羽生 武史 (はにゅう・たけし)
株式会社アジアブリッジパートナーズ 代表取締役
1992年株式会社TKCへ入社し、中小企業の経営支援に従事。2011年から在籍した株式会社ブロードリーフでは、アジア各国での事業を立ち上げる。30年近い会社勤務の中、経営トップに近いポジションでの経験を活かし、2020年4月株式会社アジアブリッジパートナーズを設立し独立する。培った知識と経験を生かし、産業におけるアジアとの架け橋に貢献。
IT業界との結びつきが強まり、100年に1度の大変革と言われる自動車産業。IT企業が注力している次世代の自動車開発と、日本産業界の課題である労働力を結び、アジアとの架け橋を構築する企業があります。今回は、トップのポストに在籍していたノウハウを基に新会社を立ち上げた株式会社アジアブリッジパートナーズ 代表取締役の羽生様にお話をお伺いしました。
30年近い会社勤務で培った経験と知識を武器に起業
--本日はよろしくお願いします。早速ですが、羽生さんが起業されたきっかけをお聞かせください。
大学卒業後、大手の情報処理会社に勤務して、その後自動車関連のITサービス会社に転職しました。そこで得た知識を活かし、2020年に会社を設立しました。
前職の2社には、それぞれ20年と10年勤めていたため、経営トップに近いポジションで企画立案や戦略実行人として従事した経験があります。特に自動車関連のITサービス会社においては、海外事業の立ち上げに従事していました。
前職で得たそれらの知識経験を基に、自動車に3万点以上搭載されている部品のデータベースの開発を手掛ける会社を設立するに至ったのです。きっかけとなったのは、インドネシアのジャカルタにおいて、自動車部品の流通プラットホームの開発を受託したことです。
その理由としては、Eコマースで自動車の補修部品を流通させるために必要なデータベースを作る技術を弊社が持っていたことによるものです。
また、前職でASEAN事業を経験したことからASEAN、特にタイバンコクにて自動車部品卸の方々との協業プロジェクトを行い、サービスの提供をしています。日本においても、部品の流通分野に貢献しようということになり、今年の7月から新しいサービスにもトライし、新規のユーザー獲得に注力しています。
在日外国人留学生や就労者などの支援で、アジアとの架け橋を
--現在、自動車関連のITサービス事業を中心に事業展開されていると思いますが、改めてご説明をお願い致します。
自動車のメンテナンス時に必要となる部品を特定するためのデータベース開発を行っています。ASEAN地域は日本産の車両の流通が非常に多いことが特徴です。また、日本では新車は平均して15年ほどで廃車となりますが、ASEAN地域は何十年と乗るため、必然とメンテナンスが必要になります。そのような場面において弊社のサービスが活用されています。
--自動車業界向けの新事業も展開されているとのことですが、そちらについても詳しくお伺いできますか。
外国人就労者や留学生を支援する企画を立案しています。2020年は自動車産業において、100年に1度の大変革と言われていました。
現在の日本では就労を希望する若者、また日本で勉強している留学生が就職を希望しても、環境が整っていないのが現状です。そこで、就職難民を支援できる事業を昨年から企画立案しています。
--具体的にはどのような支援を行っているのでしょうか。
インドネシアやベトナムなどの機械工学系エンジニアの方を対象として、日本の企業に就労ビザを発行していただき、高度人材紹介・支援をしてもらうといった支援を行っています。
しかし、弊社の業務は人材を紹介する事業ではないので、現地での人材紹介会社とパートナーシップを組んで、事業全体を進めています。
また、日本で就業した際に、ITサービスを通して就業のサポートや働きやすい環境を提供したいと考えています。現在、日本にある技能実習生制度は、5年の就労ビザを取得して就業した後、必ず帰国しなければなりませんが、その枠を超えて長期雇用を目指す方のためのサービス提供を目指しています。
--こちらの事業を始められたきっかけは何かありますか?
中小企業において、高度エンジニアと呼ばれる高度な技術を持った人材を採用することが難しい現状を知ったことがきっかけです。
その理由として最も大きいのは、認知度の低さです。海外の就労者が日本で就職活動をする際に、TOYOTAさんのような大手企業と知り合う機会は多くあるものの、スタートアップや中小企業と触れる機会はめったにありません。そのため、採用不採用以前にそもそも就労者からの応募がないのが現状です。
そういった現状を変え、文字通り架け橋のような存在になるべく、この事業を開始しました。
--ありがとうございます。貴社の独自性や強みについてもお伺いできますでしょうか。
創業して間もない会社ですので、様々なことにスピード感を持ってトライできることが強みです。幸いなことにアジア各国、具体的には中国・タイ・インドネシアなどで事業パートナーに恵まれています。
そういった点で、自動車関連に役立つ自動車部品というコアなサービスのノウハウを、会社のメンバーが持っていることが独自性であり強みだと思っています。
--逆に、課題と感じられている点はございますか。
これから増資やパートナーシップの開拓を含め、もうひとつスケールアップした会社にしていきたいです。基盤を作り上げた上で、2030年を目処にそれらをさらに伸ばしたいと思っています。
--どのような企業とパートナーを組みたいとお考えでしょうか。
規模ではなく、同じ理念・同じ目標をコミットできるパートナーが理想です。日本社会のみならずアジアの発展や、自動車関連のサプライチェーンの構築などを目標に、長く信頼関係を保てるパートナーを作りたいと思います。
大きく変革する2030年に向けて、社会に貢献できる会社へ
--今後の中長期的な事業展望についてお伺いできますか。
自動車部品検索エンジンのサービスとして、独自で構築したデータベースを用いた、自動車と部品の紐づけを行うアプリケーションの提供を考えています。データベースは、アジアのパートナー企業にAPIをライセンス提供し、世界対応を進めて行く予定です。
また、2030年までに新しい事業において、外国人の長期雇用や安心できる生活を提供することで、真のダイバーシティの実現に貢献していきたいと考えています。理念としてはSDGsに賛同しており、環境を大切に持続できる会社でありたいです。
特に自動車産業はEV化などの変革期であり、2030年には自動車産業が大きく変わっていると思います。そのような変革にも貢献できるような会社へ成長していくことが弊社の未来像です。
--最後にProfessional Onlineを見ていただいている経営者、決裁者の方に向けてメッセージをいただけますか?
現在、日本には300万人の外国人労働者がいます。分かりやすく例えると、広島県の人口と同じ規模ということになります。これから日本はますます高齢化が進み、外国人の労働力が必要になってくるでしょう。
今後の日本経済は優秀な人材確保が切実な課題となります。人材なくしてイノベーションは生まれませんから、積極的に外国人労働者を採用していくことが不可欠です。弊社では特に人手不足が深刻な中小企業への紹介に注力したいと考えています。ご興味のある方や、同じ志を持つ方がいらっしゃいましたら、是非一度お話させてください。
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