鈴木隆夫(すずき・たかお)
ベルモントホテル株式会社 代表取締役社長
大学卒業後にパレスホテルへ就職。
長年営業部門に所属していたが、父親の年齢を考慮し、父親が経営するベルモントホテルに戻ることとなった。代表に就任後も、より地域に密着し、愛されるホテルを目指す。
数多くのホテルがある中で、「食」と「接客」にこだわりを持ち、あえてチェーン展開をしないベルモントホテル。昭和59年の創業以来、人とのつながりを大切にしてきたこのホテルの代表取締役社長である鈴木様にお話をお伺いしました。
人が人をつなぐ。地域に根付いた愛されるホテルに
--本日はよろしくお願いします。早速ですが、鈴木さんのこれまでのキャリアや代表就任のきっかけをお聞かせください。
私は大学を卒業後にパレスホテルへ就職し、営業部門に所属しておりました。しかし、父の年齢を考慮し、父が経営していたベルモントホテルに戻ることにしたのが代表就任のきっかけです。
ベルモントホテルに戻ってから気付いたのですが、別の地域の小学校に通っていた私は、地元の人とほとんど関わりが無く、地元のネットワークを持っていなかったことに落胆しました。
そのような中で偶然、当ホテルで同窓会を開いてくれた友人と話をした際に相談したところ、青年会議所に入るよう勧められました。台東区が下町であることもあり、青年会議所には人との繋がりを大事にしている方が多く、人情を大切にしている方々は経営しているホテルや私自身をも大切にしてくれ、温かい気持ちになったのことを鮮明に覚えています。
ベルモントホテルは創業当初からレストランを併設し、ホテル内に問屋事務所も設けているほど、父には「地域との繋がりを大切にしていきたい」という想いがあります。青年会議所に入ったことで、父が大切にしていた人との繋がりの大切さに改めて気がつくことができました。
人を介すことが最大のサービス
--海外からの観光客が増え、チェーン展開するホテルも多い中、貴社では複数店舗展開をしない理由をお伺いできますか?
ホテルの良さである「人と人との繋がり」や「人のサービス」を高いクオリティで提供するためです。
今のご時世、ホテルのサービスも非接触で自動化の流れがありますが、ホテルの本質は「人を介す」ことだと思っています。人を介すことで、ただ泊まるだけではなく、宿泊される方に「プラスの価値が提供できないか?」を常に考え、人の心まで踏み込んだサービスを提供することが我々の職務だと思っています。
人の心まで踏み込んだサービスを提供するには、ホスピタリティの高い接客マナーやサービスが必要ですが、それを身につけるには教育や経験が必要です。仮にFC展開をしてマナーや接客方法などを学んだとしても時間がかかり、すぐに現在と同じクオリティにすることはできないと思います。実際、多店舗展開している素晴らしいホテルでも、人の心まで踏み込んだサービスをしているホテルはそう多くはありません。
ホテル業はサービス業の最たる物と言われています。宿泊される方に本当に最高のサービスを提供するために、誇りをもって仕事をしてくれる人材を育成したいと思っていますので、建物だけを増やしても内面の部分が育っていなければ、それは私のやりたいことではありません。
--ホテル経営をする上で大切にしていることや今後守っていきたいことはございますでしょうか?
当社では「食」を大事にしています。近年増加している宿泊特化型のホテルはテナントを入れているケースが多いですが、そうすると食に対する融通が効かないことが多いため、その結果、食に対して重きを置かないホテルが増えています。
しかし、弊社では従来よりレストランを経営してきたこともあり、宿泊者のニーズや意向に対応することができます。今後も「食」についてこだわりを持ち、更なる味を追求していきたいと思っていますし、代々築いてきた「地域との繋がり」、「人との繋がり」を守っていきたいと考えています。
--「食」という部分で新しい取り組みがあれば教えてください。
弊社では、ゴーストレストランというサービスを提供しています。ゴーストレストランはホテル内のキッチン設備を利用し、デリバリーサービスを通して注文を受け、料理を提供するサービスです。これにより、運営コスト・人件費を最小限に抑えることができますし、売り上げ低迷の打開策の1つになることを期待しています。
「食」と「接客」でプロフェッショナルを極める
--今後の中長期的な事業展望についてお伺いできますでしょうか。
ゴーストレストランの取り組みに加えて、今後はさらに「食」に磨きをかけようと考えています。コロナウイルスの流行が始まってからは、いかにこの時代を乗り切るかが課題となりました。さらに言えば、ただ単に乗り切れば良いのではなく、現在の状況をポジティブに考え、仕事の軸をもう一度考え直すことが重要だと考えています。
仕事の軸とは、サービスの「プロ集団」を目指す、「飲食」を磨き直すことです。これらを考え直すことは差別化にもつながりますし、逆に、差別化ができないと生き残ることができないとも考えています。人によるサービスで、当ホテルの地盤固めにもう一度取り組みたいですね。
--地盤固めのために行っていることを教えてください。
これまでレストランのサービスをしていた従業員や、フロントに立っていた従業員を地域の方々と交流できるよう外に出すようにして、改めてベルモントホテルを知ってもらおうとしています。また、洋食レストランの「ラコント」を改装する予定があり、コンセプトなど根本から変え、より「食」に磨きをかけていこうと思っています。
--最後にProfessional Onlineを見ていただいている経営者、決裁者の方に向けてメッセージをいただけますか?
コロナ禍により、経営難に陥っている飲食業が多いことは知られていますが、実際は、ホテル、旅行代理店を含む観光業には国からの支援がほとんど無く、さらに厳しい状況にあります。そのため、少しでも多くの方にホテル業界に目を向けていただきたいと考えています。弊社のホテルは決して新しいホテルではありませんが、ホテルの原点である人とのふれあいを大切にしておりますので、ご飲食やご宿泊でご利用していただければ幸いです。
また、弊社は今後、「食」を追求してまいります。飲食のコンサルティングや仕入れ、食材や店舗の内装など、「食」に関して弊社が強くなるために、他社ではできないことを実現していきたいと考えています。ご協力していただける方がいらっしゃいましたら、お声がけ頂ければと思います。
--本日はどうもありがとうございました。
ベルモントホテル株式会社
https://www.belmont-hotel.co.jp/
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プロフィール
鈴木 隆夫
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