建設の知見とITの力で建設業界の魅力を発信し、業界人口の減少に歯止めをかける

建設の知見とITの力で建設業界の魅力を発信し、業界人口の減少に歯止めをかける

株式会社FIRST CEO 豊田 和覇

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2022.02.21

豊田 和覇(とよた・かずは)

株式会社FIRST CEO

父が経営する総合建設会社の正和工業に入社。同社で16年間勤務し、現場監督として施工管理に携わったほか、積算や調達・購買、採用、経営管理の経験を積む。業務を通して直面した課題を、建設の知見とITの力を組み合わせることで解決するべく、2019年8月に株式会社FIRSTを設立。

建設需要が盛り上がる一方、建設業界に入る若者は少なく、業界の労働者人口は今後数年のうちに約100万人減ると見込まれています。特に労働者の多数を占める職人の不足に歯止めをかけるべく、建設業界の魅力を高めようとITサービスの導入を支援している株式会社FIRSTの横田様にお話をお伺いしました。

 

 

建設の知見とITを組み合わせ、課題解決に挑む

 


--本日はよろしくお願いします。早速ですが、豊田さんのご経歴をお聞かせください。


18歳で父が運営する総合建設会社である正和工業に入社しました。そこでは10年間、現場監督として施工管理に携わり、その後は積算、調達・購買、採用、経営管理を統括する部門長を経て、役員に就任しました。


あるとき父が病気になり、長男である兄が後を引き継ぐことになりました。実は兄が代表になった後、5億円だった売り上げが8年間で35億円になり、建設業界では珍しいほどの急成長を遂げたのです。


兄が会社を継いだとき、正直に言うと私自身にも会社の代表になりたいという気持ちがありました。そのため、会社の成長を傍らで見ていることに悔しさを感じ、同時に自分にもできるのではないかという思いを捨てきれませんでした。


また、10年間建設現場で施工管理として勤務しているなかで感じた課題を解決するために試行錯誤した経験から、建設のノウハウだけでなく、システムやIT系の力が必要であることに気付いたのです。そこで建設の知見とITの力を組み合わせて課題解決にあたるため、また経営に挑戦したいという思いを実現するために2019年8月に株式会社FIRSTを設立しました。


前職では役職についていたこともあり、自分が携わらなくてもいい業務も多くありました。しかし起業して感じたのは、特にまだ人数が少ないこともあり、プレーヤーとしてやらないといけないことも多くあり、毎日学びがありました。


FIRST(ファースト)という社名には、人生を充実させるために最も重要だと私自身が考えている事柄に由来しています。私は人間性を高めるのが好きで、常に新しいことにチャレンジして充実感に満たされたいという思いがあります。そのため、「最も」の意味が含まれるFIRST(ファースト)を社名にしました。


 

IT化への障壁を下げて、建設業界の非効率を解消
 


--建設BPR(業務改革)支援事業について、改めてご説明をお願い致します。


弊社では「ワンタッチですべての業務をワンピースに」をキャッチコピーに、建築業のバーティカルSaaSを開発中です。デジタル・テクノロジーを活用し、事業・組織・業務の全面的な見直し、および再設計・再構築のサポートを行っています。


建築業はピラミッド構造になっており、全国に50万社ほどあるなかで大手企業は全体の約1%、残り99%が中小企業です。業界全体の就労人口は約499万人ですが、勤務する方々の構成を見ると72%を職人の方が占めています。ところが近年この職人の方々の離職が増加しており、今後数年で100万人が離職すると言われています。一方で、インフラの老朽化などの要因で建設の需要は右肩上がりで増えているのです。


現在、建設テックが話題になっていますが、実は現場監督向けに提供されているケースがほとんどです。しかし、今後職人が大量に離職する問題を解決するために、業界の大企業は技能者のオートメーション化を図ろうとしています。弊社としても、技能者側にフォーカスしてソリューションを打ち出していきたいと考えています。


