岡本 恵典(おかもと・けいすけ)
株式会社Synergy Career 代表取締役社長
和歌山県生まれ。大阪府立大学大学院卒。新卒入社したITベンチャーを退職後、自身の就活経験で感じた課題をきっかけに2018年にWEBサイト「就活の教科書」を立ち上げ、2020年に株式会社Synergy Careerを設立する。
著書に「ワークと自分史が効く! 納得の自己分析(日本能率協会マネジメントセンター)」
厚生労働省が2021年10月に公表した統計によれば、学生が競争を勝ち抜いて入社する大手企業ですら、大卒新入社員の4人に1人が入社から3年以内に離職しています。入社後に学生が感じる「仕事とのミスマッチ」を減らすためには、就活生はどのように自分にとっての「良い会社」を見極め、企業にも自分を見出してもらえば良いのでしょうか。圧倒的な情報量を誇る「就活の教科書」を運営する株式会社Synergy Career代表取締役社長の岡本様にお話を伺いました。
情報に惑わされ、大失敗した自身の就活
--本日はよろしくお願いします。早速ですが、岡本さんが起業されたきっかけをお聞かせください。
起業の大きなきっかけは、自分自身が新卒での就職活動を通じて感じた難しさや、会社と人材とのミスマッチを何とか変えたいという思いです。
私は大学院を卒業後に、当時まだ東証マザーズ上場前であったITベンチャーの株式会社イノベーションに入社しました。就職活動ではさまざまな情報に惑わされ、面接でも自分の良さを伝えられず、何社も落ちました。その中で何とか内定をいただけたのが同社だったのです。しかし、受かったから入ったというだけで、この就職に本心から納得はできていませんでした。結局すぐに働くのが嫌になり、たった9か月という早さで退職してしまいました。
この経験から、学生が納得のいく就活を通じて自分に合う企業に就職する手伝いをしたいと考え、就活情報サイト「就活の教科書」を立ち上げたのです。
もともと、会社を辞めた後にカードゲームのブログを個人で運営しておりました。最高で月250万PV(ページビュー)、収益は月100万円ほどまでサイトを育てることができ、ブログ運営としてはかなりうまくいっていましたが、同時にその規模が限界だとも感じていました。
今後も継続して収入を生み出せる事業かどうかという観点から、広告収入の他にも事業展開ができる領域に取り組みたいと考えたのです。
就活情報を提供する記事中心のウェブサイトであれば、ブログ運営で得たSEO(検索エンジン最適化:インターネット検索でウェブサイトを見つけやすくすること)知識やノウハウも活かせますし、サイト運営に大学生を活用する構想が浮かびました。なにより、自分自身も苦しんだように「就活がうまくいかない」という社会課題の解決が図れると感じたのです。
現在は、私と役員一人を除いて全員大学生のインターンで運営しています。
就活の「今」を経験したばかりの学生がライター
--現在メディア事業を中心に事業展開されていると思いますが、改めてご説明をお願いいたします。
メディア事業では「就活生に寄り添った情報を届け、大学生を自分らしい生き方に導く」を運営理念として活動しております。ウェブサイトの広告収入を柱として90%の売上はこの事業から来ています。
弊社が運営する「就活の教科書」は、月間200万PV、就活生50万人が訪れる就職活動の総合情報サイトです。実際に就活を経験し企業から内定を獲得した学生ライターが、自身の経験を含めて、自己分析・エントリーシート・面接対策などの記事を執筆しています。
大学生に役立つおすすめの就活サイトや就活エージェントの記事もまとめています。
ウェブサイトは産経新聞やTOKYO FMなどメディアに取り上げられた実績が多数あり、日本能率協会マネジメントセンターから書籍も出版しました。ウェブサイトの他にも、LINEメルマガ・Twitterなどで就活の最新情報を配信しています。
また、メディア事業と連携して動画コンテンツの企画・作成・運用も行っています。自社で運用中の就活に関するYouTube動画チャンネルの登録者は現在1万人ほどです。ゆくゆくはこのYouTubeなどの動画メディア経由でも就活生を集客していきたいです。
最近力を入れているのはTikTokで、YouTube動画を切り抜きショートムービー化して配信しています。TikTokの動画の総PV数は2,000〜3,000万以上あり、フォロワーは3.5万人を超えました。
切り抜き元となるYouTube「就活の教科書チャンネル」も登録者11,000人まで伸びています。
--貴社の独自性や強みについてお伺いできますでしょうか。
大きくは二つあり、一つは情報の網羅性、もう一つは学生がライターとして記事を書いている点です。
一点目の網羅性に関して、「就活の教科書」には現在1,500記事ほどを掲載しています。実は、就職活動について一つのウェブサイトで1,000記事を超えている媒体は数社しかありません。弊社のサイトは記事同士のリンクもしっかり整えてありますし、情報の調べやすさに力を入れています。
二点目のライターに関しては、実際に就活に取り組んでいる学生が経験や調査したことを基に書いているので、面接の現場に近い情報を提供できているのが強みです。就活生の状況や気持ちもよくわかるため、読者に伝わりやすい記事を提供できます。
それぞれの価値観に合う仕事に就活生が出会うための総合サイトへ
--就活情報の提供に特化して、存在感を出せているという印象ですね。では、あえて課題をあげるならどんな点がありますか?
