デジタルマーケティングのためのデータ分析・考え方を日本に広め、「本当に欲しい情報」を取得できる社会を目指す

デジタルマーケティングのためのデータ分析・考え方を日本に広め、「本当に欲しい情報」を取得できる社会を目指す

株式会社ルグラン 共同経営者 山辺 仁美

カテゴリ: コンサルティング・BPO、従業員数: 10〜49

2022.03.02

山辺 仁美 (やまべ・ひとみ)

株式会社ルグラン 代表取締役 共同CEO


 

米国セントメリーカレッジ経営学部卒業後、大和銀行へ入社し日本の社会構造を学ぶ。その後リーマンブラザーズで活躍するも、長期的な展望を持って仕事をしたいという思いで再び活動のフィールドを変える。AT&T、携帯情報端末メーカーPalmでマーケティングを担当。2002年には、オーバーチュア(現ヤフー)にスタートアップメンバーとして参加する。同社マーケティング・シニアディレクターとして、検索連動型広告の認知拡大に注力し、デジタルマーケティングの可能性を広めるために、泉 浩人氏と共に2006年4月に株式会社ルグランを設立する。
 

 

昨今の日本のマーケティングのあり方は、大衆へ向けたものから個人へ向けたものへと変化しています。これからの企業は、確たるデータをもとにそれを分析し、消費者の求めている情報をいちはやく提供することが求められています。株式会社ルグランは、「データドリブン、なのにクリエイティブ」をテーマとして、マーケティング全体のコンサル事業をおこなっています。今回は代表取締役 共同CEO 山辺様にお話を伺いました。


 

新しいマーケティング手法を日本に広めるために
 


 

--本日はよろしくお願いします。早速ですが、山辺さんが起業されたきっかけをお聞かせください。
 

私は海外の大学を卒業し、日本の銀行に就職しました。銀行でトラディショナルな日本企業での仕事の仕方について勉強をさせていただき、その後アメリカ系の証券会社に転職。海外の機関投資家に対して日本株を売買するなどの仕事を経験しました。

 

銀行と証券会社では、同じ金融でも全く仕事内容は異なります。例えば、証券会社ではその日にどれだけ稼げるかが重要となります。そのため、世の中の流れをいち早く理解し、スピード感をもって業務を進行するという面白さがありました。

 

ただ証券会社は、日々のことを考えていくという短期的なビジョンを持つ仕事です。私は、もっと長期的なビジョンを持って行う仕事をしたいと思い、アメリカのITテクノロジー系の企業に移りました。

 

 

--ご自身のやりたい仕事の方向性が定まった時期でもあったのですね。ITテクノロジー系の企業ではどのような仕事をなさっていたのですか?

 

ITテクノロジー系の企業を、ベンチャー含め2社経験した後に、検索結果に広告を出すというビジネスモデルを作ったオーバーチュア(現ヤフー)というアメリカのスタートアップIT企業のメンバーとして、日本オフィスの立ち上げに参画しました。
 

今では普通になっていますが、「検索結果に広告を出す」という手法は、当時はなかなか理解されませんでした。一方で、捜している情報がすぐに見つかることが検索ユーザーに評価され、検索連動型広告は新たなマーケティング手法として、一気に注目されるようになりました。
 

オーバーチュアでの経験からデジタルマーケティングの面白さを実感しました。今、どんなキーワードが検索されているのか、また、検索数はどのくらいあるのか等、数字を見ればわかるので、これまでの行き当たりばったりの広告に対し、データをベースにマーケティングの施策を考えられることに魅力を感じたのです。

 

欧米と比較すると、日本のマーケターは数字を分析するということが苦手な傾向にあります。そこで、分析手法や考え方を学ぶ場が必要になるのではと思い、「全ての人をマーケターに」をミッションに現在の会社を立ち上げました。


 

消費者に寄り添う、気象連動型広告配信システム


 

--現在、デジタルを中心としたマーケティングのコンサル事業を展開されていると思いますが、改めてご説明をお願い致します。

 

検索と連動して広告を表示するというシステムは、広告がクリックされてはじめてコストが発生するという画期的なものだったので、会社設立当初は、広告にあまり費用がかけられない中小企業向けにセミナーを企画・実施していました。その中で、セミナーだけでなく、広告運用もサポートして欲しいというクライアントが増え、そのニーズに応えるために、現在のようにマーケティング全体のコンサルを行うようになりました。

