四宮 靖隆(しのみや・やすたか)
株式会社ジョイゾー 代表取締役
1999年、東海大学文学部史学科卒業。新卒で入社した独立系SIerでは、社内の情報システム部にてネットワークなどに関する基礎知識を習得。その後、エンジニアとして転職し、サイボウズ株式会社のグループウェア「ガルーン」の導入・カスタマイズなどに携わる。2010年に独立し、2011年11月にサイボウズ社からクラウド業務改善プラットフォーム「kintone」がリリースされたのを機に、「kintone」専業のSIerとして業界内外から一目置かれる存在に。
サイボウズ株式会社が開発・販売するクラウド業務改善プラットフォームの「kintone」。DXという言葉が盛んに聞かれる昨今、ITに詳しくない人でも使いやすいプラットフォームとして再び脚光を浴びています。今回はリリース直後のいち早いタイミングで「kintone」に特化したSIerとして知られている、株式会社ジョイゾー代表取締役の四宮様にお話を伺いました。
上司の言葉が独立のきっかけに
--本日はよろしくお願いします。早速ですが、四宮さんが起業されたきっかけをお聞かせください。
東海大学文学部史学科を卒業し、1999年に新卒でIT業界に入りました。これからはインターネットが中心になると考え、システムエンジニアを目指してシステム開発会社に入社したのですが、研修後に配属されたのは社内の情報システム部門でした。予想外の配属でしたが、このときに社内インフラ業務を通じてネットワークなどに関する基礎知識を得られたことが結果的に現在の業務に生きています。
3年ほど経った2003年には、独立系SIerへエンジニアとして転職しました。そこでサイボウズ株式会社のグループウェア「ガルーン」と出会います。その会社では主に「ガルーン」の導入・カスタマイズなどに携わりました。
そのうちに、将来のことや家族のことなどのさまざまな事情から退職を考えるようになり、はじめは転職をするつもりでした。ところが、退職について相談した上司から、転職よりも独立を勧められたのです。せっかくサイボウズ社ともつながりがあるのに、まったく違う業務をする他社へ行くのはもったいないということでした。それをきっかけに、個人事業主を経て2010年に株式会社ジョイゾーを設立するに至りました。
どのような相談にも対応できる「kintone」のコンシェルジュ
--貴社の主力事業について改めてご説明をお願いいたします。
弊社はサイボウズ社のクラウド業務改善プラットフォームである「kintone」に特化したSIerです。独立直後の2011年11月にサイボウズがクラウドビジネスをスタートしました。ちょうど私自身がクラウドにかかわるビジネスを探していたタイミングだったこともあり、「kintone」に特化しようとすぐに決めました。
前職での経験からkintoneのポテンシャルを感じていたのに加え、リリース直後でしたので、今始めればイニシアティブを取れると感じたことが、すぐに決断できた大きな理由です。今でこそ「kintone」は2万社以上に導入されていますが、当初はクラウドサービスの認知度が低く、大きな広がりになるには時間がかかりましたね。
弊社の主力事業は製品に対するコンサルティング・システム開発および「kintone」プラグインの開発・販売です。なかでもメインビジネスが2014年6月に立ち上げた「システム39」です。
--「システム39」についてサービス内容を詳しく教えてください。
「システム39」は、39万円の定額制で「kintone」の開発やコンサルティングを行うサービスです。特徴は1回2時間、合計3回のヒアリングにあります。お客さまと対面やオンラインで、実際にkintoneを動作させながら、どのような機能を必要としているのかをすり合わせます。簡単なものならお客さまの目の前で「kintone」のカスタマイズ(開発)も行うため、「対面開発」と呼んでいます。
39万円のパッケージを申し込まれた方には全部で3回のヒアリングを行いますが、実は初回の2時間は無料です。kintoneを知らないお客さまもイメージがしやすくなるため、4割ほどの成約率がありますね。成約に至らないケースには、お客さまのニーズがまだ漠然としている場合や、弊社の説明を聞いたお客さまが自社内で対応できると感じた場合などがあります。
このサービスは特にターゲットを定めてはいないのですが、ご相談いただく企業様は中小企業の比率が高いですね。なお、通常の開発案件であれば企業の情報システム部を通してご依頼いただくことが多いのですが、「システム39」は総務部や営業部など事業部門から直接のお問い合わせが多いのが特徴です。
なお、現在弊社には営業部門がない代わりに、広報やマーケティングには力を入れていますね。弊社の「キントマニア」はkintone専門ブログとして知られています。お陰様で、基本的には口コミやメディア、ブログからお問い合わせをいただいている状況です。
