大濵 裕貴(おおはま・ゆうき)
株式会社クルイト 代表取締役
1991年山口県生まれ。明治大学在学中に、中国でクリニックの立ち上げに参加したのち、自ら起業するため大学を中退。カンボジアで高級スパを開業する。カンボジアで貧困や教育格差などの社会問題に直面し「教育を通して、社会問題を解決する人をつくる」ことを決意して帰国。学習塾を運営する株式会社イトグチや、子育てや教育のインターネットメディアを運営する株式会社Cluexを立ち上げた。2018年、2社を束ねる株式会社クルイトを設立する。
教育産業は、学習塾、予備校、通信教育、語学教室など多岐にわたります。その市場規模は2021年度で約2兆8,000億円。少子化の中でも子供1人当たりの教育費は上昇傾向にあり、市場は緩やかに拡大している状況です。そんな教育業界でITとリアルの両面から事業を展開しているのが株式会社クルイトです。「教育業界をアップデートさせる」という、株式会社クルイト代表取締役の大濵様に、その原点と将来のビジョンをお伺いしました。
情熱を持つ「人」を育て、社会課題の解決を目指す
--本日はよろしくお願いします。早速ですが、大濵さんが起業されたきっかけをお聞かせください。
高校時代から「世の中を変えるような経営者になりたい」と思っていました。ですが、特に何がやりたいという具体的なイメージは見えていなかったです。そこで、大学入学後に様々な企業でインターンシップをして、ビジネスの現場で学びを得ていました。
新しいビジネスを立ち上げるには0から1を作り出さなければならず、そのノウハウを学びたいと考えていました。そんな時に、知人が中国の大連で現地の日本人向けのクリニックを立ち上げると聞いて、すぐに参加させてほしいとお願いしました。0から1を作るところを、この目で見ることができると考えたからです。
そこで大学を中退して、中国へ渡りました。大連では、異国の地で事業をどう立ち上げて軌道に乗せていくのか、自分の知りたかったことを学べたと思います。
次に、今度は自分1人でビジネスを立ち上げてみようと考え、カンボジアで日本人観光客向けのエステ事業を始めました。当初は苦労もありましたが、カンボジアでのエステ事業も軌道に乗せることができました。
そのカンボジアの地で実感したのが、日本との格差です。日本では誰もが当たり前に受けられる教育を、十分に受けられない子どもたちがいる。頭では分かっていましたが、その現実を目の当たりにしてショックを受けました。そこで「社会問題を解決するビジネス」をやろうと決意したのです。
世界には、様々な社会問題がありますが、どのような問題であっても、解決できるのは「人」に他なりません。そして、人を作るのが教育です。そこで帰国し、未来の社会課題解決に向けて教育ビジネスで起業することにしたのです。
--教育ビジネスの原点がカンボジアにあったわけですね。では、帰国されてからは、どのように教育ビジネスを行ってこられたのでしょうか。
2013年に株式会社イトグチを立ち上げて、まずは高校生を対象にした塾の経営を始めました。また、ITを活用して教育格差をなくしていきたいと考え、2014年には、株式会社Cluexを設立しました。Cluexで始めたのは、近い将来、子どもの教育に向き合う若い母親のためのインターネットメディアの運営です。
そして2社のシナジー効果を最大限にするために、2018年、株式会社クルイトを立ち上げて、イトグチとCluexを統合してホールディングス化しています。
--クルイトという社名は、Cluexとイトグチを合体させたものだったのですね。
それもあります。ですが、クルイトにはもう一つの意味があります。それは「狂い人(クルイビト)」です。
こういうと怪訝そうな顔をされる方もいますが、私は山口県の出身であり、同郷の吉田松陰が大好きで、松陰が残した「諸君、狂いたまえ」という言葉に強い影響を受けています。この言葉には、狂人のような一心不乱な熱狂が世の中を変えていくという意味が込められているのです。
私は今も毎年、松陰神社にお参りに行きます。行ってみるとわかりますが、松下村塾は長州の片田舎の小さな村にありました。そこから高杉晋作、伊藤博文、山県有朋といった近代日本の礎を築いた人々が現れたのです。彼らは、まさに狂ったかのような情熱で明治維新を成し遂げました。社会問題を解決するには、そうした情熱を持った人材を育てることが必要だと思うのです。