 

その後、お客様の企業規模や拠点のバリエーションも増え、我々のノウハウも蓄積されてきたので、それをベースに広告主・消費者両方の課題を解決する自社システムをいくつか開発しました。最近では、気象に連動して広告配信をするシステムを構築し、昨年夏にサービスを開始しました。

 

 

--気象連動型広告配信システムを開発した経緯を教えてください。

 

気象データを持ってるパートナー会社から「世界的に気象データを活用してマーケティングをする流れがある。日本でも気象データを使ってなにかできないか。」というご相談をいただいたことが、気象に連動して広告を配信するツール「weathermarketing.net」のはじまりでした。

 

弊社には、アパレル関連のクライアントが多く、気象データをマーケティングに活用することに興味があるかどうかをヒアリングをしたのですが、その頃はあまりニーズがありませんでした。一方で、私達は気象データがマーケティングにもたらす可能性は大きいと感じていたので、まずは、気象データを使ってどんなことができるか、どういったサービスが作れるのかを自分達で考えようということになりました。

 

そこで、最初に構築したのが「天気に合わせてその日のコーディネートを提案するTNQL(テンキュール)」というサービスです。当時、気象に関連したサービスはいくつかありましたが、「その日の天気に合ったコーデを提案してもらいたい」という消費者のニーズに応えてくれるサービスはありませんでした。

 

とくに、イラストで女性のコーディネートを表示するという方法が高く評価されました。最近は、イラストを使ったサービスをよく見かけますが、その先駆けとなったのが弊社のサービスです。

 

イギリスでは、「女性は毎朝17分間かけてその日のコーディネートを考えている」というデータがあります。弊社のサービスでイラストを使っているのは、より早く、分かりやすくその日に適したコーディネートを女性のみなさんに伝えるためです。天気予報を見たとしても、その日に適したコーディネートを選ぶのはとても難しいものです。

 

「毎朝の17分間」は、その日の天気にふさわしい服装をスピーディーに把握できれば、必要がなくなります。そうなれば、「天気がわからなくて、どういう服を着ていったらいいか判断できない」「毎朝ご主人と、そんな話をして週5日間過ごす」などということもなくなります。よって、「天気がわからなくて服が決まらないから離婚になる」ということもなくなるわけです。これは冗談ではなく、実際に離婚に繋がったという話があるそうです。

 

雨の日でも晴れの日でも、女性が TNQLを毎朝見て「1日がんばろう」と思えて、また、女性の毎朝の課題である、イライラしがちな17分を少しでもポジティブな方向に変えることができれば嬉しいですね。

 

 

--気象連動型広告配信ツール「weathermarketing.net」とは、どういったシステムですか?

 

TNQLを開発することで、人々の行動は日々変わる気象によって大きく左右されることが分かりました。また、様々な実証実験を行うなかで、その日の天気に合わせて広告を配信することで、コンバージョン率が上がるということも確認できました。

 

で、あれば、その日の天気に合わせて広告を配信するツールを開発すれば、より多くの広告主が効率良く広告を運用できるのでは、と考えたことが開発のきっかけです。

 

このツールは、ユーザーがいる場所、あるいは、施設や店舗の所在地の天気に合わせて、Google、Facebook、Instagramへ広告が配信できるようになります。例えば、ゴルフ場がある場所の週末の天気が晴れの場合、「今週末はゴルフ日和ですよ!」といった広告を配信することができます。また、気温を設定し、それ以下になった場合は、冬用の厚手のセーターやコートを訴求するという運用も可能になります。

 

これまでの広告は全国に同じ広告を配信してきたのですが、日本列島は南北に伸びていて、地域によってはかなり温度差があります。北海道と沖縄で同じ時期にコートが必要ということはありえません。つまりこれまでは、無駄になっていた広告費も多く、また、ユーザーの視点で提案が出来ていなかったとも言えます。

 

