小原 亦聡(おはら・いそう)
株式会社Brillar 代表取締役社長
京都大学を卒業後、同大学院で経営学修士(MBA)を取得し、外資系の証券会社に入社。その後、外資系の証券会社に移籍をし、在職中にモアサナイトジュエリーブランド「Brillar」を立ち上げ、代表取締役に就任する。
ダイヤモンドを超える輝きと高い耐久性を兼ね備えた人工宝石「モアサナイト」。アメリカでは婚約指輪として選ばれることも増えている、次世代のジェムストーンです。日本で初めてモアサナイトを用いたジュエリーブランド「Brillar」。個人事業から法人を設立し、現在も躍進を続ける「Brillar」の代表取締役社長を務める傍ら、私生活では2児の母親でもある小原様にお話を伺いました。
自分自身で独立し会社を立ち上げたいという強い思い
--本日はよろしくお願いします。早速ですが、小原さんのご経歴についてお聞かせください。
大学院を卒業し、外資系の金融機関に就職をしました。ですが、金融に骨をうずめる考えは当初からなく、面接時から数年後には独立し、自身の会社を立ち上げたいとしっかりと主張をし続けていました。
当時は独立に対する熱意はありつつも、具体的にやりたいことのビジョンがあるわけではありませんでした。金融機関で何年か働いた後に自身のビジネスとしてやりたいことを見つけ、独立ができればという風に考えていました。
そんな中、在職中に「モアサナイト」という人工宝石に出会い、モアサナイトのジュエリーブランド「Brillar」を立ち上げたところ、大変評価していただき人気を集めることができました。同時期に夫の勤務の都合上、金融会社を退職することとなり、退職を機に「Brillar」を法人化し、現在に至ります。
--モアサナイトとの出会いをお聞かせください。
在職中にとあるホームパーティですごく大きなダイヤモンドの指輪をされている方を見かけました。今までは人並程度にしか宝石に興味がなかったのですが、その時に初めて自身も欲しいと感じ興味を持ちました。
家に帰り、ダイヤモンドの値段というものを調べた時に、改めてその金額に驚きを感じました。小さいものであってもとても高額なことを不思議に思い、いろいろと自分なりに調べてみることにしたのです。調べていくうちにダイヤモンドはその価値が人工的にマーケティングされていたり、需要と供給のバランスがコントロールされ、価格が高額になっているという事実を知りました。
背景を知れば知るほどダイヤモンドには本当に価格に見合った価値があるのかと疑問を感じるようになりました。
ダイヤモンドの価値に疑問を感じたことから、同じような綺麗な石が他にはないのかと、調べてみたのです。そんな中、2017年頃、アメリカでモアサナイトという人工の石が婚約指輪の素材として流行りつつあるということを知りました。
それまでは婚約指輪の素材といえばダイヤモンドとされ、確固とした地位を築いていました。他にも魅力的な鉱石はありましたが、たとえばジルコニアは硬度が低い、ラボグロウダイヤモンド(人工ダイヤモンド)はダイヤモンドと同等の素材であるものの、やはり高価であるなど、ダイヤモンドに及ぶ素材は無く、その地位を脅かすことはできていませんでした。
しかしモアサナイトという人工宝石は輝きがダイヤモンドの2.5倍、耐久性は同等で、価格相場が同程度のカラットの1/10以下であり、既に海外で婚約指輪の素材の選択肢として注目を集め、流行り始めていました。モアサナイトとはどのようなものなのか興味を持ち、すぐに自身で身につけるために輸入をしました。そして身につけてその魅力を強く感じ、モアサナイトの魅力を多くの人に感じ取ってもらいたいと考えたのです。
人工宝石モアサナイトを用いたジュエリーブランドを展開
--モアサナイト専門のジュエリーブランドを運営されていますが、改めてご説明をお願い致します。
「Brillar」(ブリジャール)というモアサナイト専門のジュエリーブランドを運営しています。
モアサナイトは地球に落ちてきた隕石の衝突跡から発見された宝石です。ダイヤモンドの2.5倍ともいわれる、地球上の宝石のなかで最高峰の輝きとクリアな美しさ、優れた耐久性を持つ新しいジェムストーンです。天然のモアサナイトはとても貴重で珍しいものなので、宝石としては出回らないのですが、科学者たちの功績により人工的に作り出すことに成功し、1998年に米国企業が販売を開始しました。
メインターゲットは、20~50代の女性です。ウェディング系の需要が高く、全体の売上の3~4割を占めており、そのほか、自身へのご褒美、贈答などのギフト関連のニーズにも需要が出始めています。
オンラインショップをメインとしていたのですが、2018年に銀座にショールームを開設し、2021年の6月末には大阪にもショールームをオープンしました。直営店として運営しているのは東京と大阪の2店舗になりますが、名古屋にも実際に商品を手に取って見ていただけるサロンを開設していますので、是非その目でモアサナイトの輝きを体感して頂きたいです。
--貴社の強みや独自性についてお伺いできますか
当社は2017年の段階でモアサナイトの魅力に気づき、同年1月から日本で初めてモアサナイトの取り扱いを始め、その実績を多くの方々に評価して頂いています。2021年時点で、延べ5,000人近いお客様にご利用いただいており、人工宝石業界ではトップクラスであると考えています。
ブランドの創設から5年経過し多くの方にご利用いただいたことにより、お客様からのお声やご意見が蓄積されておりますので、そういったお声を商品の改良や開発に反映し、日々商品の質の向上に努めています。そうすることによって、実用性が高く、お客様の生活により寄り添ったジュエリーを作り続けることができています。
また、当社はSNSにも力を入れており、当社のSNSを見たお客様からはおもしろい・見ごたえがあると高評価をいただいております。
当社の特徴として、新しいデザインや商品の開発のスピードが非常に速いという点があります。制作をしている自分たちがワクワクするということを大事にし、それを絶え間なくお客様に提供する。また、お客様からの声を敏感にキャッチし、デザインへと反映させていく。常に情報をシェアできることを心がける、お客様を飽きさせないということにフォーカスしている点も大きな強みであると考えています。
ジュエリー×テクノロジーの分野にもビジネスを展開させていきたい
--今後の中長期的な事業展望についてお伺いできますか。
現状は人工宝石の販売という下流の業務を行っていますが、いずれは人工宝石の製造といった川上の分野にも進出をしたいと考えています。
2021年6月25日には、モアサナイトの新たな製造方法に関する特許も取得いたしました。現状でも、モアサナイトの製造エネルギーは人工ダイヤモンド(ラボグロウダイヤモンド)と比較して1/100以下という環境に優しい人工宝石ですが、既存の合成方法に比べてさらに環境負荷やコストを抑えることができるような製造方法です。半導体研究の世界的権威でもある京都大学 大学院工学研究科の木本 恒暢教授にご協力いただき、引き続き実用化に向けて研究を進めております。
モアナサイトは人工ダイヤモンドと比較をすると優れている点がたくさんあるにも関わらず、知名度はまだまだ及ばない現状があります。モアナサイトの知名度をもっと高め、ゆくゆくは婚約指輪のシェアの3~5割をモアナサイトが占めるようになっていければと考えています。
--最後にProfessional Onlineを見ていただいている経営者、決裁者の方に向けてメッセージをいただけますか?
今後弊社ではジュエリーテックの分野にも事業展開をし、下流だけではなく上流に対してもビジネスを展開していきたいと考えています。
モアサナイトを始め、【ジュエリー×テクノロジー】というキーワードに関心をお持ちの方がいらっしゃいましたらぜひお声がけください。
--本日はどうもありがとうございました。
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