田島 大(たじま・だい)
株式会社ペイクス代表取締役
2004年に携帯電話販売代理店として法人を設立し、2期目で約2億円の売上を達成。2011年に同法人をバイアウト。2012年、建築業界のベンチャー企業にWebマーケティングの責任者として参画し、2020年まで人事・採用の責任者も兼任。2021年に株式会社ペイクスを設立。Webマーケティングや採用業務に長年携わり、その経験を活かした企業ブランディングを行う。企業の差別化や認知向上に努め、売上や採用課題の解決を支援している。
株式会社ペイクスは「ブランディング×採用」の事業を手がけるスタートアップ企業で、2021年1月に設立し、同年7月に採用広報支援サービス『Fanca(ファンカ)』をリリースしています。「多くの企業は採用活動において印象の良い情報だけを発信することに注力してしまい、入社前後のギャップで早期離職に繋がってしまうなどの課題に直面しています。企業の”ありのまま”の姿を届けることが中長期的な経営には重要なんです」と語る、代表取締役の田島様にブランディングや採用支援事業についてのお話をお伺いしました。
ブランディングにより採用課題を解決。経験を活かし起業へ
--本日はよろしくお願いします。早速ですが、田島さんが起業されたきっかけをお聞かせください。
広報活動や採用、人事の経験を通じて社外に向けた情報発信と、実際の社内の雰囲気のギャップが大きい、という課題に気づいたのがきっかけです。
それまでの経歴としては、24歳の時に携帯電話販売代理店を起業して2期目で2億ほどの売り上げを出しました。しかし、社会情勢が大きく変動し、携帯電話の販売価格が変わったことで会社は売却することとなったのです。
その後、インターネットの普及に伴い、Webに関する知識が重要になると感じ、独学でWebマーケティングやWeb集客などの勉強をしていました。
ちょうどそのタイミングで中学校の同級生から、Webに関する仕事の相談を受けていたこともあり、Webマーケティングの責任者として参画しました。
その同級生が経営する建築会社でWeb事業部を立ち上げ、Webサイト制作などをしていたのですが、過去に採用活動を経験していたこともあり、人事・採用・経営企画の責任者も兼任で行うことになりました。
--多方面にわたってご活躍されていたのですね。そこからどのようにして株式会社ペイクスの設立に至るのでしょうか。
当時の建築業界は「きつい・危険・汚い」を略した3Kというマイナスイメージがあり、そのイメージを払拭するためにコーポレートサイト等をリニューアルしたり、代表のブランディングに注力したりと、広報活動を始めました。すると活動を始める前に比べて10倍ものエントリーが来るようになったのです。
しかし、採用をしても早期離職が後を立たず、その原因として採用活動で発信する情報と、実際の社内の雰囲気にギャップがあることに気づき、真のブランディングの重要性を改めて実感しました。
一般的にブランディングは外部への発信を指すことが多いのですが、その出来事をきっかけにインナーブランディング、いわゆる社内のブランディングがさらに重要なのではないかと考えるようになりました。そこで、働き方や福利厚生の改善・社内SNSを利用した帰属意識の向上に取り組んだところ、早期離職を大幅に減少させることができました。
広報活動はビジネスにも役立ち、広報を通じて外部からWeb制作やWeb集客のお仕事を頼んでいただけるようになり、それと同時に経営者の方と話す機会も増えていきました。そこで経営者の方の悩みや課題を聞くと、ほとんどの方が採用で困っているとおっしゃっていました。
例えば、「人が足りなくて事業を伸ばせない」、「採用しても定着しない」といった内容です。このような会社がたくさんあるのであれば、自分が長く培ってきた知識と経験で、社外向けと社内向けのブランディング、どちらに対しても真の価値を提案できる会社をつくろうと決意し、株式会社ペイクスを設立しました。
企業と求職者の悩みに応える「採用ブランディング」に注力
--現在取り組まれている事業内容に関してお伺いできますか。
当社は主にブランディングをしています。他社との違いは、クライアントの事業計画をスムーズに進めるための基盤づくりからブランディングを行っている点です。会社名やサービスの認知度向上、社会的地位を向上させることはもちろん、そこから売上や採用、事業拡大に繋がるようなブランディングを目標に、様々な施策をご提案しています。
例えば、認知度を向上させるためにはWebマーケティングの施策である、SEO対策や広告運用、それに付随したコーポレートサイトや採用サイトなどのWeb制作に取り組んでいます。
その他に、採用広報支援サービスを行っています。求職者は会社の事業や社内の雰囲気など”ありのまま”の情報を求めていますが、実際に”ありのまま”の情報発信をできている企業はそこまで多くないと感じています。
そのため、求職者が就職活動をする時に、「どの企業が自分に合うのかを見つけるのが難しい」と感じることは当然です。つまり、社内の雰囲気や様子など会社の内側の部分が見えてこないということです。
それを解決するために、文字や写真、動画を用いた採用広報のコンテンツを発信し、社内のことを見える化できれば、求職者も会社を選びやすくなるのではないかなと考えています。
具体的には社員インタビューや代表者の想い、会社の取り組みや雰囲気といったことを継続的に発信していきます。実際に、建築会社で月に4本以上のコンテンツを自社サイトにアップしていました。
すると、その内容を見た求職者がどのような会社なのか理解してくれた上でエントリーしてくれて、会社のことをまるで自分ごとのように語ってくれる候補者が多くいました。コンテンツをしっかりと発信したことで、本気で「御社で働きたいです!」と言ってくれる求職者が増えたのです。
--採用ブランディングというと、求職者側が知りたい情報と企業が配信したい情報はイコールではない場合もありますが、どのような工夫をされていますか。
