荒 昌史(あら・まさふみ)
HITOTOWA INC. 代表取締役
2004年早稲田大学卒業後、株式会社コスモススイニシア入社。2005年NPO法人GoodDayを創設し、環境問題に取り組む。2010年に独立し、HITOTOWAを立ち上げ、ネイバーフッドデザイン、ソーシャルフットボール、HITOTOWAこども総研の3事業を展開。著書「ネイバーフッドデザイン」を4月に出版予定。
HITOTOWA INC. は、人と和のために仕事をし、企業や市民とともに、都市の社会環境問題を解決する会社です。防災減災、子育て、お年寄りの生きがいの創出、それらを地域住民の方々が助け合って行動できる関係性と仕組みをつくる事業を手掛けています。数々の賞を受賞しているHITOTOWA INC. とはどのような企業なのでしょうか。今回は、4月に書籍「ネイバーフッドデザイン」の出版も予定されている、代表取締役の荒様にお話を伺いました。
ソーシャルビジネスを立ち上げたいという目標
--本日はよろしくお願いします。早速ですが、荒昌史さんが起業されたきっかけをお聞かせください。
2004年に早稲田大学を卒業し、リクルート系の住宅デベロッパーに入社しました。最初は用地取得というマンションや戸建、家を作るための土地を仕入れてくる部署で2年ほど勤務し、その後マンションコミュニティや、地域の助け合いを作るようなCSR/CSV部門を立ち上げる提案などを行いました。その後、2010年に独立し、HITOTOWA INC. を創設しました。
--かねてより独立に対する熱意はあったのでしょうか。
元々は独立したいという気持ちは持っていませんでした。しかし、就職活動をする中で自分が人生をかけてやりたい、と思える仕事に出会えなかったのです。当時の私はNPOなどのソーシャルビジネスに携わりたいと考えていたのですが、そのような業種は少なく、そのタイミングで仲間とともに立ち上げることも考えるようになりました。
そのために、起業家を多く輩出している会社を軸に就職活動を行い、出会ったのがリクルート系の不動産会社でした。この会社との出会いが大きな転機でしたね。
いざという時に助け合える関係性、多世代が学び合う場所
--現在ネイバーフッドデザイン事業を中心に事業展開されていると思いますが、改めてご説明をお願い致します。
現在3つの事業を展開しています。
1つ目は主軸事業であるネイバーフッドデザインという地域のつながりを作る事業です。都市生活では近くに友人や知人が住んでいる方は少ないという傾向にあります。そのような方々を繋げながら自分自身のまちでの過ごし方や、いざというときに助け合いができる繋がりをつくる事業です。
2つ目がソーシャルフットボール事業です。ソーシャルフットボール事業とは、サッカーやスポーツを通じて、地域の共助をつくるという事業です。
3つ目がHITOTOWAこども総研です。こちらの事業は、子供と家庭の社会問題に関する調査研究事業を行っており、養子縁組の利用促進や、虐待予防のための施策提言をするための予備調査を行う事業です。
--住民の方たちのコミュニティづくりとしては、どのような施策を行っているのでしょうか。
大きくハード面とソフト面の2つがあります。基本的には住宅開発や再開発、団地の建て替えのタイミングで入っていくケースが多いのですが、ハード面では共用施設や集会所、商店街のカフェなどの、人が滞留し、交流できる場をつくる企画を行っています。
ソフト面では人々が仲良くなるきっかけづくりや、そのコミュニティを下支えする自治会やマンションの管理組合、子育てサークルや、防災委員会などを組成して、機会づくりをするイベントが多いです。そしてイベントやワークショップなどの伴走支援を行っています。
--2つ目の事業であるソーシャルフットボール事業についても詳しくお伺いできますか。
きっかけは、2010年に独立して3ヶ月後に起こった東日本大震災です。
僕は、東京に住んでいたため実際に被災をしたわけではないのですが、親戚が福島にいたこともあり、とんでもないことが起こったと当時は思いました。それから復興支援のために東北に通うようになり、サッカー教室を通じて子どもや大人が勇気付けられている姿を見て、スポーツの意義や価値を見直しました。
被災した方と仲良くなっていく中で、人々のつながり、共に助け合う共助を作ってるのですが、とても大事だと言ってくれた経験がありました。そこで、サッカーと共助の関係性作りを何かに生かせないかと思い、スタートしたソーシャルフットボール事業です。今はサッカーをしながら防災を学ぶゲームを開発していて、全国展開やJリーグやBリーグなどの地域貢献プロジェクトの事務局兼アドバイザーや企画運営を行っています。
--こども総研は他の事業とは少し系統が違うように感じましたが、どのようなものなのでしょうか。
今までは、共助の関係性や仕組みづくりを、ネイバーフットデザインとソーシャルフットボールでやってきました。その中で日本の社会問題である、家庭の貧困や子供の教育問題などが顕在化してきてると知り、何かできないかと考えることがありました。
そんな時に、調査研究事業をやりたいという社員が現れたのです。話をする中で、事業で研究したことをネイバーフットデザインやソーシャルフットボールに活かせると思い、この事業をスタートしました。今は事業として軌道に乗り始めてる状態です。
具体的には、児童相談所の仕組みが実際に地域にしっかりと受け入れられてるか、児童相談所としてあるべき姿は何かというような調査を実施しました。その他ですと、養子縁組に関してどのようにしたら養子縁組の制度が広がっていくかを研究しました。日本はまだまだ偏見が強い部分があり、先進国の中で非常に養子縁組の活用が少ない傾向にあります。
--貴社の独自性や強みについてお伺いできますでしょうか。
新しいことや深いこと、難しいことがある際にお客様からお声かけていただくケースが非常に多いです。本当に実現できるかわからないという感じのときに声をかけていただくことがとても多く、本質的であったり創造性ということが弊社の強みだと思っています。
ゆるやかなつながりでいざというとき助け合える仕組み作りを
--今後の中長期的な事業展望についてお伺いできますか。
これまでは業界のフラッグシップ的なプロジェクトをクライアントとお仕事をすることが多かったです。その中で会社としては新しい常識や新しい基準を作ることができました。
これからはその実績を踏まえて社会変革、例えば、ネバーフットデザインで言うと都市生活の中に、ゆるやかなつながりや楽しい関係性があり、いざという時に助け合うことができる仕組みをもっと当たり前にしていきたいと思っています。
今後は、プロジェクトを作って推進するだけではなく、そういう生活や暮らしが本当に変化するようなアクションを実践していきたいと思っています。それは、デベロッパーと組んでやる、もしくは行政と組んで展開するということもあると思います。そして場合によっては、何らかの法制度や仕組みを変えるということもあると思いますが、そういった動きに今後力を入れていきたいと思っております。
--最後にProfessional Onlineを見ていただいている経営者、決裁者の方に向けてメッセージをいただけますか?
弊社のような会社があるということを皆様にはあまり知られていないと思うので、まずは興味を持ってくれたら嬉しいと思います。経営者や決裁者の方々自身が都市生活の中で、緩やかな繋がりがあったらいいと思います。4月中旬には書籍「ネイバーフッドデザイン」が出版される予定です。手にとってもらえたら嬉しいですね。
--本日はどうもありがとうございました。
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