建設業はピラミッド構造のため、企業と業務の分断が非常に多く、非効率がそこかしこで見られる業界です。そこで弊社では「デジタルと人々で建設ビジネスに維新を起こす」をモットーに企業と業務をひとつなぎにし、効率的にするべく活動しています。


具体的には建設業界に特化した業務管理のクラウドサービスなどを拡大していく考えで、メインサービスは安全衛生日誌や危険予知活動報告書を作ることができるAI-RKYとCCUS就業履歴です。CCUSとは、国土交通省や建設業界の主要団体が開発中の、建設キャリアアップシステムを指します。


建設業の内勤業務は業務の過程に複数社が介入することが多いことから重複作業になることが多く、情報が相違することもあります。しかし、建設業界は全体的にITリテラシーが不十分なため、サービスが浸透しにくく、ユーザー数が伸びません。そこで非生産業務などを基本的に外部業務委託できるようにするためのサービスを弊社が提供し、導入、運営、管理も弊社で行うことでITの導入障壁を下げて、本業である建設業務に集中できる環境を作ろうと考えています。



--貴社の独自性や強みについてお伺いできますでしょうか


弊社のサービスの強みは大きく3つあります。


・アプリがあることで、操作性を高め、だれでも簡単に入力ができるよう工夫しています。他社のサービスはブラウザを使うものが多いですが、アプリならPC操作が苦手な人でも使いやすいため、サービスの浸透が期待できます。


・本当に現場の人が必要な機能を搭載していることです。私自身が16年間、実際に建設業界に従事していたたため、本当に必要な機能や当事者の気持ちを理解したサービスを設計できます。


・フリーミアムを導入していることでITサービス導入への障壁を下げています。他社サービスは高額な商品が多いですが、そもそもITリテラシーが高くない業界のため、導入しても使いきれるかどうか分からないために導入に二の足を踏む企業が多いのです。弊社はフリーミアムを提供することで差別化を図り、IT化への障壁を下げています。


また、前職の正和工業には全面的にバックアップしていただけますので、すでにつながりのあるネットワークを活かすことができるのも強みです。



魅力を発信し、建築業界の労働人口減少に歯止めを


 

--今後の中長期的な事業展望についてお伺いできますか。


建築業界に魅力を感じてもらえるようなシステムを導入したいです。建設業界で働く人のうち29歳以下の方は10%しかいないのに対し、55歳以上の方が35%を占めます。建設業界に入ろうという若い人が少ないのに、すでにお話ししたように業界から出ていく人は多いのです。そのため、このままでは業界が衰退してしまうという危機感があります。


そこで役立つのが建設キャリアアップシステム(CCUS)です。CCUSでは就業履歴が可視化されますので、業界内でどうやってキャリアアップできるかが見えるようになります。現在は建設業界の事業者の登録率は25%程度ですが、2024年までにはすべての事業者が登録する予定で進められています。

なお、このサービスは民間のサービスを介さなければ登録できない仕組みなのですが、弊社も代行業者の一つとして認められています。


CCUSの導入により、建設業界で働くことに関して不透明であった部分をクリアにし、労働人口の減少を抑え、若者が目標を持って業務に取り掛かれる環境づくりをしていきたいですね。


 

--最後にProfessional Onlineを見ていただいている経営者、決裁者の方に向けてメッセージをいただけますか?


建築業界のインサイダーとのコネクションはもちろんありますが、バックオフィス系のクラウドサービスを提供している会社と繋がりたいと考えています。ゼロからシステムを構築するよりも、すでにある良いサービスを建設業向けにアレンジできれば嬉しいですね。


また、建築業界にはマーケティングという概念が無く、人材採用という側面で見ても知見がありません。業界の未来のためにも、ノウハウがある企業に参入していただきたいと思っています。建築業界の課題解決のため、マーケティングに強い企業で建築業界に興味がある方とアイディアを組み合わせ、協業してサービスを提供していきたいと考えています。
 


-本日はどうもありがとうございました。


 

株式会社FIRST

https://www.first-corporation.co.jp/

 

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