畠山 友史 (はたけやま・ともふみ)
株式会社ミライ菜園 代表取締役社長
埼玉県出身。筑波大学でロボット制御工学を専攻。2012年から大手電機メーカーにて7年間勤務。2019年5月に株式会社ミライ菜園を設立。初心者でも家庭菜園が楽しめる、AIを活用した病害虫診断アプリ「SCIBAI-サイバイ-」を開発。自身も家庭菜園が趣味。
コロナ禍で新たな趣味として家庭菜園を始めた方も多いのではないでしょうか。実は、家庭菜園を始めた人の8割ほどが失敗の経験があると言われています。簡単そうに見えても、初心者にとっては難しく、収穫できるようになるには知識も必要です。株式会社ミライ菜園が開発した病害虫診断アプリ「SCIBAI-サイバイ-」は、判断が難しい病害虫の診断を行い、誰もが楽しく家庭菜園をできるサービスを提供しています。「SCIBAI-サイバイ-」を通して持続可能な社会を目指す、代表取締役の畠山様にお話を伺いました。
家庭菜園というアナログな分野にAIをかけ合わせ、未来の菜園をつくる
--本日はよろしくお願いします。早速ですが、畠山さんが起業されたきっかけをお聞かせください。
筑波大学在学中はロボット制御工学を専攻していました。2012年に大学を卒業後、大手電機メーカーに入社し、上下水道のシステム設計や営業に携わりました。
同じく2012年に、AIの技術が飛躍的に伸びたと感じる出来事がありました。大学在学時は、まだAIは正確性に欠け使いにくい印象を持っていましたので、大きな衝撃を受けたのを覚えています。そして、AIを活用したサービスで独立をしたいと考えるきっかけにもなりました。
私は仕事の合間に家庭菜園をすることが趣味で、季節ごとの野菜が育ち、ベランダが緑いっぱいになることが楽しみであり、癒しでした。ところが、家庭菜園をやっていると病害虫に悩まされる場面が多いのです。病害虫についてインターネットで調べてみても、情報がなかなかありませんでした。
葉についている斑点の原因が病害虫なのか、病気で弱っているのか素人では判断できません。また、原因によって使える農薬が異なるように、対処法が変わってしまうのです。私もたびたびこのような経験をしてきましたし、家庭菜園を始めた人の8割は収穫ができなかったり、枯れてしまったり失敗に終わってしまうことがあります。
そこで、病害虫の診断をするAIがあれば、趣味で家庭菜園をやっている一般の方にとても役立つのではと考えました。初心者でも家庭菜園を楽しめるサービスをつくるため、会社を退職し、2019年5月に株式会社ミライ菜園を設立したのです。
社名の由来は、未来の菜園に欠かせないサービスを目指したいという想いから「より未来的な菜園を」という意味を持たせ、ひと目でイメージができる社名にしました。
病害虫診断だけでなく、SNSで楽しさを最大化する
--現在の事業内容を改めてご説明お願いいたします。
AIを活用した病害虫診断アプリ「SCIBAI-サイバイ-」を開発、運営しています。作物が病気にかかっている可能性があるが、原因がわからないというときに、スマホで写真を撮るだけでAIが診断してくれるアプリです。
前述の通り、家庭菜園をしている人の8割は、収穫できなかったり、枯れてしまったりといった失敗を経験しています。さらにその半分の人は、病害虫が原因で失敗したというデータもあります。病害虫だけでなく、初心者の方は水やりや肥料の与えすぎで枯らしてしまうことも。初心者でも野菜栽培の失敗をなくし、収穫できるようにするのがアプリの目的です。
このアプリの特徴は、スマホで写真を撮るだけで瞬時に病害虫の診断ができることです。たとえば、うどんこ病であれば病気の概要や発生しやすい時期、対策方法など、一気に情報を提示します。さらに、病害虫だけではなく、肥料の与えすぎ、少なすぎまで診断できるため、初心者で経験や知識が乏しい方のサポート役になります。
現在、家庭菜園で特に人気のある11品種に対応しており、133種類の病害虫を瞬時に自動で診断することが可能です。
また、このアプリには栽培SNSという機能があり、ベテランの家庭菜園の方やプロ農家さんと交流することができます。栽培日記をつけたり、収穫した野菜を使ったレシピを投稿したりすることも可能ですし、困っていることや栽培の悩みをベテランの方に質問できる機能もあり、ユーザー様から高評価をいただいています。
2020年2月からの実績を紹介すると、総ダウンロード数は21,000件を達成しました。また、月間アクティブユーザーは5,000ユーザーを超え、1日の平均滞在時間が35分と長いのも特徴です。コミュニティの中で質問を投げかけると、誰かしらすぐに答えてくれることが多く、ユーザー様同士で交流し、楽しくアプリを活用していただいています。
