北出凜太郎(きたで・りんたろう)
株式会社クレイオ マーケティング Growth Lead
大学卒業後、京都の広告代理店に入社。プランナーとして経験を積み、退職後に映像制作会社を立ち上げる。エンターテインメント業界でアーティスト・タレントの演出などに携わった後、SNSマーケティングの会社に転職。2021年9月、業務で関わりのあった株式会社クレイオに転職。
NFT(non-fungible token、非代替性トークン)とは仮想通貨でよく知られているブロックチェーンを使用したデジタル技術で、昨今は特にアートの世界で注目を集めています。そのNFTを音楽業界に展開し、マーケットプレイスも運営(予定)している株式会社クレイオの北出様にお話を伺いました。
NFTでエンターテインメント業界を盛り上げたい
--本日はよろしくお願いします。早速ですが、北出さんが株式会社クレイオに入社されるまでのご経歴をお聞かせください。
新卒で就職したのは、伝統工芸などをメインのクライアントとしている京都の広告代理店でした。この会社で約3年、WEBや映像のプランナー、タレントのキャスティングを経験したのち、映像制作の会社を立ち上げました。そこではエンターテインメント業界の仕事を多くご依頼いただき、3Dホログラムを使ったライブの演出、TV番組でのアーティストの演出などに携わりました。その後、SNSマーケティングの会社に転職し、半年ほど経過した2021年初頭から、当社の事業(当時はプロジェクト)に関わるようになりました。
初めは外部の立場でしたが、当社の事業にもっと深く関わりたい気持ちが大きくなり、2021年9月より当社に参画することになりました。入社を決めた理由は、もともとNFTというワードに個人的に興味があったことに加え、そこにエンターテインメントを掛け合わせたら面白くなるのではと考えたことです。例えば現在はコロナ禍のため、以前のような形でライブができない状況にありますが、NFTのような新しい技術でエンターテインメントを盛り上げていけたら、などと考えています。
音楽業界に特化したNFTでアーティストとファンの関係をより密にする
--NFTがエンターテインメント業界を盛り上げる鍵となるとのことですが、貴社の事業のうち特にNFT事業について詳しく教えていただけますか。
当社は、平たく言えばエンターテインメント領域のDXを展開している会社です。サービスは大きく分けると以下の二つです。
①The NFT Records(ザ・エヌエフティー・レコーズ)
音楽レーベル、芸能事務所、インディーズアーティストが出品するNFTを、一般ユーザ(アーティストのファン)に販売するサービス。現在はβ版。
②セレブレイトメッセージ
多くのファンを有する芸能人やインフルエンサーなどのキャストにオファー(依頼)ができ、直接ビデオメッセージが届くサービス
このうち、音楽専門のNFTサービスとして展開しているのが「The NFT Records」です。NFTとアートを掛け合わせたサービスや商品は多く存在しますが、音楽に特化しているのは珍しいサービスだと思います。
NFTとは、英語「Non-Fungible Token(非代替性トークン)」の略称です。難しく聞こえるかもしれませんが、簡単に言うと、デジタルデータにブロックチェーン証明書が紐付けされたものです。従来、デジタルデータは自身が所有するデータが本物かどうかを証明することが困難でしたが、ブロックチェーン技術により、所有証明が可能となり、替えの効かない権利データ、つまり固有の価値や独自性を持ったデジタル資産として扱うことが可能になりました。
私は、このNFTを活用すれば、音楽業界のマネタイズ革命を起こせると考えています。実は音楽業界は2015年以降、業界全体の売上は増えていますが、CDのように、モノとして音楽の商品を持つ(フィジカル)ユーザは減っています。代わってストリーミング(デジタル)が市場の大半を占めるようになり、アーティストは音楽サービスの手数料でマネタイズするようになりました。
しかし、前述のように、デジタルデータは偽造・複製がフィジカルデータよりも容易にできてしまいます。また、誰でも大量に音楽データを得ることが出来た結果、アーティストの価値、さらには還元力が薄くなっているという問題点があると考えます。
そこでNFTを使うと、アーティスト自身がより自由にビジネスを行えるようになります。まず作品の所在が追えることから、数量限定販売であっても確実なユーザに商品を届け、利益を生み出すことも可能になります。作品が二次販売されたとしても、利益の還元が見込めます。また、楽曲が「所有」され、「限定」されていることで、マスマーケットで誰もが聞いていた音源とは異なり、それがどのような楽曲なのか、という興味や神秘性も生まれます。
さらに当社のサービスは、音源に限らず、映像や画像などとセット販売を行うことを可能にしています。ファンの方とのコミュニケーションを大事にしているアーティストは、映像作品はもちろん、追加特典を出しているケースが多くあります。その追加特典にはたとえば、サインデータや未公開映像、オンラインでのファンミーティングのようなイベントなど、様々なものがあります。「The NFT Records」では、ファンの方にこれまでと同じような「所有する喜び」を、デジタルデータでも実感していただければと考えています。
なお、現在、当社のサービスは国内のアーティストをメインとしていますが、サイトは英語・韓国語に対応しています。
--NFT事業を展開する上で何か課題となる点はありますでしょうか?
