運送業から始まり多角的経営に手腕を発揮する「先を読む力」

運送業から始まり多角的経営に手腕を発揮する「先を読む力」

株式会社加瀬倉庫 会長 瓜生 佳久

カテゴリ: 不動産・建築、従業員数:

2022.04.05

瓜生 佳久(うりう・よしひさ)

株式会社加瀬倉庫 会長
 

高校卒業後、新卒で入社した会社を早期に退社し、トラック1台で起業。商売の面白さに目覚め、運送事業を拡大し、倉庫業や不動産業、賃貸管理業など多角的に事業を展開する。常に一歩先の需要を追い求め、自社の業態を変化させながら新しい発想と提案により、社員一丸となってさらなる飛躍を目指す。

 


 

倉庫業は、物流業界の中においても極めて重要な役割を担っています。不動産事業を柱に多角経営する企業も増え、競争が激化しているなか、高い経営手腕を発揮し、事業を展開しているのが株式会社加瀬倉庫です。今回は株式会社加瀬倉庫の会長である瓜生佳久氏にお話を伺いました。

 

トラック一台で起業。事業のノウハウを学び、商売の面白さを実感する
 


 

--本日はよろしくお願いします。早速ですが、瓜生さんが起業されたきっかけをお聞かせください

 

高校を卒業してから、どうしても自分で商売したいという思いが昔からあり、新卒で入社した会社も比較的早く辞めました。その後、何か自分でやろうとしていた時に1.5トンのトラックが手に入ったことが起業のきっかけです。

 

手に入ったのは1台の車でして、運送業を始めるといっても青ナンバーの免許もなく、お客さんもいない状態でしたが、自分で営業してどこに行っても相手にされない中、運送屋さんの下請けに入ることになりました。
 

自分の車で物を運んで運賃を運送屋さんからもらう収入を得ていました。当時でも会社員として働いていた頃に比べ2、3倍の収入になり、商売の面白さを実感しました。

 

運送業から倉庫業へ、時代のニーズを先取し多角的戦略で事業拡大

 

 

--現在は倉庫事業・不動産事業を中心に事業展開されていると思いますが、改めてご説明をお願い致します。
 

弊社は運送業からトラック1台で事業を始め、それから同級生などを引き入れて、同時に車も増やしていきました。当時はお金がありませんでしたが、新車でも中古車でも収益が変わる訳ではないので中古車のみを買っており、一番多いときで約50台まで増えました。8台目のトラックを購入する頃に青ナンバーを取り、運送業許可を譲渡譲受で買いました。
 

運送業をしている中で、当時のお客様から「借りていた倉庫に荷物を預かってくれないか」という依頼があり、1個単位で預かっていました。すると、倉庫業の方も順調に収益を上げていったため、倉庫業にも目を向けることにし、倉庫を借りる数を増やしていきました。
 

また、フォークリフトの荷役など必要な人材を雇い始めました。しばらくして昔から興味があった不動産、宅建の免許も若い頃から取得し、不動産屋を開始。荷物を預かるために借りた倉庫をサブリースによって貸し出すことにしました。
 

当時はサブリースで借りたいというお客様が多くいたため、倉庫業で使う倉庫以外を全て貸し出すことにしました。その後、弊社で預かっている荷物は全て別の所に移動して、最終的には約50棟まで増やした倉庫を全て貸し出しており、それが今のメインの仕事になっています。
 

現在では約380棟の土地や倉庫をサブリース契約により貸し出しています。

また、不動産業をしていく中で競売を知り、裁判所へ入札に行っていました。今では入札が振り込みで出来るようになり、ビルの購入を進めていったことで現在170棟にものぼる大家業を行なっています。

 

 

--貸し出しを行う方にはどのようなメリットがありますか?

