 謙一(きのした・けんいち)
株式会社ラナユナイテッド 代表取締役CEO
1969年生まれ。1992年武蔵野美術大学造形学部 基礎デザイン学科を卒業後、 CG、インダストリアルデザインのプロダクションを経て、1997年ラナデザインアソシエイツを設立。 90年代半ばのインターネット黎明期よりWebデザインを手掛ける。現在では資生堂や大手出版社のデジタル戦略を担当するほか、インスタレーションやテレビ番組用のデータビジュアライゼーション、松任谷由実のCDジャケット、マーチャンダイズなどを手掛け、デジタル領域にとどまらないトータルなクリエイティブディレクションを強みとする。グッドデザイン賞など国内外で受賞多数。
今や生活から切り離せない身近な存在であるインターネット。インターネット黎明期といわれる1990年代から先駆けてデザインを融合させ、現在のデジタル化やIT社会に貢献してきたのがRANA UNITEDグループの木下謙一代表取締役です。常に新たな分野の開拓者としてあり続ける木下様にお話を伺いました。
インターネットの可能性を直感で見出し、会社を設立
--本日はよろしくお願いします。早速ですが、木下さんが起業されたきっかけをお聞かせください。
自動車のデザイナーを目指して武蔵野美術大学に入学し、基礎デザイン学科でデザイン全般を学びました。在学中にコンピューターと出会ったことがきっかけで、複雑な三次元をデザインするにはコンピューターを使えばいいのではとひらめきました。1990年代前半は自動車メーカーのデザイナーも昔ながらの手法でデザインをしている状況だったので、私は先にCGを学ぼうと考えたのです。
1992年に大学を卒業し、本格的にCGを学ぶため株式会社NHKアートに入社し、約2年間、放送用のCG制作に携わっていました。NHKアート退職後は、自動車のデザインをCGで手掛ける会社に転職。そこではデザインだけでなく、自動車デザインにCGを活用するワークフローのコンサルティングも経験することができました。
また、1994年頃から電話線を使って家庭にインターネットを導入することが可能になり、インターネットがさらに身近になっていきました。私自身にとっても大人になってからインターネットに出会ったことは大きな衝撃でした。
それと同時に、インターネットを使えばあらゆる問題が解消できるのではと感じ、仕事にしようと決意したのです。当時インターネットは理系の人が使うものというイメージが強くありましたが、デザインなら自分のキャリアをインターネットで活かせると考えたのです。
その後、1996年に退職し、まずはフリーランスとして活動をスタートしました。当時Webデザインという言葉はなく、ジャンルとして確立していなかったので、仕事になるのか確信はありませんでした。ただ、Yahoo Japanや楽天が誕生し、インターネットの黎明期でもあったためチャンスを感じていました。手探りで仕事を探し、法人化に向けて資金を貯め、1999年にラナデザインアソシエイツを設立。2021年で23期目になります。
--会社の経営でこだわりや大事にしていることは何でしょうか。
最も大事にしていることは、なるべく先人がいない分野をやることです。仕事を始めた1996年には今行っている事業は存在しませんでした。すでに存在する分野での仕事はルーティン化してしまいがちですが、まだ開拓されていない分野に挑戦することで、仕事はクリエイティブになります。
また、働き方を柔軟にすることも大切にしています。弊社では副業を認めていたり、コロナ禍以降はリモートにシフトしていたりします。弊社の事業の中核は「人」です。実力があるスタッフに長く会社と関わってほしいですし、RANA UNITEDで働いて良かったと数十年後にも思ってもらいたいです。スタッフには可能な限り、仕事や会社を通して幸せになってほしいと考えていますので、社風は自由でありたいですね。
分野に特化したスペシャリスト集団でいること
--現在展開されている事業について、あらためてご説明をお願いします。
弊社の主な事業は6つです。
・Digital Branding
・Communication Design
・Movie / Motion Graphics
・Data-Driven Design
・Digital Design and Fabrication
・Web Media
それぞれの事業で分社化したり、チームをつくったりすることで、各分野のスペシャリストとして事業を行っています。デジタルクリエイティブは20年の間に速いスピードで進歩してきました。新しいジャンルが次々に誕生してきましたし、今後もジャンルは増え続けていくと予想しています。これらの急激な流れに組織として対応するため、細分化することで機動力を高めています。
創業当初からWebサイトの企画や制作、運営がメインの事業です。時代とともに高度な技術が可能になり、進化に対応しながら制作を行っています。たとえばiPhoneが誕生してからスマートフォンの普及が拡大したため、スマートフォンに対応したWebサイトの制作やアプリのインターフェイスのデザインも手掛けるようになりました。
