久保 統義(くぼ・のりよし)
株式会社ディー・ディー・エス 代表取締役社長
愛知工業大学工学部卒業後、1987年に株式会社キラ・コーポレーションへ入社。OA担当として従事し、パソコンやLANなどの知識を習得する。1991年に株式会社ジャストシステムへ転職し、名古屋営業所長、システム営業部次長を歴任。1998年にシマンテック株式会社法人事業部長に転職。その後、トレンドマイクロ株式会社エンタープライズ営業本部長、シスコシステムズ合同会社ワイヤレス・セキュリティ営業本部長、クオリティソフト株式会社代表取締役社長を歴任。2015年に株式会社ディー・ディー・エスへ転職し、2019年に代表取締役社長に就任する。
インターネットの普及に伴い、セキュリティの重要性は日に日に高まっています。インターネットは非常に便利なものですが、ひとたび「なりすまし」などの脅威に襲われると、企業であっても個人であっても、大きな損害を被ってしまいます。また、膨大な量のIDやパスワードの管理がしきれないということが、サービスの利便性を損なっているという問題もあります。株式会社ディー・ディー・エスはより高度な生体認証を世に広め、現在のセキュリティが持つ課題を解決するための事業を展開しています。今回は代表取締役社長の久保様にお話を伺いました。
インターネットの普及に伴うセキュリティの重要性
--本日はよろしくお願いします。早速ですが、久保さんの経歴をお聞かせください。
大学卒業後、新卒で地元工作機械メーカーに就職し、OA(オフィスオートメーション)を担当しました。まだITという言葉が使われていなかった頃の話です。そこで、パソコンの知識やローカルエリアネットワークなどについての知識を習得しました。
その後、1991年8月に 株式会社ジャストシステムへ転職。名古屋営業所長、システム営業部次長を歴任しました。ちょうどパソコンやインターネットが、一般に普及しはじめた時代です。その後、私は「これからはセキュリティが重要となる」と感じ、セキュリティソフトを開発しているシマンテック株式会社へ移りました。
シマンテックでは、法人向け・企業向けのセキュリティビジネスを立ち上げ、その後、トレンドマイクロ株式会社でエンタープライズ営業本部長、シスコシステムズ合同会社にてセキュリティ・ワイヤレス営業本部長などを経験しました。
そして日本の企業に貢献したいという思いから、2009年にクオリティグループへ入社。代表取締役社長を経て、2015年に株式会社ディー・ディー・エスに移り、2019年3月に代表取締役社長に就任しました。
生体認証により、より利便性・安全性を高めたい
--現在、株式会社ディー・ディー・エスは、企業向けの認証基盤ソリューションの開発・販売を中心に事業展開されていると思いますが、改めてご説明をお願い致します。
弊社は、官公庁、自治体、企業向けIT環境のセキュリティを強化する、認証基盤ソリューションの開発・販売をおこなうバイオメトロニクス事業をメイン事業とし、指紋認証デバイス装置では10年連続No.1のシェアを獲得しています。全国の市区町村のうち弊社と契約があるのは約33%、販売実績のある市区町村は70%ほどです。
また、クラウドサービスにおけるID・パスワードをなくすための世界標準団体「FIDO Alliance」に日本で初めて入会し、その普及に努め、ビジネスの立ち上げも行っております。
--大変広い範囲で事業を展開されているのですね。セキュリティ事業について詳しくお聞かせください。
最近はネットバンキングなどで、とても大きな資金を動かすという方が増えてきており、セキュリティの重要性が非常に高まってきています。
その流れをうけ、弊社では、新規にスマートフォンなどをターゲットとした指紋認証センサー事業を立ち上げました。令和2年に15億円の資金調達をし、従来の指紋認証よりも、より高度な指紋認証センサーを開発しています。セキュリティのレベルが上がり「なりすまし」などがなくなれば、もっと多くの資金がインターネット上で安全に動かせるようになります。
また、世の中からパスワードをなくし、利便性を上げることを目指す「バイバイパスワードカンパニー」をパーパスとし、PCなどへのログオンや、ネットワーク、アプリ、クラウドへのログイン方法をID、パスワードの認証から生体認証や二要素認証へ置き換えることを進めています。
これが一般に普及すれば、たくさんのIDやパスワードに悩まされることなく、安全で簡単にインターネットを利用できるようになります。そうすることで皆がITをさらに活発に活用できるようになり、日本の経済も潤ってくるのではないかと思っています。
具体的な例をあげると、佐賀県の地方独立行政法人佐賀県医療センター好生館様では、弊社の認証基盤ソリューションを利用することで、機密情報もリモートで安心して扱えるようになり、コスト削減や医療従事者の業務の効率化、労働環境の改善などのメリットを感じていただいています。
--貴社の独自性や強みについてお伺いできますでしょうか。
弊社のメイン事業である認証基盤の強みは、認証に必要な「知識」のパスワード、「所持」のワンタイムパスワード、ICカード(FeliCaやマイナンバーカード)、そして、「生体」の指紋、指静脈、てのひら静脈、顔の各要素をand・orで自由に組み合わせて使えることです。
現在は、非接触で認証が可能で、常駐監視や覗き込み防止などの対策もできる顔認証が注目されています。従来の顔認証は、周りの明るさなどに影響されやすく、使い勝手があまり良くなかったのですが、弊社の顔認証は絶対に失敗しないとお褒めの言葉をいただいています。
また、汗孔を利用した指紋認証の研究開発も現在進行中です。一時期Vサインの写真をSNSにアップするだけで指を偽造され、悪用されてしまうということが話題となりました。しかし、汗孔までは写真に映らないため、汗孔を利用した指紋認証を突破できるような造指を作るのは不可能です。
最近はスマートフォンでネットショッピングやバンキングなどお金に直結する操作が普及しており、強固なセキュリティが求められていますが、汗孔を利用した指紋認証は、なりすましの脅威を解決する開発だと考えています。
日本企業発展のために必要なDX化に貢献したい
--今後の中長期的な事業展望についてお伺いできますか。
SDGsの17のゴールに加えて「バイバイパスワードカンパニー」をパーパスとして社会に貢献していきたいと思います。我が国が目指すSociety5.0では、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させることが必要です。この際、なりすましなどは絶対にあってはならないものです。
私たちは、その空間の融合で本人性を担保するためには、生体認証は最も重要な要素だと考えています。そこで、弊社が開発している、汗孔を活用した認証技術で我が国の発展に貢献していきたいと思っています。
またそれを実現するためには、汗孔認証技術の確立が不可欠ですが、すでに基礎技術開発は東京大学との産学連携で2018年に成功しています。特許の取得、大量生産に向けた資金調達も終え、あとは具体的な製品開発を行い実用化するのみの状態です。
多くの人々が安心安全にITによる恩恵を得られる日が、もう少しで実現できると思っています。今後も、社員の皆様や販売パートナー、アライアンスパートナーの皆様、ユーザーの皆様、株主の皆様、そして関わる全ての方々に感謝をし、全身全霊で事業に取り組んでいます。
--最後にProfessional Onlineを見ていただいている経営者、決裁者の方に向けてメッセージをいただけますか?
我が国の企業価値は、30年前と比較して世界のなかでも大幅に遲れをとっています。私は、それはDX化の遅れが最も大きな理由だと考えています。
DX化には様々な課題があると思いますが、本人認証もその一つです。この課題に向けて弊社の認証技術を用い、皆様のDX化に貢献していきたいと思っています。
ぜひ、一緒に企業価値の増大の為に汗を流させていただけませんか?
--本日はどうもありがとうございました。
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