メディア運営というビジネスの観点と純粋に就活生の役に立つ情報を提供したいという二軸で考えた時に、難しい点が出てきます。
Googleから集客をするSEOの性質上、ユーザーが検索で求めている答えが掲載されていないと上位表示されず、サイトへ集客できないという問題があります。なお、ここでユーザーが検索しているのは既に顕在化したニーズです。
一方、我々が就活生に本当に届けたい深い情報や本質の部分は、まだ彼ら自身が知り得ない潜在ニーズですので、その情報をいかに届けるかが難しいと感じています。
そこで、記事にたどり着いてもらうまではSEO対策というテクニックを使いますが、記事の後半で表面の情報だけでなく大切なことや本質的なことを書くようにしています。
また、弊社のサイトにたどり着いてくれるのは就活についてGoogle検索などで能動的に調べるような人です。そこで、そのように積極的に動いていない就活生とはTwitter・Instagram・YouTube・TikTokを使って情報配信してつながろうと考えています。
学生側の最近の流れとして、将来が不安だから大きい会社で間違いなく生きていきたい人と、反対に将来が不安だからこそ、小さい会社やベンチャーで学びたいという学生の二分化が進んでいます。
結果的に中規模の会社を志望する学生が少なく、そこにどうリーチしていくかが企業側の課題なのです。今は就活情報がインターネットに偏っているので、認知度が高い大企業に学生が集中する傾向もあります。そこでSNSやTikTokを使って自社のことを知ってもらおうとする中小企業が増えてきました。
コロナ禍の影響やリモート勤務という選択肢が広まり、地方に残る学生も多くなってきました。弊社でも、学生インターンをオンラインで採用し、オフィスには出社せずZoomだけでやりとりをするという運営で上手く回っています。
--多様な人材がオンラインでつながる今風の組織という印象です。今後の中長期的な事業展望についてお伺いできますか。
ウェブサイトを大きくして、日本で一番検索されるサイトにしたいですね。今は、アクセスは多いものの、わざわざ見に来るサイトというポジションは取れていません。リクナビやワンキャリアのように、「就活ならここ」と多くの人が思い浮かべるような、わざわざ見にきてもらえるサイトにしていきたいです。
そのために、サイト内の情報整理には注意しています。情報に漏れがないようにして、就活生が自ら取捨選択できるようにしています。彼らが適材適所で働く役に立てたら嬉しいですね。
--最後にProfessional Onlineを見ていただいている経営者、決裁者の方に向けてメッセージをいただけますか?
弊社では、就活生を1,000人単位で集められます。最近の就活市場に関してもノウハウが豊富ですので、就活生をターゲットにビジネスをされている企業様や「こんな人がほしい」という人材集めに関するご要望はぜひご相談ください。
また、新卒採用を行っている企業様に対しては、ウェブサイトに取材記事を掲載し、就活生の認知拡大を図り、円滑な採用のお手伝いをすることもできます。こちらもご興味があればぜひお問い合わせください。
--本日はどうもありがとうございました。
株式会社Synergy Career
【就活の教科書】
Professional Onlineでは無料で経営者インタビューに掲載いただける方を募集しています。
お問い合わせフォームよりご連絡ください。
プロフィール
岡本 恵典
会社情報

決裁者アポ獲得支援サービス「アポレル」に登録すると、日替わりでレコメンドされる著名な経営者と出会うことができます