昨年の夏にサービスをスタートして以来、すでに多くの成功事例が出てきています。例えば、宅配クリーニングて急成長している会社が気象データを活用し、衣替えのタイミングに合わせて広告を配信したり、また、あるアパレルのブランドでは湿度に合わせて、アイテムを紹介する等、気象条件をユーザーの所在地に合わせて設定することで広告効果を上げています。


 

--気象連動型の広告システムを展開している企業は、ほかにもいらっしゃるのですか。 

 

ウェザーニュースは、アプリの中に広告を出すことができます。Googleは特殊なコードを書く必要があり、一般の人には使いづらいです。

 

それに対して、私たちの広告はFacebook、Instagram、Googleに連携しています。この3つで広告の70%を占めており、メジャーな媒体に広告を出すことが可能です。さらに、私たちの気象データは1キロメッシュに対応しているので、細かい設定もできます。開発時に海外のツールも探しましたが、幣社のサービスと同じようなものは存在しないと思います。

 


--貴社の独自性や強みについてお伺いできますでしょうか。
 

「データドリブン、なのにクリエイティブ」を弊社のキャッチコピーにしていますが、私達の強みは、データに徹底的に向き合うことです。データをベースに「感覚」ではなくデータに「語らせる」。これはデータを読む人や力量によって変わります。データがすべての起点です。一方で、消費者が何かを買うときは、ちょっとした驚きも期待します。その部分にクリエイティブな提案をしていくべき、と考えています。これは昔も今も変わりません。

 

最近は「ユーザーエクスペリエンス(ユーザー体験)」とよく言われますが、データを見ながら、ここで何をしたら消費者に最終的なアクションをしてもらえるか徹底的に調査します。ユーザーエクスペリエンスが悪いと、「この企業は何だ」と思われてしまいます。これも基本的にはデータを見れば分かります。

 

 

消費者と広告主、どちらにも有益であってほしい


 

--今後の中長期的な事業展望についてお伺いできますか。
 

消費者も広告主も、どちらもハッピーになれるようなコンサルの仕事、ツールの開発を行っていきたいと思っています。

 

コロナになって増えたのは、すでに買ったのに次々表示される不要な広告です。企業は、とにかく買ってほしいものを宣伝するのではなく、「消費者の課題を解決するような広告を提供する」という考え方に変わっていってほしいです。 

 

消費者は自分の課題を解決する、自分の立場に立って考えて広告を出してくれる企業に思い入れが高くなるという調査結果があります。これを考えると、企業はより消費者の立場に立った広告を出すべきなのだと思います。

 

これからは個人情報がこれまでのように入手できなくなるクッキーレス時代が始まります。また、コロナをきっかけに、人々のライフスタイルが大きくかわり、過去データがなんの意味も持たなくなる今、頼りになるのが気象データだと考えています。消費者がいる場所の天気に合わせてお薦めのアイテムを紹介する、そんな気がきいた広告が出せれば、消費者と広告主の距離はぐっと縮まるでしょう。

 

カナダのスキー場に行く途中の大きなデジタルサイネージ(電子看板)では、商品を単に宣伝するのではなく、そこを通る人が気になるスキー場の積雪量をホットチョコレートのクリームの量で表現したクリエイティブがあります。これは、マクドナルドの広告でアメリカではかなり話題になりましたが、消費者と広告主の両方にとってwin-winとなる良い例だと思います。

 

企業都合で広告で消費者を追っかけ回すのではなく、日本でもこのように気象データをつかって消費者の課題を解決する広告配信が進むきっかけに、weathermarketing.netがなればと思っています。

 


--最後にProfessional Onlineを見ていただいている経営者、決裁者の方に向けてメッセージをいただけますか?

 

「消費者の課題を解決する」ことで新たなビジネスが生まれるのですが、消費者の課題を理解していない企業が多いと感じています。
 

弊社では、課題が明確になっていなくても、今抱えてる消費者や企業側の課題など、ちょっとしたお悩みから、一緒に考え課題を解決するスタイルを取っています。

 

消費者の課題を解決し、企業との信頼関係を強固にする。そんなことができるようなサービスやツールを提供し、世の中に少しでも貢献できればと思っています。


 

--本日はどうもありがとうございました。

 

 

株式会社ルグラン

https://legrand.jp/


 

気象連動型広告配信ツール「weathermarketing.net」

https://www.weathermarketing.net/


 

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プロフィール

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