14年前に初めて分社化したのはSNSが流行した頃でした。一般のネットユーザーが増え、WebサイトをつくらなくてもSNSでキャンペーンをすることができるようになり、キャンペーンに特化したグループ会社を設立したのです。
その他にも、インターネット上で映像を見ることが当たり前になる前から、インターネットで使用するための映像を制作するチームや、データビジュアライゼーションを専門に請け負うチームをつくりました。また、スタッフのリクエストで分社化することもあります。今後も時代に先駆けて、各分野に特化したチームづくりや分社化を行っていくことで、弊社が先人として業界を牽引していきたいと考えています。
--貴社の独自性や強みについてお伺いできますでしょうか。
創業者の私もデザインに携わっていますので、デザインに関するアイディア力やクオリティは高いと自負しています。20年以上会社を経営してきましたが、競合は急激に増えています。それでも依頼を多数いただくのは、弊社のデザイン力の高さの現れだと考えています。
また、企業がWebサイトをつくる目的が、ブランドの構築や維持をする方向に変化してきました。弊社は、ユーザーが目にする部分のデザインやコンテンツに特徴を持たせることでブランディングの分野を得意としていますし、クライアント様にも好評価をいただいています。
さらに、ブラウザの枠の中のデザインに留まらず、多方面へアウトプットしていることも弊社の独自性です。たとえば、クライアントのプロモーションやブランディングでは、ロゴマークの制作、紙媒体の広告制作、ネット上のデザインなどトータルでデザインを手掛けることが可能です。そのため、一貫性があるクリエーションや訴求力を持つキャンペーンを行うことができます。
他には、クライアントの悩みを一緒に見つけていくことも弊社の独自性です。デザインの仕事は受託のため、どうしてもクライアントからの依頼に受け身になってしまいがちです。しかし、依頼の本質には業務上の課題が隠れていることがあります。その課題を解決するために弊社のチームとクライアントでワークショップを行い、課題の抽出を行う場合もあるのです。人や会社には言語化されず、自身でも認識していない課題や深層心理があります。それらを引き出して言語化し、デザインに反映させて課題解決を行っています。
変化の激しい分野こそ、独自性と美しさを持って挑戦する
--今後の中長期的な事業展望についてお伺いできますか。
今後も様々なメディアやデバイスに対応していきたいです。20年以上会社を経営してきましたが、ITやデジタル分野はまだまだ発展途上だと思っています。インターネットが誕生してまだ30年ほどですし、消費者に普及したのは最近のこと。人類にとって新しい分野なので、次は何が来るのかと楽しみにしています。会社を設立してから激しい変化に対応してきたので、今後もどんなものにも使いやすく、美しいコンテンツを制作していきたいです。
また、デザインの仕事はクライアントからの依頼があって仕事が成り立ちますが、弊社から直接クライアントに訴求できるサービスの柱をつくっていくことも考えています。最近ではオフィスに特化したサイネージを始めました。弊社の強みや独自性を活かし、お客さまにアプローチをしていきたいですね。
--デザイン業界全体に対する展望を教えてください。
現在のデザイン業界を見ていると、急速にデジタル化が進んだ分、利益が縮小しているように感じています。この現状から、特定の分野だけに固執してはいけないと考えています。デザイン業界にはデジタルの分野とアナログの分野がありますが、私はどちらも経験してきました。そのため両方の分野にアプローチすることが可能ですし、未開拓の分野を広げていくこともできます。デザインするものの本質を理解することで、新たな価値を提供していきたいです。
また、ITやシステムの分野はますますデザインを重視していくと考えています。たとえば、Apple社の製品は世界的に人気ですが、その理由はデザインを徹底的にこだわったからです。世界中に愛される製品をつくるなら、デザインにこだわることが重要ですし、弊社でもデザインを重要視していきたいと考えています。
--最後にProfessional Onlineを見ていただいている経営者、決裁者の方に向けてメッセージをいただけますか?
これからの時代はどんな業界でもデザインが大事だと言われています。デザイン経営という言葉を最近よく耳にするが一体何なのか、自身の会社にどう関係があるのかわからないという企業様は、ぜひお問い合わせください。たとえば新たな分野へ挑戦したいが、何を商品としたら良いのかお悩みの場合もサポートが可能です。
弊社にはカスタマーへ商品を届けるまでのプロセスを一貫してお任せいただくことができます。強力なコンテンツを生み出すべく、全力でサポートいたします。
--本日はどうもありがとうございました。
RANA UNITED
Professional Onlineでは無料で経営者インタビューに掲載いただける方を募集しています。
お問い合わせフォームよりご連絡ください。
プロフィール
木下 謙一
会社情報

決裁者アポ獲得支援サービス「アポレル」に登録すると、日替わりでレコメンドされる著名な経営者と出会うことができます