求職者からの情報を吸い上げることはもちろん、当社のサービスを導入していただく際に、企業の代表者や役員クラス、一般社員の方々にもヒアリングを行います。多くの場合、経営層と一般社員の間では、会社に対するイメージのズレがあります。それは代表者や経営層の想いがうまく伝わっていないことが挙げられます。そういったズレを解消するためにも経営層の意識を社内に浸透させるためのコンテンツを企画からつくるようにしています。
取材を通じて一般社員が会社に対して感じていることを代表者や経営層に話し、折り合いをつけていくことでズレを少なくしていきます。
さらに、求職者から吸い上げた”求職者が求めている情報”も踏まえてお話します。社内の認識のズレを解消した上でコンテンツをつくることで、求職者にも響き、一般社員の会社に対する認識も変えられます。広報を通じて社内を整えていくことも意識していきます。
--内と外の両面からアプローチしていくということですね。
そうですね。採用広報コンテンツをつくっていると、社内のブランディングもできるようになります。その結果、会社全体で社内広報にも力を入れるようになります。
具体的にサービスの進め方をお伝えすると、企業の代表者はもちろん、役員クラス、一般社員など様々な方にインタビューを行います。そこで頂いた声をもとに企業が求めている求職者像を明確にし、コンテンツの企画をご提案します。企画の決定後、それに合わせたインタビュー、記事執筆、撮影、分析を一貫して行いコンテンツの作成、発信をしていきます。
さまざまな方とコミュニケーションを取りながら進めていくと、仲間の嬉しい気持ちや新しいを引き出すことができます。例えば「Aさんと話しているときにあなたのことを褒めていましたよ!」といったことや、「代表はA事業部が成長を感じていて嬉しいといっていましたよ!」といったように私たちを通して伝え合えることもあります。採用広報はコミュニケーションが活性化される効果もあると考えています。
--現在取り組まれている採用のブランディングやマーケティングにおいて、貴社の独自性や強みとしてはどういったところが挙げられますか?
私自身、顧問を務めている会社を含め、4社での採用責任者の経験があります。過去の実績としては一切の費用をかけず、新卒採用の応募を1年間で250人募った経験もあります。
広報活動・採用・人事を兼任していたこともあり、求職者が求めている情報をヒアリングしながら300件以上もの採用広報コンテンツ制作とディレクションを行ってきました。
さらに、どんな企画が求職者にささるのかというのを数値分析しています。そのため、企業の要望をもとに企画を考える際に、どのような効果が期待できるかを数値的にお伝えすることができます。
こうした経験から、生まれたのが採用広報支援サービス『Fanca(ファンカ)』というサービスです。”ファンをつくる採用広報”をコンセプトに、企業に”ファン”がつくようなコンテンツ制作をしています。
こちらのサービスでは、企画考案・インタビュー・記事執筆・撮影・投稿・分析まで一貫して行います。この採用広報サービス『Fanca』のディレクターを務めるのは学生視点をもつZ世代です。学生が求めている情報を拾い上げることに注力しているので、新卒採用の支援には自信があります。
--得意な業界や領域はございますか。
建築業界は得意だと自負しています。建築業界特有の社内の雰囲気と、世間からのイメージのどちらも把握していますが、実際のところ建築業界の社内の雰囲気を変えようとしている企業も多くいます。それをもっと多くの方に知っていただけたらなと思いますね。採用広報を通じて、社内の雰囲気をよくしていくことはもちろん、外見も良くして会社を大きくしていくことができるのではないかと思います。
採用広報によって日本全国の企業の”真の価値”を引き出していく
--今後の展望についてお伺いできますか。
日本全国の企業の採用・雇用創出などに携われたらと考えています。都内で働くことに憧れる人もいる一方で、地元や地方で暮らしながら働きたいと考える求職者もいるはずです。
しかし、情報が不足してることもあり、なかなか地元で就職先を見つけるのが難しいということも耳にしています。主要都市だけではなく、地方企業の情報発信や採用・雇用創出にも力を入れていきたいと考えています。
--今後の展望に向けて何か施策はしていますか。
今は”採用広報”がどういったものかを知ってもらうための資料を配布しています。そもそも”採用広報”という言葉はまだ浸透しておらず、知らない方も多いのでは、と感じています。そのため、いきなり採用広報を外部に依頼するという企業はあまり多くはありません。
そこで、業界問わず多くの方に”採用広報”とその重要性についてを知ってもらうため、SNSなどを通じて資料配布をしています。
--ありがとうございます。最後にProfessional Onlineを見ていただいている経営者、決裁者の方に向けてメッセージをいただけますか?
競合が多すぎる業界やニッチな業界はブランディングや採用が難しいということを聞いています。そういった業界で知名度を上げたり、差別化を図っていくための施策でお困りの方には積極的に支援していきたいですね。企業の本来持っている”真の価値”や”真の魅力”を最大限に引き出せるような施策を一緒に考えていきましょう。
また、業界問わず、各企業が事業を大きくしていくにあたり、採用活動が必ず行われると思います。その際に求めている人材がエントリーしてくれるような、採用しやすくなるような組織体制をつくりたいと考えている方は、お声がけていただければと思います。
”採用広報”はまだまだ理解しづらい部分もあるかと思います。サービスを導入しなくても、私自身や会社に興味を持っていただけたらSNSでもホームページからでもご連絡いただければと思います。
--本日はどうもありがとうございました。
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田島 大