鴨林 広軌 (かもばやし・ひろき)
株式会社Arent 代表取締役社長
京都大学理学部数学科卒業。MUFGのファンドマネージャーとしてビックデータ解析による株式・債券投資に従事。その後、GREEにてBIシステム構築を経て、新規ゲームの開発を担当する。「Cubic Tour」は全世界300万ダウンロードを記録した。株式会社Arentの前身であるCFlatにジョイン、現在に至る。
現在、多くの業界がDXの取り組みを進めていますが、国内でのDX成功事例はあまり多いわけではなく、今後のさらなる推進が期待されています。しかし、DXに関わる人材は不足しており、推進にあたっての大きな壁となっています。そのような中、業界のトップエンジニアたちが集い、「ZERO START, FULL DRIVE.」を掲げ事業を展開する、株式会社Arent代表取締役社長の鴨林様にお話を伺いました。
大学時代、投資ビジネスに興味を持つ
--本日はよろしくお願いします。早速ですが、鴨林さんが起業されたきっかけをお聞かせください。
京都大学理学部数学科を卒業した後、MUFGのファンドマネージャーとして働きました。もともと起業したいという思いがありましたので、業界のことを知るために入社しました。
MUFGを退職後、GREEに転職しました。GREEでは初めて製作したゲームが300万ダウンロードを達成し、新規事業立ち上げに自信をつけることが出来ました。その経験を踏まえて、起業をするに至ります。
--起業を志すようになったきっかけはありますでしょうか。
大学時代に、自分が本当に学びたいことを考えた経験をきっかけに、起業を意識するようになりました。大学では数学科で学んでいましたが、数学科で同じように学んでいる学生には浮世離れした人が多い印象でした。
アカデミックな方向に進む人が多く、起業したいという人は他にはいませんでした。私も同様に、始めはアカデミックなことがしたいという思いがありました。
しかし、数学を勉強していくうちに違和感が生じてきたのです。数学のように抽象化された概念を自分は本当に学びたかったのか、本当に学びたいことは違うのではないか、と思うようになりました。
そもそも数学を学び始めたきっかけは、「シンプルなルールで世の中を理解したい」と考えたためです。数学は物事をシンプルに理解するためのツールです。ただ、本当に学びたかったのは、人の動きや人の考え方であることに気が付きました。
理解したい対象が数学ではなく人間だったのです。人について学ぶのならビジネスを理解したいと思い、投資やビジネスについて学び始めました。その頃、特に影響を受けたのは、ウォーレン・バフェットとピーター・ドラッカーの本です。彼らの本を読みながら、ビジネスについて学んでいく中で起業したいという考えを持つようになりました。
DXをゼロから最後まで、それを実現する数学力と実装力
--現在、展開されている事業について、改めてご説明をお願いいたします。
「ZERO START, FULL DRIVE.」を掲げ、DXをゼロから最後まで推し進める会社です。
例えば、「PlantStream®」というシステムを作成しています。これはプラントの配管設計を行うシステムなのですが、従来通りの方法だと1.5か月程掛かるところを、このシステムを使えば約22秒で出来てしまいます。
プラントは、非常に有機的に様々な危機が結びついたプロダクトなのですが、その結びつきを表すのが配管です。これをいかに綺麗に、いかに効率よく結ぶかということが重要な課題になります。そういった作業には、熟練の方の技術が生かされています。それをいかにシステムに落とし込んでいくかを追及し、熟練の方々のノウハウや暗黙知を実装するということを当社では行っています。
当社は、こういったプロダクトの開発はコンサルティングから始まっています。まずは、コンサルティングから入った後、当社で提供できるプロダクトを提案します。良いプロダクトができれば、ジョイントベンチャーを作り、外部に販売していくといったことまで行っています。
--貴社の独自性や強みについてお伺いできますでしょうか。
コンサルから開発、事業立ち上げまでやるのが特徴の1つです。また、業界の深い知識、それを数学で実装するのが強みです。数学力も強く、実装力もあるメンバーが揃っています。
数学力の高さはメンバーを見ていただければ分かると思います。AIが苦手とすることも含めて、熟練の職人の頭の中にあるノウハウを高いレベルで実装することができます。
DXを推し進めながらDX人材を育成する
--今後の中長期的な事業展望についてお伺いできますか。
Arentのミッションは「高度な暗黙知をモデル化・システム化し、誰もが巨人の肩の上で楽しく働ける世界にする」ということです。「高度な暗黙知」を自ら作成する自社プロダクト、クライアント様と協力して作成するジョイントベンチャー、クライアント様の本質的なDXを行う受託ビジネス、という3つの軸で進めていきます。
中長期的には自社プロダクトが多くなっていきますので、キーエンス様のような組織が理想です。自社の属するドメインを圧倒的な解像度で理解しつつ、どの会社も作れないニッチトップなプロダクトを量産する企業様が目標です。
--最後にProfessional Onlineを見ていただいている経営者、決裁者の方に向けてメッセージをいただけますか?
日本の新規事業開発の現場にはICT人材が不足している現状です。ITC人材の日本とアメリカの比率は1:4です。ベンダー企業の場合にはアメリカと比べてもあまり変わりませんが、ユーザー企業においてのICT人材が少ないです。それが、なかなかDXが進まない要因の1つとなっています。
デジタルビジネスを立ち上げるにしても人材が少なく、知識のない担当者が不安を抱えながら行っているケースが多いです。そこに当社が加わることで、プロダクトや資料を担当者の上長の方に渡し、企業の事業開発チームをスタートアップ化させていきます。それによって、当社が企業の事業開発チームに加わることで、DX人材が育っていきます。
結局、スタートアップのノウハウを理解することが大切ですので、それを伝えています。DXを進めながら人は増えていくのが弊社の強みなのかなと思います。
デジタルビジネスの立ち上げに際して悩みを抱えている方がいらっしゃいましたら、ぜひお声がけください。
--本日はどうもありがとうございました。
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