五十嵐 幹(いがらし・みき)
株式会社クロス・マーケティンググループ 代表取締役社長兼CEO
デジタルマーケティング業界は急速に発達し、今では現代社会のあらゆる企業にとって必要不可欠な存在となりました。インターネットリサーチ業界の立ちあがり始めた21世紀の始まりにいち早く潜在的価値を見出し、今では生活者理解・消費行動の分析に関するデータを組み込んだマーケティングソリューションを提供する株式会社クロス・マーケティンググループ、代表取締役社長兼CEO五十嵐様にお話を伺いました。
ベンチャーキャピタル業界で培った知見を生かして独立し、苦難を乗り越え経営の安定化へ
--まず初めに、五十嵐様のこれまでの経歴についてお聞かせいただけますでしょうか。
大学時代から起業したいという思いがあり、起業の仕方について勉強していましたが、正直暗中模索の状態でした。当時はまだインターネットビジネスが発達しておらず、携帯電話やパソコンが普及し始めるなどIT化に向けた準備が進んでいる段階だったのです。
そんな中、偶然ベンチャーキャピタルという業界を目にして、当時学んでいた経済学の知識を応用できそうな業界であったこと、日本での事業展開において潜在的可能性があると感じたことなどから、飛び込んでみることにしました。
その後4年間働く中で、たくさんの経営者の方とお会いしたり、多くのビジネスモデルに触れたりするなど、非常に有意義な時間を過ごすことができました。何千人の方と会う中で、お金の使い方、人との付き合い方、経営に関する考え方、直感を磨くことができ、ビジネスにおいて頼られる人とそうでない人がわかるようになりました。
世間でも次第にネット企業に対する投資が盛んになり、自分の中で新たな事業の方向性が生まれ始めていたこと、日本アジア投資株式会社等から刺激を受けたことなどが重なり、2000年にインターネットビジネスを展開する会社を事業会社3社で設立をすることとなりました。
--ありがとうございます。そこから2度目の起業を決意するに至った経緯についてもお聞かせください。
2000年から2003年まではネットバブルとはいえ通信環境やネットビジネスの黎明期、アナログビジネスが主流の時代でしたから、経営は大赤字でした。莫大な資金を使って作ったメディアも消費者から一定の評価を受けたものの、ビジネスとして成り立たせるには厳しいものでした。
そこで改めて収益基盤を確立するという目標を掲げ、社内の総力を上げ新規事業をいくつも立ち上げることになりました。
この時期に当時の社長や会長からの「海外ではインターネットリサーチが立ち上がってきているらしいね」という一言をきっかけにインターネットビジネスを立ち上げることになりました。しかし、社内ではメディア側の赤字が大きすぎて、追加の資金を確保することが難しかったため、独立してクロス・マーケティングを設立することにしました。これが2社目設立までの経緯になります。
その後はよりニーズにあった調査を行うため、アンケートに回答してもらうモニター数を確保する観点から、大規模な会員を保有しているネットメディアとの連携や、大手の代理店と連携して安定して仕事が入ってくる仕組み作りをしていきました。
消費者アンケートと行動データを組み合わせ、消費者の姿をより鮮明に
--貴社が軸とする事業の詳細について改めてお伺いできますでしょうか。
当社ではデータマーケティング事業、インサイト事業、デジタルマーケティング事業と大きく分けて三つの事業を行なっております。概要を説明すると、リサーチによる生活者理解を起点に、課題解決に向けたコンサルテーションを行ったうえで、必要に応じてシステムインテグレーションと、その後の保守・運用、さらには、顧客増加のための販促まで、マーケティングソリューションをフルラインで提供することができます。
他社と異なる点としては、顧客の幅広いニーズに応じた細かな対応です。
当社はマーケティングリサーチを起点に操業を開始したため、多くの消費者のインサイトの理解や消費者のデータベースを保有しています。それらを活かしたマーケティングDXを提供することで、クライアントの方々のニーズに正確に応えることができます。
消費者の意見を集めるチャネルに関しては自社インフラで揃えており、データ分析を行う専門職のリサーチャーの数は業界最大規模となります。したがって大規模な消費者アンケートや、現地調査を行なってデータを集めるだけでなく、行動の心理的背景についても分析を深めることができます。
当社はこのように「消費者のなぜ」を解明した上で一貫したマーケティングソリューションを提案できる体制が整っていることが大きな強みとなっています。
--ありがとうございます。続いてインサイト産業についても需要増加の背景や、貴社独自の取り組みについて改めてご説明いただけますでしょうか。
デジタル技術の発展に伴い、インサイト事業についての需要は増加しています。
従来アナログで管理されていた情報がデータベース化されたことで、扱うことのできるデータ量が増え、マーケティング課題を総合的にとらえたトータルデザインが可能になったのです。
消費者調査というと、アンケートなど消費者の声を聞くというアナログのイメージが強いですが、消費者の行動履歴やデータ、CRM等を統合しないと、正確な分析はできません。要するに、マーケティング部門だけでなく、販促部門、システム部門など異なる部署が保有するデータを統合して判断しないと、正しい消費者の姿は分からないのです。
上記の課題はデータサイエンティストが解決できるように思えますが、しかし、従来データサイエンティストはエンジニア出身者が多く、消費者の声を理解する経験が少ないと考えられてきました。そこで、当社ではリサーチャーのデータサイエンティスト化を進め、彼らの強みを消費者行動の分析に活かせるような育成やシステム構築を進めています。
同時にクライアントが保有する行動データを取り扱う事業も立ち上げ、BIツールの導入支援なども進めています。つまり、インサイト産業がデジタル化していくことに対応し、これまでの概念を拡張していくことでマーケティングDXソリューションの提供を手掛けています。
事業主のあらゆる挑戦を支援することを通じて、社会により良いものを届けたい
--サービスの提供を通して実現したい世界観や今後の展望をお聞かせいただけますか。
まずは一種の社会貢献として成功者の数を増やしたい、という思いがあります。誰かの挑戦が成功し、みんなを幸せにする良いものが世の中に出回るというプロセスを支援するのがマーケティング支援会社の役割であり、そのために「提供できること」を増やしてより厚い支援ができるような会社に成長したいと考えています。
未来をより良いものに変えるためには単なるリサーチやデータの収集だけではなく消費者のインサイトを深く掘り下げ、実行支援をする必要があります。当社に任せれば絶対成功できる、と多くの方に信頼してもらえるような会社を目指しています。
--ありがとうございます。最後にProfessional Onlineを見ていただいている経営者、決裁者の方に向けてメッセージをいただけますか?
当社はデータリサーチと分析に基づいたマーケティングソリューションを提供することで、クライアントの課題を克服するとともに経営効果を最大化することができます。インサイト事業にも力を入れているため、経営に関してより精密な生活者理解・消費者データに基づく情報をお求めの企業様、マーケティングに課題を抱えている企業様がいらっしゃいましたら是非ご相談ください。
--本日はありがとうございました。
株式会社クロス・マーケティンググループ
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