--貴社の独自性や強みについてお伺いできますでしょうか。
「SCIBAI-サイバイ-」の独自性は、一般の家庭菜園を楽しむ方をターゲットにしていることです。病害虫診断をAIで行う企業はいくつかありますが、ほとんどが農家向けです。また、AI診断の機能だけ搭載しているものも多くありますが、「SCIBAI-サイバイ-」はSNS機能もあるため、AIで解決できないことをユーザー同士で解決することが可能です。アプリ1つあればすべて解決するというのは、弊社の独自性であり強みだと自負しています。
「SCIBAI-サイバイ-」にSNS機能をつけた理由は、家庭菜園という同じ趣味を持った人同士、繋がりも持つことで楽しみを最大化できると考えたからです。ただ病害虫診断をするだけでなく、「SCIBAI-サイバイ-」を通して家庭菜園を楽しんでいただきたいという想いがあります。
ユーザー様が増えてからは、アプリ上だけではなく実際に会って、苗の交換をしたり種を送り合ったりすることも増えてきました。SNSからリアルな繋がりができていくのを見ると嬉しいですし、家庭菜園を楽しむ人の輪が広がっていると実感しています。また、SNS上で「ミライ菜園さんへ」という投稿をしているユーザー様もいらっしゃいます。投稿の内容は改善を求める声だけでなく感謝の声もありました。ユーザー様との距離が近い事業なので、やりがいを感じますね。
海外進出を目指し、たくさんの人に家庭菜園の楽しさを届ける
--「SCIBAI-サイバイ-」を通じて目指す社会を教えてください。
弊社は「もっと自然と寄り添う」をビジョンにし、家庭菜園を推進しています。自分が食べる分の野菜は自分で作る、という社会にしていきたいですね。その理由は、家庭菜園でCO2を減らすことができるからです。まず、家庭から出る生ごみは可燃ごみ全体の約4割を占めます。生ごみを堆肥化することで可燃ごみも減り、焼却処分の際のCO2を減らすことが可能です。また、野菜をスーパーで購入するよりも、自宅で野菜を収穫すれば、野菜の輸送で発生するCO2が減ります。自宅のベランダや借りた畑など、自分の周辺で野菜を作ればフードサプライチェーンを小さくしていくことができるのです。将来的に「SCIBAI-サイバイ-」で食料生産に変革を起こしたいと考えています。
--今後の中長期的な事業展望についてお伺いできますか。
はい、現在は2022年の春を目標に、海外進出を目指して準備を進めています。コロナ禍によって、フランスでは家庭菜園市場が1.6倍になったと聞いています。市場が拡大したということは、大量の家庭菜園初心者が現れたということ。「SCIBAI-サイバイ-」は初心者にとって大変役に立つアプリです。海外進出をすることで、もっと大勢の人に使ってもらいたいですね。3年後には30万ダウンロード、5年後には100万ダウンロードを目指しています。
また、将来的には病害虫予測もアプリでできるようにしたいと考えています。いつ、どこでどのような病気が発生しやすいのかという予測も、アプリを使用する人が増えればデータも集まりやすくなり、AIの精度が高まります。病害虫予測によって、一般の方だけでなく、農業を生業としている農家の方々にも使っていただき、作物を守るお手伝いができれば嬉しいですね。まずはその一歩として特許も取得しました。
弊社はまだまだ小さな企業ですので、今後は知名度アップのために協業も視野に入れています。ホームセンター、種や肥料の販売業者、不動産業界など、様々な企業様と協業してみたいですね。最近では芸能人をはじめ、若年層の方々が家庭菜園をやっていて、家庭菜園のイメージが大きく変わり始めています。ユーザーのニーズに応えていくことが大事だと思っていますので、ニーズを敏感にとらえ、今後も新しい機能やサービスを生み出していきたいと考えています。
--最後にProfessional Onlineを見ていただいている経営者、決裁者の方に向けてメッセージをいただけますか?
持続可能な社会に向けて、家庭菜園が価値のある活動であることが浸透してきています。弊社では「SCIBAI-サイバイ-」を通して家庭菜園をもっと広めていきたいです。家庭菜園で誰もが気軽にCO2を減らし、SDGsに取り組めますので、家庭菜園の楽しさなどについて、協業を通して一緒にお話ができればと思います。
--本日はどうもありがとうございました。
株式会社ミライ菜園
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