NFT事業を立ち上げたのは2020年に入ってからですが、今の課題は日本を含めて、まだまだNFTに対する認知度が低いことです。特に、仮想通貨と紐づくことが多い技術ということで、生活に直結しないのではというイメージを持っている人が多いのが現状です。そのため、アーティストとユーザの双方に、音楽という切り口で所有体験を実感していただき、NFTの良さをもっと知っていただけたら、と考えております。
具体的な施策として、当社ではまずはNFTを気軽に利用していただくため、クレジットカード決済を導入しています。NFTは仮想通貨でのやりとりが盛んなイメージがあるかもしれませんが、いざ実際に仮想通貨を扱うというのは想像以上にハードルが高いものなので、気軽に始めてもらえたらと思っています。また、通常であればNFTは出品するだけでも1商品当たり数千円程度のコスト(GAS代)がかかりますが、当社ではこのコストがゼロというのも、ハードルを格段に押し下げていると自負しています。
また、NFTは環境への負荷がかかると言われることがありますが、当社の場合はエイベックステクノロジー社と業務提携を行い、デジタルコンテンツに対して所有権を保証するブロックチェーン証明書Atrustを採用することで、省電力に努めています。NFT開発に何年も関わっているプロフェッショナルなメンバーも在籍しているので、日々、ユーザの方に気軽に利用していただけるような創意工夫について話し合っています。
NFTがアーティストそしてファンにとっての資産になる未来を作りたい
--NFTは新しい技術なだけに、啓蒙活動も必要なのですね。今後の中長期的な事業展望についてお伺いできますか。
事業展望については、技術的なステップと、事業ビジョンとしての二つに分けてお話させていただきます。
まず、技術面についてです。「The NFT Records」は現在β版で運用していますので、本格サービスインにむけ、二次流通機能の実装・DIY機能の実装・専用プレイヤーアプリ開発等に取り組んでいます。
NFTの特徴と言えば二次流通、CtoCの仕組みとしてマーケットプレイスを持つことですので、まずはそちらを解放していく予定です。これを取り入れることにより、ユーザ自身の持つNFTは資産となる実感が出ると思います。また、取引が行われるたびに、アーティスト側に権利手数料が入るというメリットもNFTの大きな特徴として魅力に感じて頂けると思います。
DIY機能としては、先日募集発表も行わせていただきましたが、音楽活動をされている方がご自身でNFT商品を登録・出品出来る仕組みを整えていく準備をしています。現在当社が商品販売をさせていただいている著名なアーティストに限らず、音楽を生み出したいという全ての皆様に自由に商品化していただき、正当な利益を受取っていただければと思います。
また、購入したNFTの音楽をより簡単に楽しんでいただくために、専用のプレイヤーアプリや、コミュニティ機能を開発中です。SNSのように、自分が持っているNFTを人と共有したり、特定のジャンルに分けて同じ趣味・嗜好を持ったユーザ同士でコミュニケーションを取ったりすることで、ユーザの楽しみ方も広げられると考えています。
他にも、日々テクノロジーが進化する現代社会の波に乗り遅れることなく、取り入れられるものは柔軟に取り入れて、サービスとして進化を遂げていきたいと考えています。
そして事業ビジョンについては、NFTという切り口を活用することで、アーティスト・ファンの双方にとっての「資産」という概念を持つ時代を築きたいと願っています。
NFTは、証明書があることで、デジタルデータに資産価値を付加します。アーティストがご自身の才能を発揮し、その結果として生まれた音楽をきちんと管理し、所有する。そうすることで、音楽は資産となります。また、これまではマスマーケットに向けて、どれだけの数の商品を売るか、何回再生させるか、という大量消費で競っていた音楽の基軸をリセットし、本当に創りたい音を、聴きたいという限定されたファンが所有することを可能にします。たとえば「世界にたった一つの曲を所有出来る」という贅沢な商品を創りだすことも出来ますし、また、ファンにとっても貴重な所有体験を得る機会になると思います。
NFTを活用することで、音楽業界の新しいマネタイズのみならず、マーケットのひとつとして、そしてスタンダードに昇華していければ、仕事冥利につきますね!
--最後にProfessional Onlineを見ていただいている経営者、決裁者の方に向けてメッセージをいただけますか?
NFTに関して興味をお持ちの企業様から是非色々とご連絡をいただけますと幸いです。また今後はNFTを使い、企業とアーティストがコラボした作品を出していきたいと考えています。音楽以外の業界でも、NFTに関してチャレンジしたいことがある企業様には当社がお手伝いできることがあるかもしれませんので、ぜひ一度ご相談いただけますと有難く存じます。
--本日はどうもありがとうございました。
株式会社クレイオ
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