菊地 和則(きくち・かずのり)
合同会社みるはあと 代表社員
小学校の教員として、障害がある児童への特別指導をおこなう特別支援教育に携わる。通級指導教室「ことばの教室」で言語指導を6年。養護学校に4年勤務し、その後15年間、難聴学級「きこえの教室」を担当。その後、小学校教頭6年、小学校校長7年、仙台市発達障害児等教育検討専門家チームの委員を通算4年勤め、定年退職後、「きくち子どもすくすく相談室」を開設。「合同法人みるはあと」を設立し、子育てコンサルタントとして活動中。「相談事業所たぬきさんち」も開設し、障害児向けの福祉サービスも提供中。
近年、不登校や発達障害などを抱えた子供たちは増加傾向にあり、それは愛着障害から生じていることが多いと思われます。大人の発達障害も広く知られるようになりましたが、具体的な対応の仕方については現場ではわからないことが多い現状です。そんな中、長期に渡って特別支援教育の現場で、様々な障害児童教育に向き合い続けてこられた合同会社みるはあと代表の菊地様にお話を伺いました。
このままでは日本は人材難に!子育てをサポートをするべく事業化へ
--本日はよろしくお願いいたします。菊地様のこれまでの経歴からご紹介をお願いします。
定年退職をして3年目になります。定年退職するまでは小学校で教員を務めており、1度も普通学級を担当せず、特別支援教育を担当してきました。
「ことばの教室」で言語指導を6年、その後養護学校で4年、難聴学級「きこえの教室」を15年、小学校教頭6年、小学校校長7年勤め、定年と同時に個人事業主として「こどもすくすく相談室」を開設し、その後、「合同法人みるはあと」を立ち上げました。「ことばの教室」は、普通の小学校の中にある塾のような役割で、子供が授業時間を抜け出して教室で言葉の勉強して、また学級に戻るという形です。
--ご定年されてから個人事業主として活動をしようと思ったきっかけをお伺いできますでしょうか?
現在は不登校や、発達障害の子供が多く、普通学級の先生たちではわからないことが、通級学級での指導経験でわかるところもあり、管理職になってからも配慮の必要なケースに対して通常学級の担任を支えながら、場合によっては最初から親子の相談や面談に入り対応してきました。
不登校の場合、子供を力づくで学校に連れてきて、「ちょっとでも慣れればいい」とか、「学校にいたらご褒美をあげよう」という対応が基本で、その子がなぜそういう状況になっているのか、子供の心にちゃんと着目し、理解した上でどうするかを話し合うこともなく、目に見えることだけで進めようとする考え方が、なかなか変わらない現状です。
実際、発達障害とされているケースの7割は、母子関係の愛着障害が関係しています。心を見ると言う視点から考えれば問題の本質がわかり、対応もできますが、その考えがないままだと教育は大変なことになるという危機感がありました。
このままでは将来労働力として仕事ができる人間がいなくなってしまうくらい深刻な状況にあります。そこで家庭で安心して子育てができるようにサポートする事業を始めました。現在、きくち子どもすくすく相談室の事業としては子育てコンサルタントとして幼稚園のスクールカウンセラーのような形で活動しています。
子育てや家族関係の悩み、学校との関わり方まで相談に応じたい
--現在子育てコンサルタントを中心に事業展開されていると思いますが、改めて内容をお伺いできますか?
現在、3つの事業を主軸として展開しています。
1.子育てコンサルタントとして、視線計測に基づいた具体的な子育て相談
ゲイズファインダー(かおTV)という機材で子供に映像を見せて、その視線の動きをモニター画面の下側に付いているカメラで計測します。発達障害や自閉症の傾向がある人たちは視線の向け方に特徴があるという基礎研究から開発されたもので、 大学で研究用として保有したり全国のごく一部の自治体で1歳6か月健診に活用したりしていますが、民間で使用しているのは当社だけです。 この機器を持って地方に行き、その場で検査をしながら話を聞くことで、より具体的に育て方の相談に乗ることができます。
2.子育てに関する悩みごとの相談やサポート
従業員やそのご家族の福利厚生として、子育てや家族関係の悩み、学校とのやりとりのサポートなどでご活用いただきたいと思っています。
3.障害児者向けの相談事業所たぬきさんちとして「サービス等利用計画の作成支援」
デイサービスや福祉サービスの利用、精神障害の方がグループホームに入る時に役所に提出する資料の作成をいたします。
--今後どういう形で認知を広げていきたいとお考えなのでしょうか?
一番は口コミで信用してもらって、人脈を広げていきたいですね。現在は紹介で少しずつ利用者が広がり、自治体の方にもご紹介ができるようになってきました。
いただいたお話を1つずつこなしながら、ノウハウを作っていきたいと思います。初回は無料で対応させていただき、実際にお役に立ち信用してもらいたいと考えています。
障害があっても特性を活かす仕事で立派な戦力となる。人材を育てるノウハウの提供
--今後の中長期的なところでの事業展望についてもお伺いできますでしょうか。
企業の方々には、従業員やそのご家族が学校とやりとりする場面や福利厚生でご利用いただけたらと思っております。 近年、発達障害の大人たちのことが知られるようになってきましたが、特性を活かした仕事につけることで、集中力や持続力があるので大きな戦力になります。当社では具体的に両方の話を聞きながら、うまく繋げられるように相談に乗りながらサポートしていきます。
教員時代に個人研究を進めてわかったことがあります。それは聴覚情報と視覚情報の違いによる影響です。聴覚障害の子供は耳が聞こえないので、どうしても目から入る情報だけに頼りがちになるんですね。そうすると頭の中の情報処理の仕組みが、どんどん退化してしまうように感じています。
音の情報は、入ってくる順番を正しく捉えて頭の中でつながります。ところが、目からの情報は順番とか方向がなく、自己中心的な物の見方になりがちです。今、みんなスマホに目が向いているのが、まさにそういう状況で、人間がもともと持っていた力、体や肌で感じることや、重要な感覚を使わず退化させているんですね。そこを気づかせて示していくことで、不登校問題を解決する糸口になります。
今の学校教育の1番の問題は、子供に失敗をさせないで、成功させることばかり考えているところです。今は何もしなくても与えられるので、昔のように刃物を使って道具を作るとか、自分たちで何か無いものを作って遊ぶとか、そういう体験がないまま、何でも簡単にできると思っていて、そこがすごく問題だと感じています。そういうことの必要性も訴えていきたいと思っています。
--最後にProfessional Onlineを見ていただいている経営者、決裁者の方に向けてメッセージをいただけますか?
今、学校教育や子育てにおいて、子供の心がなおざりにされて、形だけ整えている現状があります。今のまま放って置くと、日本は大変な人材難になります。社会全体で、立派な戦力となる人材を育てるというところで当社をご利用いただけたらと思います。
--本日はありがとうございました。
合同会社みるはあと
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菊地 和則
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