 

”稼げない不動産”を”稼げる不動産”に変えるため、使われていないビルなどを整理し、トランクルームや会議室、レンタルオフィスや店舗に貸しています。

個人で賃貸業をしていて困っている人は直接貸し出すよりも、組織として展開している弊社に貸しておくことで、明け渡し時に必ず代替地を用意しているため、安心して頂けると思います。そのような地主さんの知人の方や親戚の方などをご紹介して頂き、お客様も増えていきました。

 

 

--その他に展開されている事業はありますか。
 

3つ目として収納事業を展開しています。世間ではトランクルームやレンタルボックス等が多くありますが、これらも最初は海上コンテナとして使用され、処分する予定であったコンテナを買い、それを空き地に置いて倉庫代わりに使っていました。

 

そうすると予想以上に需要があり、借りてくれる人が多くいました。最初は1カ所のみでしたが、今では約1500ヶ所くらいあります。関東一円を中心に展開し、北海道や九州にも広がっています。
 

リフォームは全て外注ですが、コスト削減には力を入れており、原価積み上げ方式で工事をしているため、材料代や人工(にんく)を積算をしながら工事を発注でき、安く抑えることが出来ます。
 

今、コスト低減は社風になっているくらいです。東京ルールができてからは貸主がリフォーム代を出すことになっており、場合によっては2、3年分の家賃収入がタダ同然となり、住宅は収益が悪化しました。そのような形態は減らして、店舗事務所や、トランクルームなどの業態に変えています。

 

 

--貴社の独自性や強みについてお伺いできますか。

 

業態を時代のニーズに合わせた形に変化させているところです。最近はマンスリーマンションなども少し景気が悪くなっており、マンスリーの物件からは撤退しています。辞めた分は代わりに収納やトランクルームにしています。このように、お客さんに喜んで使ってもらえるような業態を常に探して変化に対応しています。


 

--業態を変化させつつ、業務を遂行できるポイントはなんでしょうか?
 

提案力や発想力といった創意工夫を社員が自ら行ってくれるところです。私が全部提案しなくても、社員の方から色々な形で、これをやったらいいんじゃないの?とか気がついたことを提案してくれます。

 

社内では「なるほど賞」というのを提案料として渡しており、弊社の新たな事業やさらなる思い付きや発想につなげています。


 

発想の転換により既成概念にとらわれないビジネスモデル構築へ

 

--今後の中長期的な事業展望についてお伺いできますか。
 

価値観や規制の影響によるゆがみを正していきたい、そう考えています。


現在、農地でも農振法により納整が義務化されてしまい、全然使えず売ることもできないことがあります。農家の方々は高齢化が進み、自分ではどうしようもできない。息子は農業を継がずに企業へ勤めてしまっている。そういう土地が何万坪もあるのが現状です。そういった土地は非常に安いです。農振・納整は坪単価が低く、評価されにくい土地であるのに対して、ニュータウンなどは何倍もの評価になります。
 

このように価値観や規制によって経済が歪んでしまっているという現状があります。それをいかに解決していくかということを考えています。


 

--新しいビジネスモデルでどのようなことができますか。
 

今後、世の中がIT化して労働時間も減り、水曜日も休んでいいよという時代になったときに、農地というものはすごくいい商材になると感じています。時間を有効に使える喜びを感じて耕せるし、無農薬のものを取れるという考え方もできるような気がします。
 

また、コストを削減することによって、低い単価でもしっかりと利益が上がる仕組みを整えていきます。収納事業の方でもどうすればそれが実現できるか、日々研究しています。それによって安い賃料であっても利益を確保出来、お客様に喜んでいただけるようにしていきたいです。


 

--最後にProfessional Onlineを見ていただいている経営者、決裁者の方に向けてメッセージをいただけますか?

 

経営理念を作った時に”売り手よし買い手よし、世間よし”という三方良しを掲げています。企業も人も存在価値を高め、やりがいや夢を大きく持たなくてはいけません。本当にこの一言に尽きると思います。

 

前向きな発想・行動、努力に対して結果を責め問うな、良かれと思ったことが結果悪い場合もありますが、そういう時は責めません。前向きな発想はどんどん進んで皆がやりやすくなるようにしています。
 

また、世の中の流れに乗らないと商売はなかなかうまくいきません。いかにスイッチを早く切り替えられるか。

”世の中の風をよむ”ことが大事だと思っています。それによって社員も苦労しなくて済むわけです。

逆風というのは社員がいくら働いても儲けにつながらないので経営者としてちゃんと切り替えてあげるときには切り替えて後追いするなと。もっともっと世の中には美味しい仕事がたくさんあるんだと、そういう考え方が必要ですね。


 

--本日はありがとうございました。
 

株式会社加瀬倉庫

https://www.kasegroup.co.jp/

 

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