地元産業を守るため、盛り上げるために新たな販売方法を確立。低価格で良質な織物を届ける

地元産業を守るため、盛り上げるために新たな販売方法を確立。低価格で良質な織物を届ける

株式会社木下染工場 代表取締役社長 木下 茂紀

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2022.04.05

木下茂紀 (キノシタ シゲキ)

株式会社木下染工場 代表取締役
 

昭和37年木下染工場を設立。

大学卒業後、先代が設立した木下染工場に入社。その後代表取締となり、平成22年に株式会社化。

昭和から平成と時代が変わるにつれて中国製の織物が好まれるようになり和歌山県橋本市高野口の伝統的なパイル織物は衰退していく。伝統産業の衰退を食い止めるため地域密着型の経営から全国展開を開始。1962年の創業から現在は18人の従業員とともに事業を展開中。

 

 

和歌山県橋本市高野口ではパイル生地の生産が盛んでした。海外の安価な生地が輸入されるようになり地域の産業は衰退していますが、その中でもECサイトでの販売や新たな取引先の開拓などにチャレンジし続けているのが株式会社木下染工場です。今回は代表取締役の木下様にお話をお伺いしました。


 

地域の産業を守るため事業を引き継ぎ株式会社化
 

 

--本日はよろしくお願いします。早速ですが、木下さんのご経歴をお聞かせください。

 

昭和62年に大学卒業後、別の会社に就職は決まっていましたが、早く家業を覚えて父のあとを継ぐ必要がありましたので、就職は辞退して木下染工場に入社しました。
 

繊維工場で培われる細かい技術は現場でしか手に入らないと父は考えており、早い段階で仕事を覚えて欲しいという気持ちも汲んで家業を継ぐことにしました。
 

私があとを引き継いだときは、先代から続く個人事業として営んできましたが、平成22年の11月に株式会社として再スタートしました。


 

--株式会社化した背景などございましたらお教えください。
 

和歌山県橋本市高野口は地場産業としてパイル織物が盛んな地域です。織物業界の中でも父が始めた染色業を中心に地元に根付いた企業として事業を続けていました。
 

ですが時代が変わるにつれて、織物は国産から中国製のものが多くなり、平成10年ごろから売り上げが激減しました。そんな中で産地内だけでは経営を続けられないと思い、南大阪や兵庫県、和歌山県などの商社との取り引きを考えるようになりました。

 

私が先代から事業を引き継ぐタイミングで、商社との取引のことを考えると、個人経営よりも株式会社化していた方が利点が多いと判断しましたので、業務拡大のために株式会社化をいたしました。
 

二十社近くあった染工場も現在は五社程度になっています。私たちは伝統的な産業を守るために現在も事業を続けています。


 

地域密着型から全国規模のネット販売へ

 


--現在展開されている事業について改めてご説明をお願い致します。

 

弊社は昭和37年の設立よりパイル織物のための糸の染色や完成した生地の染色、生地プリントなどの事業を産地内の会社様に向けて地域密着という形で業務をおこなっていました。


 

--御社の独自性や強みについてお聞かせください。

 

パイル織物の産地特有の染色技術は他社様よりも技術が高いと自負しております。
 

またインターネットでタオルや腹巻きなどのニット生地インナーなどの販売をスタートしました。タオル生地は当産地のパイル織物を使用しております。ECサイトを中心に販売しているインナー類は大阪や和歌山、奈良などの産地生地を使用し、それを染色したものを販売しております。

高野口の産業はほとんどの作業が分業化されているため、現在はこのようなスタイルになっています。一貫して製造できる会社は業界問わずほとんどないと思います。後継者不足などで一つの工場が廃業してしまうことも多く、その点が産地分業のデメリットでもあります。


 

--産地の衰退は後継者不足が原因で衰退していると感じますか?
 

その通りだと思います。後継者不足だなというのはひしひしと感じていますね。元請の織物屋さんは何代も続いているところが多い印象ですが、その下で事業を営んでいる小さな繊維工場などの後継者はかなり少ない印象です。
 

理由として、仕事をいただく受身の立場の自分達は、仕事をいただけているうちはいいのですが、仕事がもらえなくなる時もあり、波が激しい立場にあります。ここから脱却するために自分達から仕事を取りに行くスタイルに変えていかなければいけません。

 

自分達の子供や親戚にもこのままのスタイルで会社を継いでくれとはなかなか言いにくいですので、変えていく必要があるなと感じています。

 

経営を続けていくためにできることを考えたときに、自社発信でネット販売を取り入れるようになりました。将来跡を継ぎたいと思ってもらうために自分ができることは「自分達から攻めにでること」だと感じました。ネット販売をスタートさせたのも受身から脱却したいという想いからです。
 

染色するだけでなくさまざまな事業をおこない、興味を持ってくれる方が跡を継いでくれればと思っています。

 

地元産業を守りつつECサイトの成長も目指す

 


 

--今後の中長期的な事業展望についてお伺いできますか。
 

今後も染工場の仕事を続けつつ、別の事業を立ち上げて伸ばしていきたいと思っています。
 

ECサイトでは現在個人のお客様からの注文だけでなく、腰痛や不妊などにお悩みの方に施術する整骨院様ともお取引をしています。

 

現在販売している「てる日和」というタオルは歯医者様からの別注タイプでの依頼もあります。今後もそれぞれの企業様のニーズに合わせた商品を形を変えながら提供していければと考えております。
 

染工場の仕事でも地域の工場や商社から頼られるような存在になれればと考えています。

 

--最後にProfessional Onlineを見ていただいている経営者、決裁者の方に向けてメッセージをいただけますか?
 

タオルは干しやすかったり頭に巻きやすかったりといった工夫がありますので、便利なタオルをお探しの病院などがごさいましたら、ぜひご相談ください。

近年は「温活」として当社で販売しているインナー、腹巻きが人気です。整骨院や老人ホーム、美容関係からの問い合わせも多いです。

当社の腹巻きはシルク100%という強みがあります。「シルクは高級品」というイメージがありますが、当社では自社での加工などをおこなうことでリーズナブルな価格で販売しています。インナーや腹巻きの販売をしている施設や業者様に、良質で低価格な当社のアイテムを知ってもらいたいと考えています。


 

--ありがとうございました。


株式会社木下染工場

公式HP: https://www.kinoshita-senko.com/

 

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プロフィール

株式会社木下染工場代表取締役社長

木下 茂紀

会社情報

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