古居 弘道(ふるい・ひろみち)
株式会社ACD 代表取締役 兼 CEO
株式会社光通信にて日本市場でのモバイルの普及に携わり、モバイルとインターネットの時代が来ることを感じた。その後独立し、韓国大手銀行の多通貨クレジットカード決済(マルチカレンシープライシングサービス)の立ち上げに参画。その後は、2016年ANAホールディングスとの合弁会社ACDの立ち上げに執行役員として参画。2020年同社のEBOを実施、同社の筆頭株主であるCX株式会社の代表取締役 兼 株式会社ACDの代表取締役CEOに就任。
ここ数年、市場が急激に大きくなっている中国市場。今では世界経済の17%を占めるまでに発展しています。そんな中国で越境EC事業を早くから展開し、日本の良さを中国人に広める活動をしている株式会社ACD。今回は、株式会社ACDの代表取締役CEOである古居氏にお話をお伺いしました。
韓国での多通貨決済事業立ち上げをきっけかけに越境ECの可能性を知る
--本日はよろしくお願いします。早速ですが、古居さんが起業されたきっかけをお聞かせください。
もともと、光通信に勤めていましたが、そこで勤めている際にモバイルインターネットの可能性を知り、ネットバブルの時代に突入していたので、独立をすることにしました。その後、韓国で多通貨クレジットカード決済事業の立ち上げに参画しクロスボーダーEC(越境EC)の可能性を感じ、その見識を深めました。韓国では、クレジットカードが非常に普及しており、一般のお店は決済対応端末を入れていないと罰金を払わなければいけないくらいの国策としての徹底ぶりでした。
そこで、いわゆる越境ECの取引サービスの立ち上げにも参画しました。そのとき中国から国境を超えるECの決済トラフィックが膨大な量で、その後も越境EC事業に関わっていたところで、その知見を買われ、2016年にACDの立ち上げに参画することになります。
「商売に国境をなくす」をミッションに越境EC事業を展開
--現在中国のEC事業を中心に事業展開されていると思いますが、改めてご説明をお願い致します。
私達の事業は「商売に国境をなくす」をビジョンとして掲げてビジネスを行っています。
サービスとしては中国の人たちが支持しているプラットフォームである、アリババの天猫国際(Tmall Global)や京東(ジンドン)に越境EC減税(関税ゼロの優遇減税措置)に適応した売り場を持っており、私達が売り場を運営して日本企業の商品が売れるような環境づくりをしています。
また、中国の12億人が利用しているWeChatというアプリ内でミニプログラム(ダウンロード不要・会員登録不要の次世代アプリ)を構築し、日本でローカライズすることで中国の消費者に日本の情報を検索してもらい、日本の企業について知ってもらえるサービスを日本の企業様にサブスクリプションサービスとして提供しています。企業規模を問わず、全国の自治体や様々な民間企業様や20県を超える日本の地方自治体様にも公式導入・ご利用をいただいており、さらに全国での導入を進めております。
もう1つがWeChatのショートムービー&越境ライブ配信機能で日本からのショートムービーと越境ライブを中国の日本好きユーザーに配信しております。2021年5月に日本企業で初めて中国テンセント社からライブ配信ライセンスを取得しました。
そこから毎日、日本から2~4時間のライブ配信を行っており、コロナ禍で日本に旅行にいけない中国人ユーザーに疑似旅行体験を提供することで、現在ではチャンネル登録者数が間もなく10万人を超えるほどに成長し、毎月1万人ずつ純増するほどの人気番組となっています。
また、日本の街ブラ配信をすることで疑似旅行体験に集まってきてくれる中国人視聴者からライブ中に投げ銭での収益を得たり、ライブ視聴中でもECの売り場を同時起動することが可能で、2タップで商品を買ってもらったりしています(累計視聴数1200万、登録者数8万人、優良なコンテンツ配信者としてテンセント公式より優秀賞を受賞 ※2022年1月現在)。
ライブ配信中に登場したお店で商品の代理購入をリクエストされ、その場で弊社ECに商品登録しお届けしています。この現象を、私たちは「想い出購入」と呼んでおり、大きな盛り上がりをみせています。例えば、日本の酒蔵さんが樽で仕込んでいる様子をライブで配信して体験してもらうような世界感を作っています。
実績としては、ANA中国との連携ではLIVE配信にて航空チケット(前売り引換券)の販売をして、約600席・2000万円の売上を記録したり、日本盛様の日本酒を新しいスタイルでの提案から、2020年のダブルイレブンでは初動で5,000本を販売し、2021年のダブルイレブンでは1時間で4,000本、セール期間中で1万1,000本以上の販売実績から、アリババ天猫国際の清酒焼酎カテゴリーで1位のポジションも獲得しました。
--貴社の独自性や強みについてお伺いできますでしょうか。
大手企業が潜入したがらない市場で、中国のような大きいマーケットに向けた発信をしており、越境ECといったこれから伸びる事業を手がけていることです。
「商売に国境をなくす」ことを形にするために、日本好きの人たちのコミュニティを形成しており、1回のライブで多い時には16万人見てくれるようになっています。また、アカウント軸でコミュニティを作ってるため、配信者が変わっても視聴者数は変わりません。
越境ECで日本の地方創生を
--今後の中長期的な事業展望についてお伺いできますか。
WeChatエコシステムなど、中国の最新テクノロジーを活用し、地方産品などの販売を海外に向けて展開することで、日本の地方創生に繋げていきたいと考えております。
海外に向けたライブ番組をさらに発展させ、24時間いつでもライブから商品購入ができるようにしたり、日本企業様や行政機関・自治体様のミニプログラム(ダウンロード不要・会員登録不要の次世代アプリ)を活用し、中国現地にいる中国人の方でも中国の情報規制の壁を越え、日本の魅力的で価値ある情報について知ってもらえる機会を創出することで、アウトバウンド施策はもちろん、アフターコロナのインバウンド需要にしっかりと対応することで、地方創生に向けてどこよりも具体的な一手として推進して参りたいと存じます。
--最後にProfessional Onlineを見ていただいている経営者、決裁者の方に向けてメッセージをいただけますか?
日本は2050年には現在の消費人口の約3割が消滅し、海外から収益を上げる方法を今から具体的に実施しなければ極めて危機的な状況に陥ると予測されます。またモノづくりニッポンは最早過去のもので、中国・米国その他諸外国にしっかり模倣され、マーケティングの分野でもとても大きな遅れをとっています。世界はマーケティング4.0から5.0で活気づく中、日本はいまだ1970年から1980年代のマーケティング2.0の時代で止まっていると言っても過言ではありません。それは、日本企業の意思決定権者の方々の停滞した知見や意識が大きな要因の一つであると推察しています。
まだちょんまげをして刀を持って「刀で戦うのが武士なんだ」と言っている旧世代に対し、それを見た日本の若者は呆れかえり未来に希望が持てず、さらに海外の人々からはあざ笑われていることに気づいてない現状なのです。
しかし、日本にはまだまだ勝負できる可能性が大いにあります。それは、優れたコンテンツ(歴史や習慣や文化など)を発信することで、すぐに商品を売り込むのではなく、商品の裏側のストーリーや生産者の想いやこだわりなどをしっかり伝え、海外のファンコミュニティを形成すると同時に信頼を深めていくことです。この重要性を理解して実践していけば、中国市場において勝ち筋を見つけることはそう難しくありません。
--本日はどうもありがとうございました。
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