世界の社会問題を解決するための3つの事業
--現在、貴社ではどのような事業を行っているのでしょうか。
教育で「世界の社会問題を解決する」ことを目標に、様々な事業を展開しています。現在、注力しているのは、次の3つの事業です。
1. オンライン学習塾:キミノスクール
「キミノスクール」は、自分で未来を切り開いていける、自律した子供を育てることに特化した学習塾で、オンラインで中学生を対象に授業を行っています。
一般的な塾と異なるのは、「子供たちが自分で決める」ことを重要視しているところです。私は、子どもたちが「人生の目的」を持つことが重要だと考えているので、これまでの学習塾の概念とは異なる、新しい学習塾の姿を追い求めています。
2. 子育て総合メディア/アプリサービス:ままのて
「ままのて」は子育てに悩むすべての方へ寄り添うために運営されているアプリです。妊活・妊娠・子育てに役立つ情報メディアというスタイルを確立していて、業界最大級のママメディアに成長しています。
「ままのて」によって、若い母親が悩みを解消できれば、子育てを楽しめるようになります。子育てを楽しむ気持ちでゆとりを持って、子どもと接することができるようになれば、子どもの教育にもいい影響を与える好循環が生まれると考えているのです。
3. 全国の学習塾プラットフォームサービス:塾み〜る
「塾み〜る」は全国の小中高生や保護者の方と、学習塾を繋げるマッチングサービスです。全国の学習塾に「塾み〜る」へ情報を掲載していただくだけでなく、クルイトがこれまでに得た学習塾の経営ノウハウを活かして、その学習塾が成長できるような提案もしています。
この3つ以外にも「武田塾」という、高校生向け受験予備校のフランチャイズを運営しています。「日本初!授業をしない武田塾」という看板を掲げているのですが、授業を聞くだけではなく、やってみることで初めて習得できることを大切にしている塾です。キミノスクール同様、自律した子どもたちを増やす一助になると考えています。
--クルイトの強みとは、どのようなものでしょうか?
クルイトの強みは、創業時から力を入れているデジタルマーケティングだと思います。
教育産業は、まだまだレガシーな世界で、あまり効率的にデジタルマーケティングを行っているところがありません。そんな中で、クルイトではデジタルマーケティングを戦略的に用いて、早くからYouTubeやTikTokで発信を開始して、現在は業界最大級のフォロワーがいます。
「ままのて」も、業界最大級のママメディアに成長しています。ユーザーの母親の子どもは、やがて学習塾に通ったり、オンラインで勉強したりするようになるでしょう。そうした中長期的なデジタルマーケティング戦略を行っていくことで、オンライン学習塾市場のナンバーワンになることを目指します。また、その影響力は、対面式の塾のようなオフライン市場にも及んでいくはずです。
ビジョンは「教育のアップデート」
--大濵さんの考えるクルイトの未来像とはどのようなものでしょう。
私たちのミッションは、あくまで「世界の社会問題を解決する」こと。そのためのビジョンが「教育業界をアップデートする」ことです。古い体質も残る教育業界で、ITの力を活用して、カリキュラムやマーケティング、営業やバックオフィスのアップデートを行って、教育者が21世紀に必要な教育に専念できる環境を作りたいと考えています。
そうして、自分の人生を自分で選択できる自律した子どもたちを増やしていく。そして、その子どもたちが、それぞれの分野の課題を解決していくようになれば、世界の様々な場所で社会問題を解決に導いていけるのではないでしょうか。
--最後にProfessional Onlineを見ていただいている経営者、決裁者の方に向けてメッセージをいただけますか?
クルイトは、教育現場のアップデートによって社会課題を解決できる人材を育てたいと考えています。これまでの経験から、私たちには多くのファミリーデータがあります。そうしたデータを活用して、共に子育て・教育のアップデートを行っていけるような企業様は、ぜひお気軽にご連絡ください。
--本日はどうもありがとうございました。
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