--2020年に開始された中小企業のDXを推進する伴走型支援教育サービス「J Camp」についても教えていただけますか。
「J Camp」は主に中小企業向けに、DXを社内で推進できる人材を育てるための教育サービスです。1コースは半日の研修を4週間、週に1回ずつ受ける日程で構成されています。なお、研修費用も1人あたり39万円です。
前半の2回は座学で、DXとは何かや、DXを推進する前に必要な社内の業務整理・業務改善ができるマインドづくり、どのような人材がDX推進担当者として適しているかといった内容を学びます。また、ITリテラシーを高めるために重要な、データの整理や設計、データベースの知識を身につけます。これらの知識は「kintone」を使ったシステム開発の考え方を理解し、社外のシステムエンジニアなどと話をする際に必要不可欠となります。
後半の2回は実習です。「システム39」でご説明したような対面開発を5人1チームとなり、ロールプレイングで実践していただきます。実習の初日である研修3日目は非常に苦戦される方が多いのですが、4日目には課題をシステムに落とし込む考え方が身につくようになります。
--「システム39」「J Camp」の価格以外の共通点は何でしょうか。
「システム39」「J Camp」ともに、最終目標はお客さまが自分でシステムを運用できることです。「システム39」では、お客さまの目の前で「kintone」のカスタマイズをします。そのため、3回のヒアリングを終えるころにはお客さまも作り方がわかるようになるのですね。具体的には、ちょっとした設定変更などが自分たちでできるようになります。そのため、開発後の保守サービスが必要なくなるのです。
「J Camp」も同じで、お客さま自身でDX推進ができるようになるのが目的です。これまでのシステムエンジニアとしての経験から、システムが完成して運用に入ってからが重要だと考えています。少しのカスタマイズのために長い納期をいただくケースなどでトラブルになっているのを多く目にしてきました。お客さま自身でシステム運用ができるようになればスムーズになるでしょう。
--貴社の独自性や強みについてお伺いできますでしょうか。
弊社では「kintone」に関連した圧倒的な経験や実績があることから、お客さまの相談に対してコンシェルジュの役割を果たすことができます。「kintone」を使ってどのように業務改善につなげる仕組みをつくるかという提案だけでなく、他のクラウドサービスも選択肢に含めた提案が可能です。「kintone」を扱うSIer同士の横のつながりもありますので、極端な話、弊社よりも適していると思われる会社を紹介したこともありました。まずは相談していただければ、何かしら提案ができることが他社との差別化要因でしょう。
「kintone」の優れているところは、特定の何かに特化したシステムではないことです。それゆえに、今、自分に必要なシステムを簡単に作ることができます。1つのプラットフォームで人事にも営業にも対応できるのは「kintone」の強みですね。
とはいえ、「kintone」さえあれば何でもできるというわけではありません。財務経理の分野など、特定の領域ではより安価で適したシステムがあるので、それらを活用する方が良いでしょう。「kintone」は他のクラウドサービスと連携できる機能も充実していますので、他社のサービスをサポートするシステムとしても使い勝手が良いのです。
今後も「kintone」の成長とともにサービスに磨きをかける
--今後の中長期的な事業展望についてお伺いできますか。
サイボウズ社の発表によると「kintone」導入社は2万社に到達しましたが、10倍の20万社まではポテンシャルがあると考えています。それまでは、今やっていることを大きく変えるつもりはありません。やり方を変えずに質を上げていくことに注力します。また、「kintone」は北米や中国などのアジア・オセアニアでも展開しているので、然るべきタイミングで海外進出も考えています。
--最後にProfessional Onlineを見ていただいている経営者、決裁者の方に向けてメッセージをいただけますか?
DXを進めるための社内の業務改善に悩まれている企業様は多いのではないでしょうか。会社をより良くしていくためのITの活用にしろ、業務改善にしろ、最終的に決断するのは経営者の皆様だと思います。
もし悩んでいらっしゃるならぜひ、自分が先頭に立つ心意気で決断していただければ我々としても嬉しく思います。そして、もしその先に弊社でお手伝いできることがあれば、ぜひお声がけいただけますと幸いです。
--本日はどうもありがとうございました。
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