曽和 利光(そわ としみつ)
株式会社人材研究所 代表取締役
1971年愛知県豊田市出身。1995年京都大学教育学部教育心理学科を卒業。新卒で入社した株式会社リクルートで人事採用部門を担当、ゼネラル・マネジャーとして活動したのち、ベンチャー時代の株式会社オープンハウス、ライフネット生命保険株式会社などで人事を担当。2011年に株式会社 人材研究所を設立、企業の人事部へのコンサルティングを行うと同時に、2万人を越える就職希望者の面接を行った経験から、新卒および中途採用の就職活動者へのアドバイスを各種メディアのコラムなどで展開している。
人事は、採用や教育などを通じて人的資源のマネジメントを行い、業績向上や成長に大きな影響を与える重要なポジションです。しかし人事に関わる人の多くが、経験即によって進められており、効果的な方法がないのが現状です。そんな中、組織論や行動科学に基づく人事をアドバイスしている人材コンサルティング会社が、株式会社人材研究所です。日本企業における人事の課題と、その解決策はどういうものなのでしょうか。代表取締役の曽和様にお話をお伺いしました。
京都大学で専攻した心理学を人事に活用する
--本日はよろしくお願いします。まずは、曽和さんが起業に至るまでの経緯をお聞かせください。
もとは心理療法家になりたくて、京都大学で心理学を専攻していました。心理療法家とは、臨床心理学にもとづく知識や技術で人間の心の問題にアプローチする、心の専門家のことです。そのため就職活動も行っていなかったのですが、リクルートに入社していた先輩から「うちは日本の人事だ。おまえの学んだことが活かせる」と誘われて、リクルートに入社しました。
リクルートでは15年間在籍しておりました。採用業務から教育体制の構築、制度設計など、人事に関わるあらゆることに携わりました。最後の6年間は、最終面接を担当したり、採用の方針を決定したりするゼネラル・マネジャーも務めました。そのうちに30代後半を迎え、その後のキャリアを考えたときに、もっとさまざまな領域の人事を経験しておく必要があると考えて、リクルートを退社することを決めました。
そして当時、まだ50名規模のベンチャーだったライフネット生命保険で総務部長として働きました。ライフネット生命では、採用、教育、評価報酬、配置、退職までのすべてに携わることができましたので、よい経験になったと思います。さらにその後、こちらも上場前の中堅不動産会社だったオープンハウスに移り、2011年10月に人材研究所を起業したのです。
--起業のきっかけはどういうものだったのでしょうか。
2011年は、ちょうど40歳になる節目の年でした。心理学者のユングは、40歳前後に人生が午前から午後に転換すると考えていました。40歳はいわば「人生の正午」。そのタイミングで起きたのが東日本大震災でした。楽天の三木谷さんも、日本興業銀行の行員だった当時に阪神・淡路大震災を経験して起業を決意したそうですが、比べるのは恐縮ですが、私も東日本大震災を経験したことで、残りの人生で自分の使命をまっとうしたいと考えるようになりました。
その使命とは「人と組織の可能性の最大化を目指す」ことです。それまで人事に携わってきたことで、ようやく見えてきた理想的な人事のあり方、それを世の中に還元しようと考え、コンサルティング会社を立ち上げたのです。
エビデンスに基づいた科学的な人事が求められる時代へ
--代表を務める人材研究所の事業内容とはどういうものなのでしょうか。
メインとなっているのは「組織人事コンサルティング」です。人と組織にまつわるさまざまな課題を解決する、独自のコンサルティングを行っています。
特徴としては、徹底的な組織分析から始めるところでしょう。人事コンサルティングを行う会社では、クライアントの課題がどのようなものでも、結局は自社のプロダクトをすすめるところが多いのです。「熱が出て風邪のようだ」という患者さんでも「おなかが痛い」という患者さんでも、葛根湯を渡してしまうイメージでしょうか。
ですが、弊社では「風邪で困っている」患者さんをきちんと検査して、そもそも本当に風邪なのかどうかから調べます。もしかしたら発熱の原因が他にあるかもしれない。そうして問題の本質を見極めてから処方していくイメージです。弊社にはパッケージ化されたプロダクトはありません。すべて個別のケースに最適な処方を考えて対応しています。
それが可能なのは、リクルートやライフネット生命、オープンハウスでマネジャーとして働くことで培ったノウハウがあることです。さらに2万人以上の面接に関わった得た人物データベース、さらに私のライフワークである心理学や組織論の知見を融合したノウハウをすべてのコンサルタントが共有しており、最適な処方箋をクライアントにお届けできるからだと思います。
--組織人事コンサルティングのほかには、どのような事業を行っていますか。
もう1つの柱が、「採用アウトソーシング」です。コンサルティングも行っている採用のプロフェッショナルである弊社メンバーが、実際に人材の見立てや、採用プロジェクトのマネジメントといった業務を代行しています。単に任せていただくのではなく、弊社のスタッフがクライアントの人事部の一員となって、行動をともにしながら業務に関わって最適な採用スキームを構築しています。
採用がうまく成果を出せていないので、採用態勢を変えたいといったケースや、本格的な採用活動の経験やノウハウがなくて段取りが分からないベンチャー企業、あるいは急な大量採用で選考や面接などのリソースが不足しているといったときに、活用していただいています。
その他に、独自ネットワークと現場経験に基づいた人材紹介事業です。人事課題の解決に向けてともに取り組んでいただくノウハウについてお話しする講演やセミナー事業なども行っています。
--それぞれの事業に共通するものはあるのでしょうか。
もはや、これまでのように人事に携わる人が自分自身の経験やセンス、直感だけで人事を決める時代ではありません。組織論や行動科学といった理論に基づいた、エビデンスベースの科学的な人事が求められる時代です。弊社が行っている事業は、そうした科学的な手法を人事に採り入れていくことの必要性を訴えて、最終的には内製化していってもらうことを目的としています。
科学的な人事が当たり前の社会となったら、弊社の存在意義はなくなるかもしれません。しかし、直感的な人事では働く人が幸せにはなれません。働く人が納得できて、その後も力を発揮できる環境を作っていくことが弊社の社会的な役割だと考えています。
マネジメントの要諦は、人の見立て(アセスメント)
--今後の中長期的な展望をお聞かせください。
ご紹介だけで仕事の依頼をいただいているのですが、それでもコンサルタントが足りていない現状があります。ですから今後は、優秀な人事コンサルタントをもっと増やしていきたいと考えています。
ただし、人事コンサルタントは、経験も必要なので育成に時間がかかります。採用のアウトソーシングなどで実務を経験してもらうことで、より早く人事コンサルタントの育成を行っていきたいですね。
これまで人事担当者や現場のマネジャーが感覚やセンスで判断してきた、ある種の神秘的な人事の領域も改革していきたいですね。評価を数字やデータで「見える化」して、統計や分析の力で人の評価や配置などを決める科学的な人事を広めていけたらよいなと思います。コンサルタントを育ててもっと増やしたいのは、その流れを加速させるためでもあります。
--最後にProfessional Onlineを見ていただいている経営者、決裁者の方に向けてメッセージをいただけますか?
ある程度事業がうまくいっている企業の場合、経営者の悩みの半分以上は、人と組織の問題ではないでしょうか。弊社には、人と組織のあらゆる問題を解決に導けるだけのノウハウがあります。もし、人と組織の問題に頭を悩ませている経営者の方がいらっしゃいましたらご連絡ください。
--本日はどうもありがとうございました。
株式会社人材研究所
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プロフィール
新井 江亮
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